プライマリーバランス(Primary Balance)は日本語で「基礎的財政収支」と訳されます。これは国や地方自治体の予算において、政策的な経費(社会保障や公共事業など行政サービスを提供するための費用)を、税収や税外収入でどれだけ賄えているかを示す指標です。財務省の資料では、税収・税外収入から国債費(元利払い)を除いた歳出を引いた収支をプライマリーバランスとしており、この収支が政策的経費を現在の税収等でどれだけ賄っているかを示すと説明しています。税収が政策的経費を上回ればプライマリーバランスは黒字、下回れば赤字となります。
プライマリーバランスが均衡または黒字であれば、その年の行政サービスにかかる費用を現時点の収入で賄えていることを意味し、新たな借金は過去の債務の利払い分だけで済みます。この場合、公債残高の対GDP比は一定となり、財政の持続可能性が高まるとされています。OECDはこの概念を「政府の純借入あるいは純貸付から、利子の支払いを除いたもの」と定義しています。逆に赤字が続くと、政策的経費を賄うために国債発行に頼ることになり、債務残高や利払い負担が増え続けます。
日本の現状を見ると、プライマリーバランスは1992年のバブル経済崩壊後から赤字が続いており、政府は公債残高の増加を抑えるために黒字化を目標に掲げています。例えば財務省の資料によれば、2022年度の一般会計予算(当初ベース)では政策的経費が83.7兆円、税収等が70.7兆円であり、プライマリーバランスは13.0兆円の赤字となっています。民間の解説でも、2025年度の国と地方のプライマリーバランスは約4.5兆円の赤字と見込まれていますが、2026年度にはわずかながら黒字転換が予想されると指摘されています。ただし、プライマリーバランスが黒字化しても、利子の支払い分は残るため財政収支全体の赤字はしばらく続きます。
プライマリーバランスは財政健全化や世代間の公平性の指標として用いられます。黒字化が実現すれば、余剰分を公債の返済に回すことができ、金利負担が減少して経済成長に資する支出に充てられる余地が広がります。一方、赤字が続けば借金への依存度が高まり、国際的な信用低下や将来世代への負担増加につながる懸念があります。
要約
- 定義:プライマリーバランスは税収・税外収入と政策的経費(社会保障や公共事業など)との収支差で、国債の元利払いを除いた歳出との差を測ります。
- 意味:行政サービスを現在の税収で賄えているかを示し、黒字なら自立、赤字なら借金依存を意味します。
- 現状:日本のプライマリーバランスは1992年以降赤字が続き、2022年度は13兆円程度の赤字とされています。政府は黒字化を目標とするものの、利払い費を含めれば財政赤字は続きます。
- 重要性:黒字化は財政の持続可能性や国際的信用力を高め、将来の政策に余裕を生む一方、赤字の継続は債務負担増や政策の柔軟性を制約するため、バランスの改善が重要です。

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