SOXSが2ドル割れしたとき:逆スプリットとレバレッジ調整の必然性

SOXSはフィラデルフィア半導体指数を基準とする「インバース3倍」型のETFで、基準指数の1日の変動率の3倍逆方向を狙います。毎日リセットを行うため、基準指数が一方向に動かなくても「負の複利効果」により基準指数を大きくアウトパフォームしたり、大きく劣後したりします。投資家から見れば短期売買向けの商品です。

逆スプリットの実施実績と背景

  • 2024年3月、運用会社DirexionはSOXSの株価が低迷していることを受け、10株を1株に統合する1対10の逆スプリットを実施しました。発行済み株式数は約90%減りますが、1株当たりのNAV(基準価額)は10倍になり、投資家の保有総額は変わりません。
  • インバースやレバレッジETFは価格が乱高下し、長期的には値下がりしやすいため、発行者が株価を引き上げる目的で逆スプリットを繰り返すことがあります。インベストペディアは、NY証券取引所やナスダックが上場維持のため最低1ドル以上の株価を求めており、株価が30営業日連続で1ドルを下回ると企業は逆スプリットなどで価格を引き上げることが多いと説明しています。同記事は逆スプリットを通じて株数を減らし株価を上げるが企業価値は変わらない点も強調しています。
  • 3倍レバレッジETFの価格は長期的に0に近づく傾向があり、価格が極端に下落する前に逆スプリットが行われると指摘されています。Wall Street Horizonの調査でも、2024年第4四半期にはレバレッジETFを中心に逆スプリットが増加したことが報告され、日々のリセットによる複利効果で価格が低下しやすいことが背景に挙げられています。

2倍化の可能性と規制環境

  • 2025年12月、米証券取引委員会(SEC)はDirexionなどに書簡を送り、基準資産の変動率に対して200%(2倍)を超えるレバレッジを提供するETFに懸念を示しました。同書簡では、投資会社法Rule 18f‑4によりファンドのリスクが指定基準ポートフォリオのVaR(バリュー・アット・リスク)の200%以下に抑えられるべきだと説明し、発行者に戦略を修正するか申請を撤回するよう求めています。
  • The Daily Upsideの報道によれば、SECのこの措置は200%を超えるレバレッジETFの新規申請を停止し、発行者に2倍以内へ戦略を修正するよう求めるものだと伝えています。また、Reuterも同様に、SECが200%を超えるレバレッジを提供する新ファンドの審査を一時停止し、リスク管理の明確化を求めていると報じています。

弁証法による分析

観点主張(テーゼ)反対意見(アンチテーゼ)総合(ジンテーゼ)
株価が2ドルを割った場合の対応株価が低迷すれば逆スプリットか2倍レバレッジへの変更が必要になるという見方。低価格のままでは最低株価規定に抵触する可能性があり、逆スプリットで株価を引き上げるかレバレッジを下げて価格変動の振れ幅を抑えるべきだと考えられる。SOXSは既に2024年に逆スプリットを行っており、規制は新規3倍ETFの申請停止であり既存商品に即時2倍化を要求しているわけではない。基準指数が大きく下落すればSOXSの価格は急騰するため、単に株価が2ドルを割っただけでレバレッジを変更する必要はない。株価が極端に低下した場合、発行者は上場維持と取引の魅力を保つため逆スプリットを繰り返す可能性が高い。Rule 18f‑4により新規3倍商品の審査は凍結されており、業界全体でレバレッジを抑える流れがあるため、長期的には2倍程度の新商品が増えると考えられる。ただし、既存のSOXSが単に2ドルを割ったからといって2倍型に切り替わるとは限らない。
逆スプリットの必要性株価が1ドル前後まで下落すれば上場維持基準を満たすため逆スプリットを行う必要がある。レバレッジETFは複利効果で値下がりしやすく、回復が困難になる前に株数を減らして価格を引き上げるのが合理的である。逆スプリットは企業価値を変えないため投資家にとって本質的なメリットはなく、繰り返すことで流動性が低下し投資家から敬遠される恐れがある。価格が一時的に低下しても半導体株の反落でSOXSが急騰する可能性もあり、逆スプリットは時期尚早かもしれない。発行者は上場維持と商品性維持のバランスを見ながら判断する。2ドル割れは直ちに逆スプリットを要する水準ではないが、長期的な下落が続けば追加の逆スプリットが行われる可能性が高い。

結論と要約

  • SOXSは基準指数の1日変動率の3倍逆を追求する高レバレッジETFであり、日々のリセットと複利効果によって価格は大きく振れ、長期的には下落しやすい。
  • 価格が低下すると上場維持のため逆スプリットが行われる。2024年4月には1対10の逆スプリットが実施され、株数が減少し株価が10倍に引き上げられた。
  • 米国の株式市場では1ドル以下が30日続くと上場廃止の対象となるため、逆スプリットは最低株価を確保する手段として用いられる。
  • SECは2025年12月、新たに200%(2倍)を超えるレバレッジETFの申請審査を停止し、発行者に戦略修正を求めた。このため業界では2倍程度のレバレッジが新規商品の上限となる可能性が高く、3倍ETFへの逆風が強まっている。
  • とはいえ、この規制は既存のSOXSに即時適用されるものではなく、単に株価が2ドルを割ったからといって2倍型へ切り替わるとは限らない。逆スプリットを用いて価格を引き上げるのが現実的な対応であり、2倍型への転換は市場環境や規制状況、発行者の判断に左右されるだろう。

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