正:機関投資家は積極的にオルタナティブ資産や広範な資産クラスに配分する
- 分散とリスク管理を重視した配分
英国投資協会の報告によると、機関投資家が運用する英国内AUMの資産配分は**株式49%・債券28%・その他(LDI 等)15%**に達している。株式の比率は2024年に44%から49%へ上昇し、逆に債券は30%から28%へ低下した。このように機関投資家は株式を主軸にしつつも、債券やLDI(負債対応投資)など複数の資産クラスを組み合わせてリスクを抑えている。 - オルタナティブ資産への高い配分
ブルックフィールド/オークツリーの2024年レポートでは、機関投資家の**86%がオルタナティブ資産に投資し、その平均配分比率は23%**であると報告されている。CalTierの解説でも、**年金基金や寄付基金など機関投資家の平均オルタナティブ比率は25~27%であると述べ、リスク分散やインフレ耐性を理由に多くの機関がオルタナティブを保有している。CAIA協会のブログは、機関投資家のオルタナティブ比率を約19%**とし、高水準の比率が一般的であることを示す。 - インフレと相関上昇への対応
債券と株式の相関が高まる中、伝統的な60/40ポートフォリオではリスク緩和効果が低下している。機関投資家は長期的な資金拘束に耐えられるため、プライベート・エクイティやインフラ、プライベート・クレジットなど流動性の低い資産も受け入れることで分散効果を高めている。
反:個人投資家は伝統的資産への依存が高く、オルタナティブ比率は低い
- 株式主体の資産配分
米個人投資家協会(AAII)の2025年11月調査では、個人投資家のポートフォリオは**株式71.17%(うち個別株32.11%・株式ファンド39.07%)、債券14.00%、現金14.83%**と報告されている。株式が大きな比率を占め、債券や現金に次ぐオルタナティブ投資の存在感は極めて小さい。 - オルタナティブ投資への参加率の低さ
ブルックフィールドの調査では、オルタナティブ資産を保有する個人投資家は全体の約4分の1に過ぎず、平均配分比率は6%にとどまる。CalTierの記事でも、リテール投資家のオルタナティブ保有比率は5%未満であり、機関投資家との差が大きいと指摘されている。ゴールドマン・サックスによる2025年の富裕層調査でも、保有資産1〜5百万ドルの投資家の39%がオルタナティブを利用し、1千〜5千ドルの代替比率が増えるものの、多くの投資家は資産の5分の1を現金として保持している。 - 流動性へのこだわりとリスク認識
個人投資家は投資資金の流動性や生活費への備えを重視する傾向があり、オルタナティブ投資を「高リスク」と認識して参加を控えるケースが多い。大口富裕層でも資産の20%程度は現金のまま保有し、長期拘束や複雑な運用への心理的障壁が存在する。
合:資産配分の差は収益目的・時間軸・規模の違いから生じるが、双方が学び合う余地もある
- 時間軸・規模の違い
機関投資家は長期運用を前提とし、巨額資金を背景にプライベート市場へアクセスできる。これによりオルタナティブ資産を多く保有し、株式や債券の相関上昇に対処している。一方、個人投資家は流動性重視や心理的リスク回避から伝統的資産中心になりがちである。 - アクセスと教育の差
テクノロジーや規制環境の進化により、個人でも小口でオルタナティブ資産に投資できる環境が整ってきた。CalTierの記事は、APIやフィンテックにより数百ドルからの投資が可能になり、米国投資家の48%がオルタナティブに興味を示していると報告している。教育不足やリスク認識のギャップを埋めれば、個人ポートフォリオも徐々に多様化する可能性がある。 - 今後の展望
ブルックフィールドの資料は、個人投資家のオルタナティブ比率が5%から15~20%へ上昇する見通しを示す。CAIAの記事も、機関投資家の約19%の比率が指標となり、富裕層のオルタナティブ投資が増加していることから、将来的には機関・個人の差が縮小すると考えられる。ただし、流動性や手数料、リスクへの耐性を考慮し、個人投資家は段階的に比率を高めるべきである。
要約
- 機関投資家:株式49%・債券28%・その他15%という幅広い資産配分を持ち、オルタナティブ資産への平均投資比率は23~27%である。長期運用と分散を目的にプライベート・エクイティやインフラ等へ積極的に投資する。
- 個人投資家:株式71%・債券14%・現金15%と伝統資産への依存が高く、オルタナティブ比率は平均6%未満。流動性確保やリスク認識の違いから現金比率も高い。
- 差異の背景:運用期間・資金規模・規制環境が異なるため、機関投資家はリスクを取ってオルタナティブを活用し、個人投資家は伝統的資産と現金を重視する傾向がある。
- 収斂の可能性:フィンテックや規制改革により個人でもオルタナティブにアクセスしやすくなり、将来的には個人投資家のオルタナティブ比率が15~20%まで上昇するとの予測もある。ただし、両者のリスク許容度や流動性ニーズの違いは残るため、適切な教育と段階的な配分調整が必要である。

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