FOMC(連邦公開市場委員会)が目指す「準備預金の安定」は、米国の金融システムの中核である銀行準備金を十分に保つことを意味します。準備預金とは、銀行や信用組合などの預金取扱機関が、支払い決済や資金移動のために中央銀行に預けている預金(Federal Reserve Banksへの預け金)と、現金として保有する金庫現金の総称です。伝統的には、これらの準備預金は一定の「準備率」に基づいて義務的に保有され、銀行は預金者からの急な資金引き出しに備えるとともに、中央銀行が短期金利を安定させるための調節弁となっていました。
準備預金の役割と運用
- 決済機能と安全性
銀行は他行への支払い、政府や企業の資金決済、顧客の預金引き出しなどを毎日大量に処理しています。準備預金はこうした決済が滞りなく行われるように、即時に資金を提供できるバッファーの役目を果たします。 - 金融政策のツール
中央銀行は公開市場操作によって金融システム全体の準備預金供給量を調整し、フェデラル・ファンド金利(米国の短期金利の指標)のターゲットを維持してきました。以前は必要最低限の準備預金しか存在しなかったため、供給量を少し動かすだけで金利が大きく変動しました。2008年以降の量的緩和では中央銀行が大量の資産を買い入れた結果、準備預金が巨額に膨らみ「準備金は豊富(ample reserves)」な状態になりました。このため、現在は準備預金の供給量ではなく、準備預金につける金利(IORB)や翌日物レポなどの「管理金利」で短期金利を誘導しています。 - 必要準備と超過準備
かつては法令で義務付けられた準備率(例えば当座預金の一定割合)に基づき、銀行は最低限の準備預金を保有していました。これを必要準備と呼びます。それを上回る分は超過準備と呼ばれ、超過分には利息が付かず、銀行はリスクの低い資産で運用する動機が薄くなっていました。しかし近年は超過準備にも中央銀行が利息を支払い、銀行が準備預金を持つインセンティブを与えることで、金利操作が安定しています。なお、2020年3月以降、準備率は0%となり法定準備は事実上廃止されています。 - 現行の「豊富な準備」枠組み
現在の金融政策では、準備預金が十分に大きいため、ちょっとした需要変動では短期金利が大きくぶれません。準備預金が減りすぎると金利が上昇しやすくなるため、FOMCは必要に応じて短期国債の買い入れやレポ取引(RMPなど)によって準備預金を補充し、金利変動を抑えます。逆に準備預金が過剰に膨らみすぎるときは資産の償還や公開市場操作によって吸収することもあります。
要約
FOMCが準備預金を安定させようとするのは、銀行が日々の決済や資金引き出しを滞りなく処理できるよう支え、同時に金融政策の目標である短期金利誘導を確実に行うためです。準備預金は銀行が連邦準備銀行に預ける預金と金庫現金のことで、必要準備と超過準備に分けられます。2008年以降の金融緩和により準備預金は豊富な状態となり、中央銀行は準備預金への付利を通じて金利誘導を行う「豊富な準備」枠組みに移行しました。現在のRMPなどの政策は、準備預金が減って短期金利が乱高下するのを防ぐための技術的手段として位置づけられます。

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