- 日本の所得税では、給与所得者の仕事関連支出を概算で見積もって差し引く給与所得控除があり、年収に応じて65万~195万円の控除額が設定されている。この控除は文具や書籍、スーツなどの身だしなみ費用も含めた「サラリーマンの必要経費」を見なしているため、個別にスーツ代を申告する制度は用意されていない。
- 1974年のサラリーマン税金訴訟では、大学教授のスーツ代が必要経費に該当するか争われたが、裁判所はスーツ代を家事費と位置付け、原則として必要経費として認めなかった。ただし、警察官の制服のように業務でのみ着用し、私生活では使用しない衣服には必要経費性を認める余地があると指摘した。この考え方が現在も続き、一般のビジネススーツは原則経費にならないと考えられている。
- テーゼとして「給与所得控除があるためスーツ代は経費にならない」という考え方を示し、その理由として給与所得控除の存在、被服費が家事費に分類されること、申告の簡便さと公平性の確保を挙げた。
- アンチテーゼとして、営業職や弁護士などスーツが事実上必須の職業ではスーツが仕事道具に近いこと、外交員など出費が大きい職種では給与所得控除では足りないケースがあること、給与所得者と自営業者の経費扱いに差があるのは不公平との意見を取り上げた。特定支出控除制度を利用すれば、給与所得控除額の半分を超える衣服費を追加で控除できるが、利用には会社の証明や高い金額要件が必要でハードルが高い。
- ジンテーゼとして、給与所得控除は多くのサラリーマンに有利な制度であることを理解しつつ、職務上の出費が多い人には特定支出控除や会社による制服扱いなど柔軟な運用が必要であると述べた。制度改善として、特定支出控除の条件緩和や衣服費が多い職種への特例措置、会社が明確なドレスコードを設けて制服扱いにすることなどが提案された。
なぜビジネススーツは経費にならないのか
税務会計
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