覇権国の金、新興国の金:二つの流れが収斂する「金高騰の必然」


テーゼ(正)— 覇権国が保持してきた潤沢な金準備

  • 歴史的背景:
    • 米国は金準備8,133トンと圧倒的な量を保有しており、外貨準備総額の約79%が金と推計されます。第二次世界大戦後にドル基軸体制を築いた覇権国として、金を基礎に通貨の信認を支えてきました。
    • ドイツ(3,350トン)、イタリア(2,452トン)、フランス(2,437トン)も外貨準備の6~8割を金が占めます。欧州の主要国はユーロ発足以前から金本位制に近い運営を志向し、金準備を積み増さずとも巨額のストックを維持してきました。
  • マクロ環境:
    • 世界的なインフレ圧力や信用収縮に備え、これらの国々は金準備を維持することで通貨価値の安定を図り、金融システムへの信頼を高めようとしています。
    • ただし、米国や欧州は財政赤字と政府債務の膨張という構造問題を抱えており、金の保有により通貨価値への信認を補強する必要が高まっています。

アンチテーゼ(反)— 新興国の金購入ラッシュと脱ドル加速

  • 金準備の構造変化:
    • ロシアや中国をはじめ新興国が近年金準備を急増させています。中国は2,304トンを保有し、外貨準備総額に対する比率は約6%ながら、金の積み増しを毎月続けています。
    • トルコ(641トン)の外貨準備に占める金の割合は約36%で、通貨リラの安定を目指すために金を積極的に購入しています。
    • インド、ウズベキスタン、カザフスタンなども金準備比率が二桁を超え、特に中央アジア諸国は外貨準備の半分以上を金にシフトしているケースがあります。
  • 理由と目的:
    • 地政学リスクの高まり: 米中対立やロシア制裁などが、基軸通貨ドルのリスクを相対的に高めています。新興国は西側制裁や金融システムからの排除に備え、金を「準備資産の最終手段」として積み増しています。
    • 脱ドル化と金融多極化: BRICS諸国などが米国債依存を減らし、金を外貨準備の一角に組み込む動きは「脱ドル化」の一環です。世界金評議会の調査によれば、中央銀行は2024年に記録的な金購入を行い、金が外貨準備に占める世界全体の割合も増加しました。
    • 金価格の上昇と投資妙味: 2025年1月末の金価格は1トロイオンスあたり2,740ドルに達し、前年同期比約33%上昇しました。金価格の高騰自体が金の保有価値を押し上げ、さらに購入を促す好循環を生んでいます。

ジンテーゼ(合)— 金高騰は続くのか?弁証法的総合

  • 需給構造の硬直化:
    • 新興国の積極的な購入が続けば、供給側(鉱山生産量)は短期的に伸びづらく、需給は逼迫します。金は物理的に採掘に時間がかかり、新規供給が大幅に増えるまで2〜5年かかるため、需要増は価格の押し上げ要因です。
    • 一方、米欧は膨大な金準備をすぐ放出する可能性が低く、むしろ財政リスクを背景に保有を続ける見通しが強いです。市場に出る金の供給は限られており、価格の下支えとなります。
  • 金融政策との相互作用:
    • 米国や欧州中央銀行がインフレ抑制のために高金利政策を続ける場合、金の魅力は一時的に低下することがあります。しかし、実質金利がマイナスに近づく局面では再び金が買われやすく、中央銀行の買い増しが価格を支えます。
    • 新興国の通貨不安や資本規制の強化が進めば、投資家や国民が金を安全資産として求める可能性も高まります。
  • 将来展望:
    • 金価格は長期的には上昇基調か: 覇権国による巨額のストックと新興国の積極購入という二つの動きが合わさり、金価格は高止まりまたは緩やかな上昇を続ける可能性が高いです。
    • 脱ドル化が加速するほど金への需要は高まる: ドル以外の通貨や代替資産として金が選ばれる傾向はしばらく続くと考えられます。
    • リスク要因: 金価格が急騰すると中央銀行による買い控えや一部売却が起こり、調整局面もあり得ます。また、予想以上の金利上昇が投資魅力を削ぐ恐れもあります。

要約

覇権国(米国・欧州)は膨大な金準備を蓄積しており外貨準備に占める金の比率も高い。一方、新興国は近年の地政学リスクと脱ドル化を背景に金購入を加速しており、特に中国やトルコ、中央アジア諸国が積極的に金準備を増やしている。この二つの流れが合流し、金供給の硬直性やドル離れの進展から長期的な金高騰が続く可能性が高い。ただし、金融政策や市場調整による短期的な変動リスクは残るため、全体の経済情勢を注視する必要がある。

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