金高騰は通貨秩序再編の前触れか:中国の米国債離れをどう読むか

テーゼ(賛成側の視点)

  • 近年、中国は米国債を減らし金を積み増す動きを強めています。米財務省のデータによると、2025年11月時点の中国の米国債保有額は6,826億ドルと2008年以来の低水準であり、公式報道では過去18年間で最低となっています。一方、人民銀行の公式統計では、2025年末の中国の金準備が約7,415万オンスとなり前年同月比で3万オンス増加し、14カ月連続で買い増したと報じられました。
  • この動きは中国だけではなく、2025年は各国中央銀行が計297トンの金を買い越しており、世界的に外貨準備の多様化が進んでいます。背景には米国債の利回り低下、米財政赤字の拡大、地政学的緊張などがあり、資産の安全性と流動性を重視した中央銀行が金への配分を増やしています。
  • 世界金評議会の報告では、2025年の金価格は60%以上上昇し、年間50回以上の史上最高値を記録したとされています。この急騰は、地政学的リスクや米ドル安などが引き金となっただけでなく、中央銀行の買い増しが金市場に構造的な需要をもたらしたことも一因です。

このようなデータから、金が「通貨の再編」の受け皿となっているとする主張には一定の根拠があります。

アンチテーゼ(反対側の視点)

  • 中国の米国債保有は減少していますが、依然として6,800億ドル以上を保有しており、日本や英国は米国債の保有を増やしているため、米国債市場は堅調です。中国は外貨準備の規模が3.3兆ドルを超えており、その中で金の比率はまだ低く、完全な「脱ドル化」とは言えません。
  • 金価格の上昇には、米金融政策の緩和期待や投資家のリスク回避需要など複数の要因が影響しています。世界金評議会は、2025年の金の好調は地政学的リスクやドル安、投資家のモメンタムによるものであり、2026年は経済成長や金利動向次第で価格が調整する可能性もあると分析しています。金の高騰をすべて「通貨の再編」に結び付けるのは単純化し過ぎともいえます。
  • さらに、中央銀行の金買いは歴史的水準に近いとはいえ、2025年の純購入量(297トン)は過去3年の記録的な購入額よりは減速しており、必ずしも急激なシフトではありません。

ジンテーゼ(統合)

テーゼとアンチテーゼを踏まえると、現在の状況は「米ドル体制から金への全面的な乗り換え」ではなく、外貨準備の多様化が進む過程と捉えられます。米国債の安全性は依然として高く、世界の基軸通貨としての米ドルの地位も即座には揺らぎません。しかし米国の財政悪化や地政学的な対立を背景に、各国はリスク管理の一環として金や他資産への分散を強めています。これは将来の多極的な金融体制への長期的な「揺り戻し」の兆候とも言えるでしょう。

要約

投稿で示された「金が新高値を更新し、図表が示すように中国の米国債保有が18年ぶりの低水準、金準備が過去最高」という現象は、中国や他国の外貨準備多様化と中央銀行の金買い増しを反映しています。米国債への依存度を下げ、金を安全資産として積み増す動きは事実ですが、米ドルの地位は依然揺らいでおらず、金価格の高騰も複数の要因が絡んでいます。したがって、現状は通貨体制の全面的な転換というよりもリスク分散を伴う漸進的な変化と見るのが妥当です。

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