「もめたまま放置」は安全か?相続登記未了が招くペナルティと現実

正:相続登記義務化と税務面のペナルティ

  • 相続登記の義務化 – 2024年4月1日から相続登記が法律上の義務となり、相続人は不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をしなければならない。正当な理由なく登記をしない場合は10万円以下の過料が科される可能性がある。遺産分割で不動産を取得した場合も、分割の日から3年以内に登記しなければならず、この期限を過ぎると同様に過料の対象となる。
  • 相続税申告の期限とペナルティ – 相続税の申告・納税は相続開始から10か月以内が原則で、遺産分割が終わっていなくても未分割のまま申告が必要。期限後に申告すると、納付すべき税額の15〜20%の無申告加算税や延滞税が加算される。申告と納税はセットで早めに行う必要があり、期限を過ぎて放置するとペナルティが増えていく。
  • 税務上の特例が受けられないリスク – 遺産分割が未了のまま相続税を申告すると、配偶者控除や小規模宅地等の特例などの節税制度が利用できない。後日分割が成立しても、申告期限内に申請しなかったために特例が適用されないケースがある。
  • 固定資産税や空き家の問題 – 管理されていない空き家が「特定空家」に指定されると、住宅用地特例が外れ、土地にかかる固定資産税が最大で6倍になる。相続登記の有無にかかわらず、管理を怠ればこうした税負担が生じ得る。

反:遺産分割協議には期限がなく、正当な理由があれば過料を免れる

  • 遺産分割の協議自体に法定期限はない – 民法は、共同相続人がいつでも協議で遺産分割を行えると規定しており、協議が成立しなくてもすぐに罰則を科す条文は存在しない。相続開始直後は遺産が全員の共有財産となり、各共有者の保存行為は単独でできるが、管理行為は持分過半数の同意、処分・変更行為は全員の同意が必要になる。つまり、遺産分割が未了でも相続が自動的に無効になるわけではない。
  • 「正当な理由」があれば過料は科されない – 法務省のQ&Aは、相続人が多数で戸籍収集に時間を要する場合や、遺言の有効性・遺産の範囲をめぐって争いがある場合など、一定の事情があれば登記遅延に「正当な理由」が認められ、過料の対象にならないと説明している。重病や暴力からの避難、経済的困窮も正当な理由に含まれる。
  • 相続人申告登記という救済策 – 2024年4月1日から新設された「相続人申告登記」は、相続人が自分が被相続人の相続人であることを法務局に申し出る制度であり、3年以内に申告すれば相続登記の義務を履行したと扱われる。遺産分割がまとまらなくても申告することで過料を避けられる。
  • 税務上の救済手続き – 遺産分割が申告期限に間に合わない場合でも、「申告期限後3年以内の分割見込書」や「やむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出すれば、配偶者控除や小規模宅地等の特例が後日適用される可能性がある。

合:リスクを踏まえた実務上の結論

弁証法的に見れば、遺産分割がまとまらない場合でも必ずしも即罰則が課されるわけではないものの、近年の法改正によって「放置」に対する責任が明確にされた。相続登記の義務化により、正当な理由なく登記を怠れば10万円以下の過料が科される可能性がある。また、遺産分割未了でも相続税申告は期限内に行わなければならず、遅れれば無申告加算税や延滞税が課されるほか、各種特例が受けられない。さらに、分割が遅れるほど相続人が増え、認知症や死亡で手続きが難しくなるリスクが高まる。不動産が共有のまま放置されると、他の相続人の債権者から差し押さえられるおそれや、自分の持分を知らない間に売却されてしまう危険もある。

その一方で、遺産分割には法定期限がなく、遺言の有効性をめぐる争いなど合理的な事情があれば「正当な理由」が認められ、過料を免れる。新設された相続人申告登記を利用すれば、とりあえず義務を履行したと扱われるので、遺産分割協議が難航している場合は早めに申告しておくことが望ましい。税務面でも、期限内に未分割で申告し、後日更正の請求や修正申告をすることで特例を取り戻せる余地がある。

要約

被相続人の死後に法定相続人がもめて遺産分割がまとまらない場合、民法は遺産を共有財産として扱うため、直ちに法的罰則が発生するわけではない。しかし2024年の改正によって相続登記が義務化され、取得を知ってから3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性があり、正当な理由や相続人申告登記による救済がなければ責任を免れない。また、相続税の申告は相続開始から10か月以内に必要で、遅延すれば無申告加算税・延滞税や節税特例の失効という重いペナルティが生じる。遺産分割が未了の状態では、共有財産の管理・処分に全員の同意が必要になり、他の相続人やその債権者による差押え、相続人の増加や認知症による手続き困難など様々なリスクがある。これらを踏まえ、遺産分割協議が難航している場合でも、相続登記の申告や税申告を期限内に行い、早期に専門家へ相談することが重要である。

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