1. 法人税法第61条の3(売買目的有価証券の評価等)
- 分類と評価方法
法人が期末に保有する有価証券は「売買目的有価証券」と「売買目的外有価証券」に区分されます。短期的な価格変動を利用して利益を得る目的で取得した有価証券を「売買目的有価証券」と定義し(以下「トレーディング目的証券」)、それ以外の有価証券を「売買目的外有価証券」とします。- 売買目的有価証券は時価法(銘柄ごとに期末時点の市場価格で評価)により評価し、
- 売買目的外有価証券は原価法(帳簿価額を基準)により評価します。
- 評価差額の取扱い
売買目的有価証券について期末評価額が帳簿価額を上回る場合の評価益や下回る場合の評価損は、一般的な評価益不算入・評価損不算入の規定(法人税法25条・33条)にかかわらず、その期の益金又は損金に算入しなければなりません。評価益・評価損の翌期の処理などは政令に委ねられています。
2. 売買目的有価証券の範囲(法人税法施行令第119条の12)
施行令は「売買目的有価証券」の範囲をより具体的に定め、概ね次のような有価証券を対象とします:
- 専担者売買有価証券 – 短期的な価格変動で利益を得る目的(短期売買目的)で取引に専ら従事する者が取得した有価証券で、帳簿上も短期売買目的として区別したもの。いわゆるトレーディング勘定の有価証券です。
- 短期売買有価証券 – 取得日当日に短期売買目的で取得したことを帳簿書類に記載した有価証券(専担者売買有価証券を除く)。
- 短期売買目的の金銭信託に属する有価証券 – 信託契約締結日に信託財産として短期売買目的で有価証券を取得すると帳簿書類に記載した金銭の信託に属する有価証券。
- 適格合併・適格分割等で引き継がれた有価証券 – 前記①〜③の有価証券として扱われていたものを適格合併・適格分割・適格現物出資・適格現物分配により移転した場合。
- 合併・株式交換等で交付された株式等 – 合併や株式交換・株式移転などにより交付を受けた株式等で、基因となった株式が前記①〜④のいずれかに該当していたもの。
3. 基本通達における解釈
国税庁の法人税基本通達では上記各号の解釈を示しています。
- 専担者売買有価証券の意義
「専担者売買有価証券」とは、会社が特定の取引勘定を設け、トレーディング業務を日常的に遂行できる人材から構成された独立の専門部署において運用している有価証券をいうと説明されています。 - 短期売買有価証券の意義
「短期売買有価証券」とは、取得日に当該有価証券を売買目的有価証券に係る勘定科目で区分して帳簿書類に記載しているものを指します。
短期的に売買している・大量に売買しているなどの実態だけでは該当せず、帳簿上の区分が必要です。 - 金銭の信託に属する有価証券
金銭の信託に属する有価証券についても、信託契約単位で短期売買目的の有価証券を取得する旨を帳簿に記載しなければ対象となりません。
4. 実務上のポイント
- 中小企業では②のケースが中心 – 独立したトレーディング部署を持たない中小企業の場合、専担者売買有価証券に該当するケースはまれで、取得日に短期売買目的と記載した有価証券が売買目的有価証券となるのが一般的です。
- 帳簿での区分が必須 – 実際に短期売買を行っていても帳簿上区分していなければ売買目的有価証券には該当せず、満期保有目的やその他有価証券として評価されます。
- 時価評価益・損を益金・損金に算入 – 売買目的有価証券は期末に時価評価し、その評価差額を「有価証券評価損益」として会計処理し、税務上も益金・損金に含めます。他の有価証券は評価差額を計上しないため、処理が異なります。
5. まとめ
法人税法では、短期的な価格変動による利益を得るために取得した有価証券を「売買目的有価証券」と定義し、これを時価で評価し評価益・損を益金・損金に算入するよう規定しています。具体的な範囲は施行令第119条の12で定められ、専担者が取引した有価証券、取得日に短期売買目的と記載した有価証券、短期売買目的の信託財産、有価証券が適格組織再編成により移転・交付された場合などが含まれます。国税庁の基本通達では、専担者売買有価証券は独立した専門部署が運用するものに限ること、短期売買有価証券には帳簿上の区分が必要であることが示されています。

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