売買目的有価証券の期末時価評価:会計基準(J-GAAP)と法人税法

会計基準(J-GAAP)における売買目的有価証券

  • 定義・分類:企業会計基準(金融商品会計基準)では、売買目的有価証券を「短期的な価格変動で利益を得ることを目的として保有する」有価証券と定義しますasb-j.jp。通常、同一銘柄の頻繁売買などでトレーディング業務を行っている場合が該当しますasb-j.jp
  • 期末評価方法:売買目的有価証券は「時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額を当期の損益に計上する」ことが会計基準で定められておりasb-j.jp、期末時価評価が義務付けられています。仮にこれらの有価証券を棚卸資産(トレーディング目的在庫)として保有する場合も、棚卸資産会計基準第15項により、売買目的有価証券と同様に期末時価で評価し、その評価差額を当期損益に反映しますasb-j.jp。つまり、会計上はいずれの場合も期末時点の市場価格で評価することが必須です。

法人税法における売買目的有価証券の取扱い

  • 取得原価主義との関係:法人税法では原則として取得原価主義(※有価証券など資産の評価益は益金不算入、評価損は損金不算入)を採用します。しかし、売買目的有価証券については特例が設けられていますzeiken.co.jp
  • 評価方法:法人税法第61条の3は、事業年度末に保有する売買目的有価証券(「短期的な価格変動で利益を得る目的で取得した有価証券」)を時価法(時価評価)で評価すると規定していますzeiken.co.jp。具体的には、売買目的有価証券は銘柄ごとに時価を計算し、その合計額を評価額とします。一方、売買目的以外の有価証券(期末保有有価証券)は原価法(取得原価に償却要素を加減した額)で評価しますzeiken.co.jp
  • 損益算入:売買目的有価証券について、時価評価額と帳簿価額との差額(評価益または評価損)は、法人税計算上、益金または損金に算入しますzeiken.co.jp。つまり、一般の評価損益不算入規定(法25条・33条の取得原価主義)にかかわらず、売買目的有価証券の評価差額は課税所得の計算に反映されますzeiken.co.jp。結果として、税務上も売買目的有価証券は期末に時価評価(マーク・トゥ・マーケット)することが義務付けられています。

国税庁通達・FAQ等の指示・例示

国税庁の通達では、売買目的有価証券の時価算定方法について具体的な指示があります。主なポイントは以下のとおりです:

  • 主要市場の選定:複数の市場で活発に取引される場合は取引量・頻度の最大の「主要市場」の価格を用います。主要市場が不明な場合は、取引コストを考慮して売却価格を最大化できる市場を選びますhoki.app
  • 上場有価証券(取引所売買)の評価:上場銘柄では、事業年度末日の最終売買気配値(売り気配と買い気配)を平均(仲値)して評価額とします。売り気配・買い気配のいずれか一方のみ公表されている場合は、その値を両方として扱いますhoki.app
  • その他の価格公表銘柄の評価:店頭銘柄などでは、事業年度末日の最終の売買価格や気配値をもって評価しますhoki.app。具体的には、業界団体等が公表する最終の約定単価や気配相場の参考値などが該当しますhoki.app
  • 合理的な方法:これらの価格が入手できない場合や最終価格がない場合、企業会計基準(「時価の算定に関する会計基準」)に基づく合理的な方法(割引キャッシュフロー等)で評価額を算定することが示されていますhoki.app。これは令和2年改正により明文化されたもので、短期売買商品等でも同様に合理的算出方法の適用が認められていますhoki.app

以上の通達や税務Q&Aにより、国税庁も売買目的有価証券を期末時価評価することを前提に詳細な算定方法を示しています。

要約

会計上、売買目的有価証券はその定義に該当する限り期末時価評価が義務であり、評価差額は当期の損益に計上しますasb-j.jp。仮に棚卸資産として扱う場合でも、トレーディング目的在庫として売買目的有価証券と同等の会計処理が求められますasb-j.jp。法人税法上も、売買目的有価証券は原則と異なる時価評価が義務付けられており、期末時価と帳簿価額の差額は益金・損金に算入されますzeiken.co.jpzeiken.co.jp。国税庁の通達もこれらの評価方法を具体的に指示しており、結論として資産運用会社が売買目的有価証券を保有する場合には、会計・税務ともに期末時点で市場価格評価を行う必要があるとされますasb-j.jpzeiken.co.jp

引用

https://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/ikan_20240701_20.pdfhttps://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/ikan_20240701_20.pdfhttps://www.asb-j.jp/jp/wp-content/uploads/sites/4/20200331_03.pdf法人税法 第61条の3 売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等 | 法令集https://www.zeiken.co.jp/hourei/HHHOU000000/61-3.html法人税法 第61条の3 売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等 | 法令集https://www.zeiken.co.jp/hourei/HHHOU000000/61-3.html法人税法 第61条の3 売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等 | 法令集https://www.zeiken.co.jp/hourei/HHHOU000000/61-3.html法人税基本通達 – 第5款 有価証券の時価評価損益 | 税務法規集https://hoki.app/zeimu/corporation_tax_act_tsutatsu/0-2-3-5法人税基本通達 – 第5款 有価証券の時価評価損益 | 税務法規集https://hoki.app/zeimu/corporation_tax_act_tsutatsu/0-2-3-5法人税基本通達 – 第5款 有価証券の時価評価損益 | 税務法規集https://hoki.app/zeimu/corporation_tax_act_tsutatsu/0-2-3-5法人税基本通達 – 第5款 有価証券の時価評価損益 | 税務法規集https://hoki.app/zeimu/corporation_tax_act_tsutatsu/0-2-3-5法人税基本通達 – 第5款 有価証券の時価評価損益 | 税務法規集https://hoki.app/zeimu/corporation_tax_act_tsutatsu/0-2-3-5

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