ジェフ・ベゾスの発言
2025年10月3日のイタリアン・テック・ウィークで、アマゾン創業者ジェフ・ベゾスは現在のAI投資ブームをインターネットブームになぞらえ、「良いバブル」と表現しました。ベゾスは、地球上のデータセンターが電力や水の需要を増大させているため、10〜20年後には太陽光エネルギーを活用する宇宙空間にギガワット規模のデータセンターを建設すべきだと述べています。彼は、AIブームには投機的なバブルの側面があるものの、長期的な社会的利益をバブルの影響から切り離して考えるべきであり、インフラは未来への資産として残ると強調しました。
AI相場はバブルか否か
バブルであると考える理由
- バリュエーションが高い:S&P500のシラーPER(CAPE比率)は37〜38倍と、ドットコム・バブル期に匹敵する水準にあり、米国株全体が高値にあります。生成AIの中心銘柄(NVIDIAなど)は株価が急騰し、PERやPEG比率が高いものも多く、パランティアやクラウドストライクのPEG比率は1を大幅に超え、期待が先行しています。
- 一部銘柄への集中:いわゆる「マグニフィセント7」による指数牽引が顕著で、幅広い銘柄が買われているわけではありません。巨額の設備投資が循環的に行われている面もあり、収益性が裏付けられていない投資が混在しています。
- 投資回収の不透明さ:AIモデルの訓練にはデータセンターや高性能GPUが大量に必要ですが、急速な技術革新で資産の減価償却が早まる危険があります。専門誌では、LLM向けGPUの過剰調達が進み、ハードウェアの減価や電力・冷却インフラの負荷、AI需要の停滞による過剰供給などのリスクが指摘されています。この過剰投資は価格競争や収益性低下につながりかねません。
- 経済・金融リスク:米国経済は根強いインフレと労働市場の減速に直面しています。長期金利の上昇により、データセンターなどの設備投資を借入で賄う場合のコストが高くなり、AIブームの勢いを弱める可能性があります。AIへの巨額支出は米国GDP成長の約3分の1を占めると推定されており、バブルが崩壊すれば実体経済への影響も大きくなります。
バブルではないと考える理由
- 業績が伴っている:大手テック企業はAI関連の設備投資を自己資金で賄っており、業績は概ね市場の期待を上回っています。コンセンサスでは、主要企業の設備投資が2025年に前年比62%増、2025〜2029年に年率11%増で推移すると見込まれており、実際に高水準の売上成長が続いています。
- AI技術の将来性:生成AIや大規模言語モデルがもたらす生産性向上や新サービス創出への期待は高く、多くの産業で人手不足やコスト削減を補う存在になりつつあります。国家間競争でもAI開発は戦略的技術と位置づけられ、米中の技術覇権争いは今後もAI投資を下支えするでしょう。
- 財務基盤の健全性:ITバブル期と異なり、現在の大手テック企業は高いキャッシュフローと健全なバランスシートを持ち、借金に頼らず投資しています。そのため、バブル崩壊時の金融システム不安が生じにくいと考えられます。
現在のAI投資に潜むリスク
- マクロ経済の逆風:持続的なインフレや景気減速は企業のIT予算を圧迫し、広告収入など主要テック企業の収益源を減少させます。長期金利上昇は設備投資の資金調達コストを高め、AIブームを鈍化させるため、株価調整局面では慎重な銘柄選別が必要です。
- 物理的な制約:データセンターは大量の電力と水を消費します。米国の公共電力会社ではデータセンター向け需要が200〜2,000メガワット規模に達し、中規模都市の電力消費に匹敵するケースもあり、地球上の電力や水資源への負荷が懸念されます。これがベゾスが宇宙データセンターを構想する背景でもあります。
- 供給過剰のリスク:AIデータセンター建設が急増する一方、需要が予想より伸びなければ過剰設備となります。専門誌では、GPUの減価や電力ボトルネックに伴う運用コスト増、需要の停滞による過剰供給が市場全体の損失につながると警告しています。
投資家が注目すべきポイント
- PEG比率での銘柄評価:PEG比率はPERを予想利益成長率で割って企業価値を評価する指標で、1.0未満は割安とされます。大手AI銘柄ではNVIDIAやブロードコム、メタなどが1〜1.3倍と比較的適正水準であるのに対し、マイクロソフトやオラクルは2倍超、パランティアやクラウドストライクは6倍以上で割高感が強くなっています。株価調整局面では、適正水準にある企業は下落局面でも早期に買いが入りやすい一方、割高銘柄は戻りが遅れる可能性があります。
- インフラ層からアプリ層への移行:現在のAI投資はデータセンターや半導体といったインフラ層への支出が中心です。インフラ銘柄の株価は上昇している一方、AIを活用したソフトウェアやサービスを提供する企業の株価は総じて低迷しています。将来、AIプラットフォームやアプリケーション層へ投資が移る際に、これらソリューション企業の成長力を見極める必要があります。
まとめ
ベゾスが語ったように、現在のAIブームには投機的なバブルの側面があるものの、データセンターや高性能半導体といったインフラは将来のAI社会に不可欠な資産として残ります。一方で、CAPE比率の高止まりや限られた銘柄への集中、金利上昇やインフレなどのマクロリスク、電力・水といった物理的制約、GPUの過剰調達による供給過剰リスクなど、バブルを警戒させる材料も多いのが現状です。AI需要そのものは構造的に拡大すると考えられるため、株価が過度に調整した局面では、成長性とバリュエーションのバランスが取れた銘柄を選別して投資する姿勢が重要となります。

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