テーゼ:投機的バブルの終わりが始まっている
- 主要ETFの急落
マグニフィセント・セブンのETF「MAGS」は2025年3月に前月比10.5%下落し、2月の8%安に続いて年初来で15%超のマイナスとなりました。ビッグテック株の一角であるテスラやNVIDIAも年初来でそれぞれ35%、20%超下落しており、AIブームを支えた銘柄群が失速しています。 - モメンタム株ETFはトレンド転換
モメンタム株で構成されるMTUMは2025年11月4日に50日移動平均線を下回り、10日移動平均線も同線を割り込む「デッドクロス」を示しました。これは上昇トレンドから下降トレンドへの転換を示すサインです。 - 先端・投機セクターの弱含み
量子コンピュータETF「QTUM」は50日単純移動平均107.91ドル、指数平滑移動平均107.28ドルという売りシグナルが出ており、短期トレンドが下向きです。
ビットコインETF「IBIT」も50日移動平均63.59ドル、200日移動平均59.03ドルを下回っており、テクニカル指標全体が“売り”を示しています。
新設のミーム株ETF「MEME」は2025年1月1日の38.51ドルから11月中旬には6.52ドルまで約83%暴落しており、短期間でバブルが崩壊した典型です。 - 信用拡大と投資家行動
米国市場は2024年~25年にAIや量子コンピュータ、暗号資産といったテーマ性の強い銘柄に投資資金が集中し、過剰なリスクテイクが進みました。しかしこの半年でボラティリティが急上昇し、投機的セクターから資金が引き揚げられています。
アンチテーゼ:バブル終焉説には早計な面もある
- 大盤指数はなお堅調
S&P500は2025年5月以降、50日移動平均線および200日移動平均線の上で推移し続けており、50日線も200日線を上回っています。指数は年初来14.75%上昇し、等金額加重のS&P500(+7.12%)を上回っていることから、広範な市場はまだ強気相場の範疇にあります。 - 押し目買いの動き
Reutersによると、MAGSは3月の急落時に4営業日で5000万ドルの資金流入があり、小口投資家が下落局面を買い向かったと報じています。つまり市場参加者の一部には「押し目買い」姿勢が根強いことが伺えます。 - 量子コンピューティングの長期期待
Money Morningのレポートでは、QTUMの50日・200日移動平均線は上向きで、2025年に向けて強気の見通しと125ドルの価格目標が示されています。同ETFの構成銘柄には急成長するスタートアップが多く、中長期の技術革新が期待されているため、短期的な調整は長期投資の好機とも評価されています。 - ビットコインETFへの投資意欲
ビットコインETFへの資金流出入は激しいものの、TipRanksの分析ではIBITが年初来8.56%上昇しており、直近5日では約4.9%下落した程度。さらに、複数の中央銀行が試験的に暗号資産を保有し始めたことも伝えられています。価格の乱高下はあるものの、投資家と政策当局の関心は継続しています。
ジンテーゼ:バブルの崩壊は部分的・段階的である
- セクター間の分化が進む
2025年の株式市場では、AIや量子コンピュータなどテーマ型ETFが急落する一方、幅広い銘柄を含むS&P500は50日・200日移動平均線を維持しています。これは投機的セクターの過熱が調整されているだけで、市場全体が崩壊する局面ではないことを示唆します。 - 需給の健全化
MAGSやMEMEの暴落により投機資金が流出したものの、その資金の一部は高配当株やディフェンシブ銘柄に向かっています。バブルセクターの調整は市場の健全化につながり、長期的には持続可能な上昇を支える可能性があります。 - 警戒と機会の両立
バブル相場の終焉は、過度な信用取引やストーリー株が是正されるプロセスであり、投資家にとってはリスク管理の重要性を再確認する機会です。一方、成長テーマの中には長期的なポテンシャルを持つものも多く、押し目局面で慎重に分散投資する余地があります。
総括
バブル相場は一般に、割高で投機的なセクターから崩れ始めます。実際、AIブームを牽引したマグニフィセント・セブンやモメンタム株、量子コンピュータ株、ミーム株、ビットコインETFなどが50日移動平均線を割り込み、MAGSが年初来15%超下落し、MEMEが83%もの急落を示すなど、バブル的な過熱がしぼんでいることは事実です。一方で、S&P500は50日・200日線の上にあり、年初来14%を超える上昇を維持しているため、市場全体が崩壊しているわけではありません。今後も相場の二極化が進むなか、投機的セクターの調整と長期的テーマへの投資機会を見極めるバランス感覚が重要になるでしょう。

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