ドル円だけ見る愚:ガンドラック氏が警告する“紙切れ同士の比較”


1. 定立(主張) – ドルは下落し続ける

  • ドル指数の大幅な下落と弱気論
    ガンドラック氏によれば、2025年のドル指数は115付近から97付近まで下落し、調整らしい調整もなく下がり続けたと述べています。実際、RBCウェルスマネジメントは2025年前半のドル指数が約10%下落しており、インベストペディアの記事では11月13日時点のドル指数が99.15と報じています。
    このような下落トレンドを踏まえ、ガンドラック氏はドルを空売りするのが簡単で有利な状況と評し、ドル相場は反発らしい反発なく下がり続けるため今後も下落が続くと予測しています。
  • 政策要因と資金流出への懸念
    彼は、トランプ政権が金融緩和に積極的であり利下げ圧力が高まること、加えて米国からの資金流出が続くことをドル安の要因に挙げています。実際、2025年4月の関税強化に伴う資本流出懸念があったものの、前半のドル安でそれが顕在化したとRBCは解説しています。ガンドラック氏は、こうした環境下でドルを「支配的資産」として持ち続ける投資家は損をする可能性が高いと警告し、ドルへの過度な依存から脱却すべきだと訴えています。
  • 日本の投資家への戒め
    ドル円相場だけを見て「ドル高」と判断する日本の投資家に対して、ガンドラック氏は「より価値のない紙幣から、少しましな紙幣に乗り換えただけだ」と指摘しています。円はドル以上に弱くなっており、ドル指数ベースでみればドルは下落している。RBCは購買力平価ベースで米ドルが主要通貨に対して依然15%ほど過大評価され、円は50%程度割安だと分析しており、ドル円の上昇は円の弱さが大きな要因であることが分かります。

2. 反定立(反論) – ドル下落は必ずしも一方通行ではない

  • 2025年後半のドルは下落一服
    RBCの分析によると、2025年前半の急落後、米ドルは7月以降狭いレンジで推移し、外国人投資家の米資産需要が予想以上に強くドルの下落が止まったと指摘しています。ドル指数が99前後で推移し、11月13日時点では99.15と報じられていることから、急激な下落局面は一時的な調整だった可能性もあります。
  • 相対的な金利差と安全通貨としての需要
    ドルの行方は、米国と他国の金利差や成長率、政策不確実性によって左右されるとRBCは述べています。米国が高金利を維持する場合、相対的な金利差がドルを支える可能性があります。また、ドルは世界の基軸通貨であり、地政学的リスクが高まる局面では安全通貨としての需要が高まることもあるため、反発局面があり得ると考えられます。
  • 長期的には過大評価だが短期的な変動は不安定
    RBCは米ドルが購買力平価ベースで過大評価されており、長期的には下落しやすいとしながらも、ドルの道程は線形ではなく「周期的な景気・金利差によって反発もある」と明言しています。したがって、「ドルはずっと下がり続ける」という単純な見方は危うく、短期的な上昇局面を無視した投資判断はリスクが高いことを示しています。

3. 総合(止揚) – 構造的な弱さと循環的な強さの間で

  • 長期的な弱含み:構造要因と過大評価
    ガンドラック氏が指摘するように、米国の大幅な財政赤字や金融緩和姿勢、資金流出はドルの構造的な弱さとなり得ます。RBCの分析も、購買力平価ベースで米ドルは主要通貨に比べ15%も割高であり、長期サイクルが弱気局面に移行しつつある可能性を示唆しています。このため、長期的にはドルが下落し、非米資産や実物資産への分散が重要になるという点で両者は一致しています。
  • 短期的な強さ:景気・金利差と安全通貨としての役割
    他方で、ドルは世界の基軸通貨であり、景気や金利差に応じて相対的な優位が生じることがあります。2025年後半にドルが下げ止まった背景には、米国の金利が他国より高いことや外国人の米資産需要が想定ほど減らなかったことがあるとされます。また、世界的な不確実性が高まる局面ではドルが安全資産として買われやすく、その点でドル円の上昇が単に円の弱さだけでない側面も含まれます。
  • 投資家への示唆:分散と慎重な視点の必要性
    以上を踏まえると、「ドルは永遠に下がる」と決めつけてドルを全面的に売り込むのも危険であり、「ドルは安全だから持っていれば安心」という見方も同様に危険です。長期的にはドルの過大評価と米国の財政・金融政策が下落圧力を生む一方、短期的には金利差や世界情勢による反発が十分あり得るためです。
    投資家は、ドルの動きをドル円の単一通貨ペアだけで判断せず、購買力平価や他通貨との相対価値、経済・政策動向を複合的に見る必要があります。また、非米資産やゴールドなどの実物資産への分散を検討する際も、価格が既に大きく上昇している場合は慎重に行うべきです。RBCは「ドルの過大評価と米資産への過度な偏りを踏まえ、国際分散投資の戦略的価値が再評価される」と述べています。

要約

  • ガンドラック氏は、2025年にドル指数が115から97付近へ大幅下落したことを根拠に、ドル安が続くと予想している。彼はトランプ政権の金融緩和や米国からの資金流出がドルの構造的弱点であり、ドルを長期保有すると損をすると警告し、非米資産やゴールドへの分散を推奨している。
  • しかしRBCなどは、2025年前半の急落後ドルは7月以降レンジ内で推移し、外国人投資家の米資産需要や金利差によって下げ止まっていると報告する。また、米ドルは依然として基軸通貨であり、安全資産として買われる局面もあるため、短期的な反発は十分にあり得る。
  • 長期的には、購買力平価ベースで米ドルが主要通貨に対して15%程度過大評価されており、円は50%程度割安であるとの分析があり、ドルの構造的な下落要因が存在する。一方で、短期的には金利差や景気・安全通貨需要などで反発する可能性も高い。
  • このため、ドル安を前提に投資する場合でも、反発局面を考慮した慎重な姿勢と国際分散投資が求められる。長期的な下落トレンドと短期的な循環を踏まえたバランスの取れた資産配分が望ましい。

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