マンデル=フレミング・モデル(IS-LM-BPモデル)は、IS‑LMモデルに国際収支を表すBP(Balance of Payments)曲線を加えたもので、資本移動が自由な小国を前提に、財政政策や金融政策が為替レートの仕組みとどのように連動するかを分析します。特に、変動為替制度の下で財政拡大がどのような影響を及ぼすかは、財政拡大→金利上昇→資本流入→自国通貨高という連鎖で説明されます。
財政拡大から金利上昇へ
政府支出の増加や減税による財政拡大は、総需要を押し上げ、財市場の均衡を表すIS曲線を右にシフトさせます。その結果、国内総所得(Y)と国内金利(i)が上昇します。これは資本移動が自由な場合に重要な意味を持ちます。なぜなら、海外との資本取引が自由であれば、国内金利が世界金利より高くなると外国からの投資資金が流入しやすくなるからです。
金利上昇が資本流入をもたらす
マンデル=フレミング・モデルでは、完全資本移動を想定すると、国内金利が上昇すると海外投資家が相対的に高い利回りを求めてその国の資産を購入します。これにより資本が流入し、国際収支の資本勘定が黒字になります。この段階で資本流入が進み、外国為替市場で自国通貨の需要が高まります。
資本流入が円高をもたらす理由
資本流入は自国通貨で資産を買うための需要を増やすので、為替市場では自国通貨に買い圧力がかかります。その結果、自国通貨(ここでは円)が世界の他通貨に対して価値が上がり、「円高」となります。五ableが提供する国際経済学の解説でも、財政拡大は総需要を増やす一方で金利を押し上げ、それが資本流入と通貨高を招くと指摘しています。
円高が財政拡大効果を打ち消す仕組み
円高は輸出品を高く、輸入品を安くするため、純輸出(NX)が減少します。IS曲線を右にシフトさせた財政拡大は、円高の進行によって輸出の減少と輸入の増加を招き、純輸出の減少という形で総需要を押し下げます。国際経済学の資料では、資本流入に伴う通貨高が輸出を減少させ、輸入を増加させることで、初期の需要刺激効果を打ち消し、最終的には所得も金利も元の水準に戻ると説明されています。
理論的連鎖のまとめ
マンデル=フレミング・モデルに基づく変動相場制下の財政拡大の連鎖は次のとおりです。
- 財政拡大(政府支出増加・減税)
IS曲線が右へ移動し、総需要が増加、所得と金利が上昇します。 - 金利上昇
国内金利が世界金利より高くなると、海外投資家にとって魅力的になり、資本流入が始まります。 - 資本流入
外国からの資本流入は為替市場で自国通貨の需要を高め、国際収支の資本勘定が黒字になります。 - 通貨高(円高)
資本流入に伴う自国通貨需要の増加が円高を引き起こし、輸出は減少し輸入は増加します。 - 純輸出の減少と需要効果の減退
通貨高による純輸出減少がIS曲線を元に戻すため、最終的には所得・金利が初期水準に戻り、財政拡大の効果は相殺される。
要約
マンデル=フレミング・モデルは開放経済の短期分析であり、変動為替制のもとでは財政拡大が効果を発揮しにくい理由を示します。財政拡大により国内金利が上昇すると資本が流入し、円高が進み、輸出減少と輸入増加によって総需要が弱まり、最終的には所得が元の水準に戻る。このため、変動相場制下では金融政策の方が有効であり、財政政策の効果は通貨高によって大きく制約されることが理解できます。

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