インフレ時代の自動車投資:価値が下がらない車種

インフレ局面と中古車市場の背景

日本は資源価格高騰や円安によって物価上昇が続き、新車市場では半導体不足や物流混乱で納期が長期化しています。このため「すぐに手に入る車」を求める需要が中古車市場に集中し、2020年代以降、SUVやミニバン、商用バンなどの価格が急騰しました。特に円安により、日本車は海外バイヤーにとって割安となり、輸出向け需要が高まり、国内在庫が減少して価格高騰を助長しています。こうしたインフレ環境では資産価値が落ちにくい車種に注目が集まります。


テーゼ:車を資産として捉え、価値保存を目指す視点

  • 輸出需要の大きい車種はリセールバリューが高い
    トヨタ「ランドクルーザー」は耐久性に優れ、国内外で人気が高いことから中古車価格が下がりにくく、過去のデータでは5年後でも残価率が8割を超える高水準を維持しています。豪華ミニバンの「アルファード」も国内外で需要が旺盛で、部品不足による納車遅延が続く中、現行モデルだけでなく旧型も高いリセールバリューを保っています。商用バンの「ハイエース」は積載能力と故障の少なさからアジアや中東で人気が高く、5年落ちでも残価率70%前後という驚異的な数値を示します。
  • 小型で希少なモデルも値崩れしにくい
    スズキ「ジムニー」は軽自動車ながら本格的なオフロード性能と堅牢なラダーフレーム構造で国内外から支持され、新車価格より中古車価格が高いケースさえあります。ホンダ「シビックタイプR/シビック」はスポーティな走行性能と希少性から高い残価率が続き、2024年時点で5年落ちでも価値の下落が緩やかです。トヨタ「ライズ」「RAV4」などコンパクトSUVも燃費性能と荷室の実用性が評価され、値落ち幅が小さいとされます。
  • ロングセラーや海外人気のシリーズ
    ブランド力のある長期モデルは幅広い層から需要があり、モデルチェンジ後も先代型の需要が落ちにくいのが特徴です。ランドクルーザーやアルファードのように国内納車待ちが長期化すると、旧型まで価格が上昇することがあり、資産価値を保ちやすい車種と言えます。

アンチテーゼ:車は消費財であり、投資としてはリスクも大きい

  • 基本的には減価償却資産
    多くの車は時間と走行距離に比例して価値が下がります。維持費や税金・保険料もインフレで上昇し、燃料費や修理費の増加で実質リターンは目減りします。また、事故や故障、災害で急激に価値を失うリスクもあります。
  • 供給回復による相場変動
    半導体不足や物流の混乱が解消されると新車供給が改善し、中古車相場は調整局面に入りつつあります。一時的な高騰に乗じて高値で購入してしまうと、供給正常化後に価格が下落し、損失を抱える可能性があります。
  • 技術革新による陳腐化
    電動化・自動運転技術の進展が急速に進む中、従来型のガソリン車は将来価値が不透明です。特に排出規制が強化されると、ガソリン車やディーゼル車の市場価値が下落するリスクが高まります。
  • 保安リスクや管理コスト
    リセールバリューの高い車種は盗難件数が多く、高性能な防犯対策が必要になります。駐車スペース確保や定期的なメンテナンスのコストも負担となります。

ジンテーゼ:価値保存を狙う車選びの条件と留意点

  • 世界的な需要と供給バランスを重視
    インフレ環境で中古車価格が上昇する背景には、世界的な供給不足と円安による輸出需要の増加がありました。価値保存を狙うならば、国内外で需要が高く、供給がタイトな車種を選ぶことが重要です。ランドクルーザー、アルファード、ハイエース、ジムニーのように、輸出や国内市場で人気が高く、生産台数が限られているモデルは将来的に資産価値を保ちやすいでしょう。
  • 希少性と耐久性、ブランド力が鍵
    生産台数が少ない限定車やスポーツカー、長年続く名車は、希少性と耐久性の高さで価値が下がりにくい傾向があります。歴代モデルがコレクター需要で高値を維持している例として、ポルシェ911やメルセデス・Gクラスが挙げられます。国産ならジムニー、ハイエースなどが該当します。
  • 投資対象としてはリスク分散を忘れずに
    車は基本的に消耗品であり、リスクも多い資産です。インフレヘッジとして購入する場合は、車単体ではなく他の資産と組み合わせた分散投資を検討しましょう。また、購入後はメンテナンスや保管環境に注意し、買取需要が高まる時期やモデルチェンジ前後のタイミングで売却するなど、出口戦略も重要です。
  • 将来の規制や市場変化を視野に入れる
    EV化や自動運転の普及、環境規制強化などで、人気車種の順位は大きく変動する可能性があります。現時点ではガソリンやディーゼル車が輸出需要を背景に高値を維持していますが、環境政策の転換次第では価値が変わるため、長期的な視点で予測を立てる必要があります。

要約

インフレ下の日本では、中古車価格の高騰が続き、一部の車種が資産価値を保つ「投資対象」として注目されています。特に、トヨタのランドクルーザーやアルファード、ハイエース、スズキのジムニーなどは、海外需要の高さや供給不足に支えられて高い残価率を維持しています。また、スポーツモデルや希少車も値崩れしにくい傾向があります。一方、車は基本的に消費財であり、インフレで維持費が増加し、新車供給が回復すれば中古相場は落ち着く可能性があります。投資目的で車を選ぶ場合、世界的な需要や希少性、ブランド力を重視しつつ、技術革新や市場変化のリスクを踏まえた分散投資を心がけることが重要です。

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