1. 正(テーゼ):指数集中とインデックス投資バブルの進行
- 企業の集中度の高まり – S&P500の時価総額上位はNVIDIAやマイクロソフトなどの巨大テック企業(Mag7)に偏っており、米国株式市場の成長が実体経済から乖離している。指数のリターンは過去15年間で大きく加速し、PERも23倍まで上昇している。
- パッシブ運用の拡大 – 新NISAなどの影響で日本でもS&P500へのインデックス投資が急増し、世界的にもパッシブ運用がアクティブ運用を上回った。パッシブ資金が指数構成銘柄に自動的に流入することで、価格発見機能が弱まり、マルチプルがさらに拡大しやすい構造になっている。
- AI投資競争による構造変化 – ビッグテックがAGI開発で全面戦争に突入したことで、データセンターや半導体への巨額投資が進み、設備投資額は5年間で約6倍に増えた。営業利益を超える投資が続けば、近い将来EPSが下押しされ、既存の高PERが正当化しにくくなるリスクが生じる。
2. 反(アンチテーゼ):神話継続と合理性の主張
- 巨大企業の安定した利益基盤 – Mag7企業は依然として高い利益率と強固なキャッシュフローを持ち、フリーキャッシュフローも潤沢である。アップルの大規模な自社株買いに象徴されるように、株主還元力が極めて高いのは事実。
- インデックス投資の合理性 – 長期的に株価指数が上昇してきた歴史や、個別株選択の難しさを考えれば、インデックス投資は一般投資家にとって依然として最適解という考え方もある。過去数十年にわたる米国の名目GDP成長率はおおむね安定しており、指数のリターンは世界規模での売上取り込みに支えられている。
- AI投資の成長ポテンシャル – 巨額投資は短期的にEPSを圧迫するものの、AI革命による新たな収益源や効率化が実現すれば、長期的には利益基盤をさらに強固にする可能性がある。投資が先行投資として機能するなら、現在のPER水準も一部正当化される。
3. 合(シンセーゼ):市場の行方と投資家への示唆
テーゼとアンチテーゼを総合すると、S&P500の成長神話は過度な楽観と現実のリスクの間に揺れていると言える。指数はMag7の好収益やパッシブ資金の集中によって膨張しているが、AI投資競争はその構造を転換させる引き金となりうる。投資家は分散を心がけ、指数偏重の構造が変化する局面に備える必要がある。
要約
米国株式市場がテクノロジー大手への過度な依存とインデックス投資の急拡大により構造的バブルに陥っている可能性がある。Mag7に代表される企業が指数の成長を牽引し、PERは過去最高水準に達している。一方で、投資家の大多数がS&P500を無条件に積み立てる流れが、価格発見機能の低下やフローの枯渇といったリスクを内包している。さらに、AGI開発を巡るAI投資競争によってビッグテックは莫大な設備投資を迫られ、EPSが抑制される可能性も指摘される。こうした構造変化を踏まえ、インデックス神話の持続と破綻を両面から捉え、リスク管理と分散投資の重要性を強調したい。

コメント