ビットコイン失速、金鉱株加速

2025年は金価格が史上最高値を更新し、金鉱株指数(GDX、GDXJ)が年初来で2倍以上の上昇を示す一方、ビットコインは10月の米中関税問題をきっかけに約1万9000億ドルの強制決済を招き、記録的な急落に見舞われました。これによって、投資家の間で「安全資産」を巡る議論が再燃し、デジタル資産への熱狂から伝統的な金および金鉱株への資金シフトが目立つようになりました。以下では、ビットコインが売られ金鉱株が買われる理由を弁証法的に検討します。

正(ビットコイン売り)の側面

  • 安全資産としての信認低下 – ビットコインは希少性や脱中央集権性で「デジタルゴールド」とも言われますが、実際は株式やリスク資産との相関が高く、市場の混乱時には大幅な下落を見せます。2025年10月の急落では、ビットコインが1週間で約20%下落し、オプション市場では大幅なプット買いが起きました。このようなボラティリティや短期的なレバレッジの unwinding は、安全資産よりも投機資産に近い性質を示します。
  • 流動性・規制リスク – ビットコインの取引量は約500億ドルに過ぎず、数十万BTCの大量売却が市場価格に大きな影響を与えるため、流動性リスクが存在します。さらにブロックチェーンの51%攻撃や量子コンピュータによる暗号解読、各国の規制強化など、従来の安全資産にはない技術・政策リスクも抱えています。
  • 機関投資家の不在 – 株式や金が過去最高値を更新する中でも、暗号資産市場には大手金融機関の参入が限られ、暗号ネイティブ投資家の資金疲弊が指摘されました。資金流入が細る中では、短期的なリバウンドも限定的となります。

反(金鉱株買い)の側面

  • 金価格の構造的上昇 – 2025年、中央銀行は年間1000トンを超える金を購入し、脱ドル化を進めました。米中の貿易摩擦や地政学的緊張が高まる中、金価格は4000ドル/オンスを突破し、過去50%以上の上昇率を記録しました。供給は年1%程度しか増えないため、この需要増は持続的な価格押し上げ要因となっています。
  • 金鉱株の利益率向上と割安感 – 金価格の高騰により、平均的な金鉱会社の全般的なコストは1600ドル前後でも、4000ドル超の価格ではほぼ全ての企業が大きな利益を上げています。多くの鉱山会社は過去のバブル期と比べて資本規律が改善しており、債務を抑え余剰資金を株主還元に充てる動きも見られます。それにもかかわらず、GDXやGDXJなどの金鉱株ETFは年初来100%超上昇しながらも、総資金は50億ドル以上流出しており、株価は依然として金価格に比べて割安に放置されているとの指摘があります。
  • レバレッジ効果 – 金鉱株は金価格の動きを増幅します。2025年の金価格が50%強上昇したのに対し、金鉱株指数は115%以上上昇しました。逆に金が調整すれば金鉱株は30%前後下げる可能性もありますが、投資家はこのレバレッジを利用して高リターンを狙います。

合(統合)の視点

両資産は「希少性」「通貨発行権への非依存」といった共通点を持ちながら、役割やリスク特性が大きく異なります。ビットコインは高い成長性を持つが価格変動が激しく、「流動性が改善しリスク資産が買われる局面」で力を発揮します。一方、金および金鉱株は金融・政治危機時に資金が集まり、特に中央銀行の買い越しや供給制約が続く限り、構造的な上昇余地を持ちます。

弁証法的に見ると、「ビットコインか金か」という二項対立ではなく、状況に応じて両者を組み合わせる動的な資産配分が導かれます。危機時には金・金鉱株を中核に据え、流動性供給やリスクオン局面ではビットコインなどのデジタル資産に一部を移すことで、資産の保全と成長を両立できます。また、金鉱株は配当やキャッシュフローを生み出すため、長期保有の魅力も備えます。

要約

2025年、米中貿易摩擦や金利低下を背景にビットコインは大幅に下落し、暗号資産からの資金流出が目立ちました。その一方で、中央銀行の記録的な買い越しや供給制約を受け、金価格は過去最高値を更新し、金鉱株は年初来で100%超の上昇を遂げました。ビットコインは高いボラティリティと規制リスクから安全資産としての信頼を失いがちであるのに対し、金および金鉱株は伝統的な安全資産としての地位を再確認しました。弁証法的には、両者は相反する存在ではなく、投資環境に応じて使い分ける補完的な役割を果たします。

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