金鉱株ETFであるGDXやGDXJは、2025年に入ってから金価格の急騰を背景に年初来で100%以上上昇しました。これは、各国の中央銀行による歴史的な金買い(年間1000トン超)、ドル離れの進展、地政学リスクの高まりなどを受けて金が「安全資産」として再評価された結果です。金鉱会社の採算コストは平均で1,600ドル/オンス前後に対し、金価格は一時4,000ドルを超える水準まで上昇したため、ほぼすべての主要鉱山が高水準の利益を上げています。また、金鉱企業は前回のブーム期にみられた無秩序な設備投資を抑え、財務の健全性や株主還元を重視する姿勢に転じていることも投資家心理を支えています。
しかし、価格上昇にもかかわらず、GDXとGDXJには合計で50億ドルを超える資金流出が発生しました。これは、株価上昇の過程で機関投資家が保有株を利食いして売却したこと、金鉱株が金そのものよりもボラティリティが高く、リスク許容度の低い投資家が金や金関連ETFに資金を移したことなどが背景と考えられます。金鉱株は金価格の変動を倍増させる「レバレッジ効果」があり、金が20%上がれば株価が40〜60%上昇する一方で、逆に金が調整すれば株価の下落幅も大きくなります。このリスク要因が個人投資家や一部のファンドによる売却を誘発した可能性があります。
加えて、金鉱株ETFの純資産は減少したものの、株価自体は高騰したため、発行済み株式数(ユニット)が減り、その分指数の相対的な割高感が抑えられました。現在の金価格水準を前提にした場合、主要鉱山会社のPERは過去のゴールドラリー時(金が1,800ドル付近)の20〜30倍に対し、今は13〜25倍程度で、金価格の上昇に株価が十分追いついていないことがわかります。つまり、金鉱株は利益成長の割に評価が低く、「割安に放置されている」と指摘される理由です。
要約
- 2025年にGDXやGDXJといった金鉱株ETFは年初来で100%超上昇した。
- 金価格の記録的上昇と中央銀行の旺盛な買いが背景で、金鉱企業の収益性は大きく改善している。
- その一方で、これらのETFからは50億ドル以上の資金が流出しており、株数の減少と機関投資家の利確、金そのものへの資金シフトが要因と見られる。
- 金鉱株のPERは過去のゴールドブームよりも低く、金価格の上昇に対して株価が出遅れており、「割安」と判断されている。
- 高いボラティリティとレバレッジ効果が投資家心理を二分しており、長期視点では再評価余地を残している。

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