概要

米国には金価格に連動するETFが多く存在しますが、それぞれに特徴があります。ProShares Ultra Gold(UGL)と SPDR Gold MiniShares Trust(GLDM)は、名前は似ていますが構造が大きく異なります。UGLは金先物やスワップで金価格の2倍の動きを目指すレバレッジ型ETFであり、デイトレードのような短期売買向けに設計されています。一方、GLDMはロンドンに保管された現物の金を保有するファンドで、手数料を抑えつつ金価格をそのまま反映させることを目標にしている長期投資向けのETFです。本稿では両者の経費率、運用目的、構造などを詳しく比較します。

比較表

項目UGL(ProShares Ultra Gold)GLDM(SPDR Gold MiniShares Trust)
ファンド目的ブルームバーグ金サブインデックスの収益率の2倍の変動を目指すLBMA金価格PMをベンチマークとする金現物の価値を反映することを目指す
構造コモディティ・プール(先物およびスワップ、COMEX先物が中心)グラントー・トラスト。信託内に保管された現物金を一部売却して経費を賄う
レバレッジ2倍なし。金価格にそのまま連動
経費率0.95%(総経費率)0.10%(総経費率)
純資産総額(AUM)約9.1億ドル(909.7 M)約239.8億ドル(23,985.8 M)
設定日2008年12月1日2018年6月25日
主要投資対象Bloomberg Gold Subindexに連動する金先物、スワップLBMA金価格PMをベンチマークとする金地金。ロンドンの金庫に保管
配当/分配配当なし。保有資産は金先物のみのため配当なし(保有資産が金のみのため)
オプション取引ありなし

投資家への注意点

  • UGL
    • 日々再設定されるレバレッジ型の金融商品で、短期的な売買に向いており、中長期保有では収益率が本来より大きく乖離する可能性があります。
    • デリバティブ(先物・スワップ)を利用するため、先物価格の動きや証拠金管理により想定外の損失やロールオーバーの影響を受けることがあります。
    • 投資家はK-1税務フォームを受け取る可能性があり、税務処理が複雑になることがあります。
  • GLDM
    • 現物の金価格に連動するため、保有コストを含めた経費は比較的小さいものの、信託が経費支払いのために保有金を売却することから1株当たりの金量が少しずつ減少します。
    • 長期保有に適する商品ですが、米国税制では金ETFが「コレクティブル扱い」となる場合があり、長期保有時には一般株式よりも高い税率が課される場合があります。
    • 金そのものの価格変動リスクを負うため、金価格の長期的な動きに左右されます。

詳細解説

UGL – ProShares Ultra Gold

UGLはブルームバーグ金サブインデックスの指標を基準に、COMEX金先物やスワップ契約を組み合わせて1日の収益率を2倍にすることを目指すレバレッジ型ETFです。資産の大部分が先物とスワップで運用されるため、日々の価格変動が大きく、短期間で大きな損益を生むことがあります。また、レバレッジ効果により、金価格が大幅に動かなくても価格が振れやすいのが特徴です。経費率は0.95%と高く、これには先物のロールオーバーやスワップ取引の費用が含まれています。商品プール構造により投資家はパートナーシップ扱いとなり、税務書類としてK-1が発行される場合がある点も留意が必要です。

GLDM – SPDR Gold MiniShares Trust

GLDMはロンドンの金庫に保管された金地金を保有する信託で、LBMA金価格PMの基準に沿った金価格の動きを再現することを目指します。1株あたり約1/10オンスの金に裏付けられており、低廉な経費率(0.10%)を実現しています。設定価格は低めで、少額から購入できるのが魅力です。保有コストが低い反面、経費支払いのために金の一部を売却する仕組みであるため、時間とともに1株あたりの金量が徐々に減る点に注意が必要です。また米国の税制上、金に対する長期保有税率は一般株式より高い「コレクティブル税率」が適用されることがあります。

要約

UGLは金価格の2倍の値動きを狙うレバレッジETFで、金先物やスワップを組み合わせて日単位で再調整されるため短期トレード向けです。経費率が0.95%と高く、長期保有では基準指数との差が広がりやすいこと、K-1税務フォームの発行など税務上の複雑さがある点に注意が必要です。一方、GLDMはロンドンで保管された現物金を裏付けとする低コストの金ETFで、経費率はわずか0.10%と業界最低水準です。長期的に金価格の動向を反映するシンプルな商品ですが、経費支払いのために1株あたりの金量が減少することや、米国の税制上「コレクティブル」として扱われる場合がある点を理解しておく必要があります。

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