COMEXとは何か
COMEX(Commodity Exchange Inc.)はニューヨークに拠点を置く貴金属や産業金属の先物・オプションを扱う取引所で、現在はCMEグループの一部です。金や銀などの先物取引が活発で、世界の金価格発見(値決め)に大きな影響を及ぼしています。ほとんどの契約は現物の受け渡しを目的とせず、満期前に反対売買で決済されます。つまり、投資家同士が将来の価格変動を取引し合うことで市場が形成されています。
金先物契約の特徴
標準的な金先物は1枚につき100トロイオンスの金を基準としています。この契約単位のおかげで、1枚の先物契約を通じて大量の金価格変動にアクセスできます。COMEXではミニやマイクロと呼ばれる小型契約も提供され、標準契約の1/5や1/10のサイズで取引できるため、資金量に応じた取引が可能です。契約には限月(満期日)が設定されており、満期まで保有すると現物で決済することもできますが、大半の取引参加者は満期前に反対売買で決済し、差額損益のみを受け取ります。
価格形成とロールオーバー
金先物の価格は将来の予想価格や金利、保管コストなどを反映します。期先の契約ほど金利などが上乗せされることが多く、この状態を「コンタンゴ」と呼びます。逆に、期先の価格が期近より低い場合は「バックワーデーション」と呼ばれます。先物を継続保有する際は、満期が近づいた契約を売って次の限月の契約を購入する「ロールオーバー」が必要です。その際に価格差による利益またはコストが生じるため、先物型ETFやファンドではロールオーバー・コストがパフォーマンスに影響します。
先物取引の基本構造
先物契約の定義
先物契約は、将来の特定日(満期日)に特定数量の資産をあらかじめ定めた価格で売買することを約束する標準化された取引です。契約内容には「数量や品質」「取引単位」「最小値動き(ティック)」「満期月」「受渡場所」などが規定されています。株式や債券のように個別に発行されるのではなく、取引所に上場された標準化商品です。
ヘッジと投機
先物市場の参加者は大きくヘッジャー(実需家)と投機家に分かれます。
- ヘッジャーは、将来の価格変動リスクを回避するために先物を利用します。例えば、金鉱山会社や宝飾品メーカーが将来の金価格を一定に固定するために売り先物(ショート)を行ったり、金を必要とする企業が買い先物(ロング)を行ったりします。
- 投機家は価格変動を利用して利益を狙います。将来価格が上がると予想すれば買い先物を、下がると予想すれば売り先物を立て、満期前に反対売買で差額を得ようとします。投機家が市場に参加することで流動性が増し、ヘッジャーが取引相手を見つけやすくなるため、市場は成立します。
取引所と清算機構
ほとんどの先物取引は電子取引で行われ、取引所には「清算機構(クリアリングハウス)」が付随します。清算機構はすべての売買の相手方として機能し、取引の履行を保証します。そのため、投資家は特定の相手の信用リスクを負うのではなく、清算機構の信用力を前提に取引できます。
マージン(証拠金)とレバレッジ
先物取引には「証拠金制度」があり、契約総額の数%程度の資金(初期証拠金)を預託することで取引が可能になります。この証拠金は借入ではなく「善意の保証金」であり、契約を履行する能力を示すための担保です。証拠金の割合は商品や市場のボラティリティで変動します。価格がポジションに不利に動くと追加保証金の要求(マージンコール)を受け、応じられない場合は強制決済されることもあります。証拠金が小さいほどレバレッジは大きくなり、わずかな価格変動でも損益が大きく拡大するためリスクが増大します。
決済方法
先物契約の決済には現物受渡しと差金決済の2種類があります。金や原油などのコモディティ先物では、満期時に規定された数量の現物を実際に受け渡すことができます。ただし、実際に現物まで受け渡すケースは少なく、多くは期日前に決済されます。株価指数や金利など現物の受け渡しが困難な対象は差金決済が標準で、満期時に当初契約価格と期日価格の差額を精算します。
要約
COMEXは貴金属を中心とした世界有数の先物取引所で、金先物は標準100トロイオンスの契約単位で取引されています。金先物ではコンタンゴやバックワーデーションなど期近・期先の価格差が存在し、ロールオーバー時に費用が発生する場合があります。先物契約全般は、将来の価格を事前に固定する標準化された合意で、ヘッジャーは価格変動リスクの回避に、投機家は利益追求に利用します。取引所の清算機構によって履行が保証され、証拠金制度によってレバレッジが効く一方、価格変動が少しでも想定と逆に動くと大きな損失を被るリスクがある点に留意が必要です。

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