金銀高・原油安が同時に起きたとき、鉱山株は最も危険な上昇を始める



命題:鉱山株が急騰する理由

  • エネルギーコストの重要性
    鉱山業では燃料と電力が総運転費用の15〜40%を占め、移動機械が使用するディーゼルだけで燃料消費の約70%を占めます。燃料費の低下は直接的に採掘コストを押し下げます。
  • ディーゼル価格の低迷
    米エネルギー情報局の短期見通しでは、2025年のディーゼル平均価格は1ガロン当たり3.61ドルで、2022年平均より大幅に安い予想です。四半期別では3.46〜3.75ドルと見込まれ、燃料費は抑制されると考えられます。
  • 金・銀価格の高騰
    2025年には金価格が55%以上上昇し、年末には1オンス4,334ドル台で取引されています。銀も120%以上上昇し、史上初めて65ドル/オンスを突破しました。貴金属価格の急騰は鉱山会社の売上を増加させ、利益率を高めます。
  • 原油価格の低迷
    国際エネルギー機関は2026年の世界原油供給が需要を日量約380万バレル上回ると予測し、市場では供給過剰が意識されています。ブレント原油は60ドル前後、WTIは57ドル前後で推移しており、2026年も平均50ドル台と予想されています。原油安はディーゼル価格に下押し圧力をかけ、採掘コスト低下を後押しします。

以上から、燃料費が低いまま貴金属価格が急騰している状況は鉱山株に大きな上昇トレンドをもたらすと主張されています。


反対命題:リスクと反論

  • エネルギー以外のコストの重さ
    鉱山業の残りの60〜85%は人件費や鉱石品位の低下に伴う処理コスト、環境対策費用、資本支出などです。鉱石の品位低下や深掘りによりエネルギー消費はむしろ増加傾向で、燃料費だけで全体コストは決まりません。
  • ディーゼル安は永続しない可能性
    EIAは2025年のディーゼル価格が年後半には3.75ドルまで上昇すると見ており、投資銀行は2028年には原油が80ドルに回復するとも予測します。地政学リスクやOPECプラスの減産で原油・ディーゼル価格が再び上昇し、採掘コストが増加する可能性があります。
  • 環境・脱炭素への投資負担
    多くの鉱山会社が2030年の排出削減や2050年のネットゼロを掲げており、再生可能エネルギーや電動化への投資、炭素税、ESG資金調達が利益を圧迫する恐れがあります。
  • 金・銀価格の高いボラティリティ
    銀市場は規模が小さく、金価格の2〜2.5倍の値動きを示すことがあります。投資主導の急騰が続くと、反落局面で鉱山株のボラティリティが跳ね上がる可能性があります。金・銀価格の上昇は金利やドル安、安全資産需要に支えられていますが、各国の金融政策が変われば環境は急変します。
  • 需給と政治リスクの不確実性
    原油については供給過剰の見方がある一方、OPECプラスの減産や地政学リスクで供給不足となる可能性もあります。金属供給も、鉱山開発の遅延や規制強化で制約される可能性がある一方、中国やインド需要の減退が価格下落要因になるなど、複合的要素に左右されます。

これらの要素から、燃料安と貴金属高が永続しないリスクや、他のコスト要因・市場変動が鉱山株上昇を阻害する可能性が指摘されています。


総合(止揚):総合的な評価

燃料費の低下と金・銀価格の高騰という組み合わせは鉱山株に追い風ですが、鉱山業のコスト構造はエネルギーだけでなく、人件費・資本支出・環境規制など多岐にわたります。また、原油価格の将来的な反転や脱炭素投資の負担、貴金属市場の高いボラティリティも無視できません。したがって、鉱山株への投資は追い風を享受しつつも、他のコスト要因や市場リスクを総合的に考慮し、慎重な判断が求められます。


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