テーゼ(事業税の申告期限基準)
事業税は都道府県が課す地方税で、法人の事業活動に対する応益課税として位置づけられています。所得(利益)に対して課税される部分は国税の法人税に似ていますが、課税主体が異なることから制度設計が違います。税務上、事業税は損金に算入できる「費用」として扱われるため、いつ費用になるかが重要です。この点で採用されているのが「申告期限基準」です。事業税は申告納税方式であり、納付額が申告によって法的に確定するため、申告書を提出した事業年度に債務が確定し、その時点で初めて損金に算入できるという考え方です。このルールにより、企業は確定額のみを費用認識するため税務上の信頼性が保たれます。
アンチテーゼ(法人税・法人住民税との相違)
一方、法人税や地方税のうち法人住民税の「法人税割」などは、そもそも損金にはならないため、債務確定のタイミングを巡る議論が発生しません。国税である法人税は、法人の所得に対する応能課税であり、法人の利益を社会に還元させるための税金と位置付けられています。そのため税務計算上は費用に算入せず、支払税額は直接資本から控除されるため、費用認識の基準を定める必要がありません。法人住民税の多くも法人税額を基準とするため、金額が法人税の確定に伴って機械的に計算され、損金に算入しない扱いが一般的です。一部の均等割や固定資産税のような地方税は損金に算入できますが、課税額が法律や条例によって自動的に決まる賦課課税方式であるため、債務は事業年度末や賦課決定の時点で確定します。こうした税目は、申告を待たずに債務が明確になるため、事業税のような申告期限基準は採用されていません。
ジンテーゼ(制度の調整と考察)
事業税の債務確定時期が申告期限に置かれているのは、事業税が自ら税額を計算して申告する申告納税方式であり、税額が決算時点では確定していないからです。未確定額を損金に算入すると税額が過大・過小になる可能性があるため、申告書提出時点で債務を確定させることで公平性と簡便性を担保しています。一方、法人税や法人住民税の大部分は損金不算入であり、費用認識の議論に馴染まないため、債務確定時期の論点が生じません。均等割や固定資産税など損金算入できる地方税については、課税額が法律上確定する賦課課税方式であるため、事業年度末や賦課決定時に債務が確定します。税目ごとに異なる課税思想(応能課税か応益課税か)や課税方式(申告納税方式か賦課課税方式か)が、債務確定基準の違いを生み出しているのです。
要約
事業税は、法人が受ける行政サービスの対価として課される応益課税であり、損金算入できるため、税額を自ら計算して申告するまで債務が確定しません。このため申告書を提出した事業年度に損金算入する「申告期限基準」が採用されています。一方、法人税や法人住民税は損金不算入であるため、債務確定の時期を論じる必要がなく、均等割や固定資産税など他の地方税は賦課課税方式で額が自動的に確定するため、事業年度末や賦課決定時に債務が確定します。税目ごとの課税原理と課税方式の違いが、事業税だけ申告期限基準とされる理由です。

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