金銀比価64の示唆:2025年末、割高なのは金か銀か


現状整理:金銀価格と比価

  • 米国時間2025年12月22日時点で、金は1オンス4,426ドルで取引されており、12月24日時点の銀は1オンス72ドルとなっています。
  • この価格を用いると、金1オンスと銀1オンスの価値比(いわゆる金銀比価)は 約61〜64 となります。CBSニュースは同時期の比価を64:1とし、歴史的平均(60〜75)に近い水準だと指摘しています。また、2025年11月には比価が80〜83であり、銀が割安とされる領域にありました。

テーゼ:依然として銀は割安で金が割高?

  1. 歴史的な比価の観点
    金銀比価が80を上回ると銀が割安、50を下回ると銀が割高とみる「80/50ルール」があります。現在の比価はこの範囲の中間〜やや高め(61〜64)であり、まだ金の方が高いと解釈できます。
  2. 供給制約と需要構造
    銀は太陽光パネルや電気自動車など工業需要が大きい上、銀市場の供給は2025年まで5年連続の不足で、累計25,000トン超の在庫が減っています。同年の不足は117〜149百万オンスと見積もられ、供給不足が価格を押し上げています。
  3. 銀のパフォーマンス
    2025年の銀価格は年初から140%上昇し、比価が80以上だった4月から急落して64まで縮小しました。これは銀が金よりも強く上昇したことを示しており、比価はまだ過去の極端な低水準(20〜40)には遠く、銀は依然として「割安」の余地があるという見方ができます。

このテーゼでは、金の安全資産需要が行き過ぎて価格が上がり過ぎた一方、銀は工業需要による実需が強く、比価は依然として銀に割安感が残ると考えます。


アンチテーゼ:銀が割高で金が割安?

  1. 急騰後の過熱と変動性
    銀価格は1年で140%超上昇し、金の71%上昇を大きく上回りました。これにより比価は4月の104から現在の64まで急速に縮小。短期間の急激な収束は投機的な熱狂を示す可能性があり、銀が過熱領域に入りつつあるとも考えられます。銀市場は規模が小さく、流動性が低いため、買いが集中すると値上がりが急で、反対に売りが出ると価格が急落しやすいという特性も指摘されています。
  2. 金の安全資産需要の継続
    地政学的リスクやインフレ懸念が高まる中、中央銀行や投資家の金保有は増加しています。比価が縮小し過ぎれば、金の相対的魅力が高まり、資金が再び金に向かう可能性があります。CBSは比価64:1ではどちらの資産も極端に割安・割高とは言えず、投資家は極端な水準への到達を待つべきと述べています。
  3. 景気減速による工業需要減退リスク
    銀の価格は工業需要に大きく依存しており、景気の鈍化や技術改善により使用量が減ると価格が下落するリスクがあります。銀供給の大部分は副産物であるため、価格上昇が必ずしも供給増につながらず市場が脆弱になる可能性もあります。

このアンチテーゼでは、銀は短期的に過熱しており、工業需要の変動や投機的マネーの流出で下落する余地が大きい一方で、金は安全資産としての役割を引き続き果たし、相対的に割安とみる立場です。


ジンテーゼ:中間的な視点

  • 比価64:1は歴史的平均付近
    CBSによれば、現在の64:1は歴史的な「平均的な範囲」にあり、極端な割高・割安を示していません。テーゼ・アンチテーゼの両者が示すとおり、割高感と割安感の解釈は視点によって変わります。
  • 金と銀の役割の違い
    金は主に安全資産・通貨代替として、銀は投資と工業用途の二面性があり、価格決定要因が異なります。そのため、金銀比価は一つの指標に過ぎず、供給不足や中央銀行の動向、金利やインフレ見通し等の複合要因を考慮することが重要です。
  • 長期的なバランス
    長期投資では、金の安定性と銀の成長余地を組み合わせたバランスが有効とされます。比価が極端な水準に達した際にリバランスを検討し、適切なリスク管理を行うことが望ましいという点でテーゼとアンチテーゼは一致しています。

最終要約

  • 現状:2025年12月24日時点の金価格は約4,426ドル/オンス、銀価格は約72ドル/オンス。金銀比価は約64で歴史的平均付近。
  • テーゼ:比価がまだ60超であり銀は過小評価されている可能性、銀の供給不足や工業需要拡大が長期的な支援材料である。
  • アンチテーゼ:銀は短期に140%も急騰しており過熱感が強く、景気減速で工業需要が鈍化すれば下落リスクが高い。金は安全資産需要が続き相対的に割安との見方もある。
  • ジンテーゼ:比価64は極端なシグナルを発していない。金の安全資産性と銀の工業成長性という役割の違いを踏まえ、両方を組み合わせて保有し、比価が80超や50未満など極端に振れた際に調整するのが合理的と考えられる。

以上から、現在の金と銀はそれぞれ特有の価値を持ち、どちらが絶対的に割高・割安と断言するのは難しいものの、比価と市場環境を注視することが重要です。

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