世界の中央銀行における外貨準備構成(降順)

最新の外貨準備割合(2025年末時点)

2025年第4四半期に公表されたIMFの**外貨準備の通貨別構成(COFER)**データは、2025年9月以降に導入された新方法論(未報告部分を推計して100%とする)に基づくものであり、主要通貨と「その他の通貨」の割合を示す。これに2024年時点の詳細データ(日本円・ポンドなど)や金保有の情報を補えば、世界の中央銀行が保有する外貨準備の順位付けは次のとおりである。

順位通貨・資産2025年末の世界シェア*2024の具体的割合**補足
1米ドル(USD)約56.77%2024年は58.0%依然として最大シェアだが、2000年代初頭の約71%から低下。為替評価損益や地政学リスクへの備えが影響。
2金(Gold)約24〜25%(2025年末推定)18.3%2024年時点で金は国際準備の18.3%を占め、2025年には金価格高騰と購入増加により約4分の1まで上昇する可能性がある。金はドルとともに安全資産として保有される。
3ユーロ(EUR)約20.25%19.8%1999年導入以降シェアを拡大しており、ドル・金に次ぐ第3位。2025Q3には20.33%とやや増加。
4日本円(JPY)– (個別値は未公表)5.8%2025Q4では円やポンドなど主要通貨全体が14.9%を占める。日本円の比率は2024年比でやや減少したと推定される。
5英ポンド(GBP)4.7%2025Q4の「主要通貨」枠に含まれ、円と同様に小幅な低下が続く。
6中国人民元(RMB)1.95%約2.2%2016年に別途計上されて以降シェアを拡大したが、2025Q3に一時的に1.93%へ低下。中国経済の低迷や資本規制が影響。
7カナダドル(CAD)約2.6%(2025Q1)「その他の主要通貨」に含まれる。2020年代にゆるやかに上昇。
8オーストラリアドル(AUD)約2.0%(2025Q1)商品価格上昇とオーストラリア経済への信頼から近年増加。
9スイスフラン(CHF)1〜1.5%程度(2024年の「その他通貨」に含まれる)安全資産とみなされ、シェアは安定的。
10その他の通貨(未特定)6.13%2024年は9.6%のうち非伝統的通貨(カナダ・豪州ドル、シンガポールドル、韓国ウォンなど)が増加。IMFの新推計では未特定通貨が増加していることが示される。

* *2025Q4のシェアはIMF Data Brief(2026年3月27日発表)などによる。金についてはブルッキングス研究所が示す2025年末推計を使用。

** *2024年の詳細値はIMF年次報告書および米連邦準備理事会のデータから引用。

外貨準備割合の長期的変遷と弁証法的分析

1. テーゼ(支配的な基軸通貨)

  • 1945年以降の米ドル支配 – ブレトンウッズ体制以降、米ドルは世界貿易決済と外貨準備の中心となり、1990年代後半には世界外貨準備の7割超を占めた。ドル建て資産は安全性や流動性、米国債市場の規模から高い需要があり、中央銀行はドルを保有することで金融危機時の支払い能力を確保してきた。
  • ユーロ導入前の多通貨体制 – 1990年代半ばにはドイツマルクやフランなど複数の欧州通貨が存在し、ドル支配に対する有力な対抗軸が不在だった。

2. アンチテーゼ(対抗軸の登場と多様化)

  • ユーロの登場(1999年) – 欧州単一通貨導入により、各国の外貨準備に占める欧州通貨の比率が一体化し、ユーロは急速にシェアを伸ばした。2003〜2009年頃には25%前後まで上昇し、ドルの独占を揺るがす対抗軸となった。
  • 米ドル比率の漸減 – 米ドルシェアは2001年の71%から、2024年には約58%へ低下した。これはドル安や米国の高債務、金融制裁への懸念などが背景にある。
  • 非伝統的通貨の台頭 – カナダドル、豪州ドル、スイスフランなどの「その他通貨」は1995年に5%程度だったが、2024年には約9.6%、IMF新推計(2025Q4)ではその他通貨が14.9%+未特定通貨6.13%と合計で20%超に達している。これらは資源国通貨や高金利通貨としてリスク分散に利用されている。
  • 人民元の登場と伸び悩み – 2016年にCOFERに追加され、当初は1%程度だったが2022年には2.7%まで拡大した。しかし中国の資本規制や成長減速から2025Q3に1.93%へ低下。
  • 金の比率上昇と米国債離れ – ブルッキングス研究所の分析では、金価格の高騰により2025年末の中央銀行金保有は世界準備の約4分の1まで増える可能性がある。多くの新興国中央銀行が2023〜2025年に大量の金を購入している。2025年には金のシェアが米国債を初めて上回り、金24%・米国債23%という推定もある(視覚資本データが示す)。

3. シンテーシス(複合的な準備構造)

  • 多極化した外貨準備 – 現在の外貨準備は、米ドルが過半を占めつつも、金・ユーロ・日本円・英ポンド・人民元・カナダドル・豪州ドルなどが相応の役割を果たす多極構造になっている。米ドルのシェアは緩やかに低下しているが、世界の貿易・金融取引では依然として中心的存在であり、流動性や信用リスク管理の観点から他通貨に代替されにくい。
  • 弁証法的視点 – ドル支配(テーゼ)に対し、ユーロ・人民元・金などの対抗軸(アンチテーゼ)が出現したが、ドルは崩壊せず、その上にリスク分散の観点から複合的なポートフォリオが組み合わされた(シンテーシス)。中央銀行は地政学的リスクや米国の制裁への警戒から金や他通貨を増やしながら、依然として流動性の高いドル資産を核に据える戦略を採っている。

要約

  • 降順の構成 – 最新データによれば、世界の外貨準備は米ドルが約57%と依然として最大である。金が約24〜25%で第2位となり、2024年の18.3%から急増している。続いてユーロ(約20%)、日本円(2024年で5.8%)、英ポンド(4.7%)、人民元(約2%)、カナダドル・豪州ドル・スイスフランなど非伝統的通貨が続く。2025Q4には“その他主要通貨”が14.9%、未特定通貨が6.13%を占め、非伝統的通貨全体の存在感が増している。
  • 長期的な変遷 – 1990年代後半に70%超だったドル比率は20年以上かけて緩やかに低下し、ユーロ導入に伴う欧州通貨の台頭や非伝統的通貨の拡大が進んだ。人民元は一時上昇したが足下では停滞している。非伝統的通貨と金のシェアは上昇し、特に金は2025年に米国債を上回る可能性がある。
  • 弁証法的視点による分析 – 米ドル支配というテーゼに対し、ユーロ・人民元・金などのアンチテーゼが台頭した結果、中央銀行の準備はより多様化し、複数の通貨・資産が併存するシンテーシスに至っている。ドルは依然として核となるが、地政学リスクやデジタル通貨の登場などから、多通貨体制への移行が続くとみられる。

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