金急増・米国債離れが示す外貨準備の新たな潮流

世界の外貨準備を巡る議論は、米ドルの支配とその変化を中心に展開しました。2025年末のデータでは、世界の外貨準備総額の約56〜57%が米ドル建て資産で占められています。これに対し、金の比率が急上昇して24〜25%を占め、ユーロは約20%で続きます。その他の通貨として円・ポンド・人民元・カナダドル・豪州ドルなどが小さな割合を持ち、未特定通貨も増えています。

米ドル建て資産の内訳を詳しく見ると、外貨準備における米国債は約3.5〜3.9兆ドルで、米ドル資産全体の4〜5割に相当します。残る3.6〜4.0兆ドルは米政府機関債や住宅ローン担保証券、企業債、銀行預金、米ドル紙幣など多様なドル建て資産です。外国公的機関は米ドル紙幣だけでも1兆ドル以上を保有しており、現金も無視できない規模となっています。

長期的に見ると、1990年代後半には7割超を占めていた米ドルの比率は、ユーロ導入や新興国の台頭、非伝統的通貨への分散などで緩やかに低下しています。特にユーロは登場後にシェアを大きく伸ばし、カナダドルや豪州ドルなど非伝統的通貨も存在感を高めました。人民元は2016年から2%程度まで増えましたが、中国の資本規制や景気減速で最近は伸び悩んでいます。

この流れを弁証法的に整理すると、米ドル支配というテーゼに対して、ユーロや人民元、さらに近年急増した金保有といったアンチテーゼが登場し、それらが補完し合う多極的な準備構造(シンテーシス)へと移行しているといえます。ドルは依然として基軸通貨としての役割を保ちつつも、各国は地政学リスクや制裁への備えとして金や他通貨を積み増し、外貨準備のポートフォリオを多様化させています。

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