サプライサイド経済学とモダンサプライサイドエコノミクスは、両者とも供給側に着目する経済政策ですが、伝統的な考え方と現代的な発展にいくつかの相違点があります。
以下、その相違点を整理します。
① 理論的背景と重視する政策
項目 | サプライサイド経済学 | モダンサプライサイドエコノミクス |
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理論的背景 | 1970〜80年代、レーガン政権時代に主流となった。ラッファーカーブに基づき減税による供給刺激を主張。 | 従来の供給刺激に加え、イノベーション、人材育成、規制改革、インフラ投資を強調する。 |
政策の焦点 | 減税(法人税・所得税)、規制緩和、民営化。 | 減税に加え、技術革新、教育投資、インフラ整備、持続可能性の重視。 |
② 政府の役割への考え方
項目 | サプライサイド経済学 | モダンサプライサイドエコノミクス |
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政府の役割 | 政府の経済介入を最小限に抑え、市場原理を重視する。 | 市場原理を尊重しつつも、政府は積極的に供給能力の強化・社会基盤整備を担うべきと考える。 |
具体例 | レーガン減税、規制撤廃による民間企業活性化。 | バイデン政権のインフレ削減法やグリーン投資、先端技術投資、労働者への再教育投資。 |
③ 焦点の変化(所得分配と格差)
項目 | サプライサイド経済学 | モダンサプライサイドエコノミクス |
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所得分配への配慮 | 成長が全体的に豊かさを増す(トリクルダウン効果)という考えで、直接的な再分配は軽視。 | 成長と同時に格差の是正を政策目的に含め、教育・労働市場を通じた広範な社会的包摂を図る。 |
格差対応 | 市場の自然な成長が格差を緩和すると信じる。 | 政府主導で格差是正を図るため、人材育成・社会インフラ・技術支援を重視。 |
④ 環境と技術革新への姿勢
項目 | サプライサイド経済学 | モダンサプライサイドエコノミクス |
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環境配慮 | 経済成長が優先され、環境問題への関心は比較的低い。 | 環境持続性を成長の重要要素として重視し、グリーン技術投資を積極的に推進。 |
技術革新 | 市場主導の技術革新を信頼し、政府の役割は限定的。 | 技術革新への政府主導の大規模投資を行い、産官学連携で新技術の普及を推進。 |
【まとめ】
- サプライサイド経済学は市場の自律性を重視し、減税と規制緩和を主軸に置く「古典的」な政策アプローチである。
- モダンサプライサイドエコノミクスは、伝統的な供給側刺激策に加え、政府がより積極的に技術・教育・インフラ・環境分野への投資を行い、包摂的成長を目指す現代的な発展形態である。
これらが両者の主要な相違点です。
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