外貨準備高とその構成の概要
日本の外貨準備高(公式準備資産)は世界でも中国に次ぐ規模であり、2025年3月末時点で約1兆2,725億ドルに達しています。この外貨準備には、外国通貨建て資産(外貨預置資産)、国際通貨基金(IMF)への準備ポジション、特別引出権(SDR)、金(ゴールド)などが含まれます。中でも中核をなすのが**外国為替資産(外貨建て証券・預金など)**で、2025年3月末時点で約1兆1,033億ドルを占めています。
- 外国為替資産(外貨証券+外貨預金):約1兆1,033億ドル
- IMFリザーブポジション:約102億ドル
- SDR(特別引出権):約585億ドル
- 金(ゴールド):約847億ドル
- その他外貨資産:約156億ドル
上記のように、日本の外貨準備高の大部分は外貨建ての有価証券および預金で構成されており、IMF関連資産や金は全体の一部に留まります。以下では、この外国為替資産に含まれる通貨建て内訳、とりわけ米ドル建て資産の割合について詳しく見ていきます。
外貨準備資産の通貨別構成(SDRバスケット通貨 vs その他)
日本の財務省は外貨準備資産の通貨構成を大別して公表しており、IMFの特別引出権(SDR)の構成通貨に該当する外貨建資産と、それ以外の通貨建資産に区分しています。SDR構成通貨とは、米ドル、ユーロ、英国ポンド、中国人民元(人民币)、日本円の5通貨です(もっとも、日本の場合は自国通貨である円建て資産は外貨準備には含みません)。
直近の公表値によれば、SDRバスケット構成通貨建ての資産が日本の外貨準備のほぼ全てを占めており、その額は約1兆2,542億ドルに上ります。一方、**それ以外の通貨建て資産は約182億95百万ドル(全体のわずか1.4%程度)**に過ぎません。つまり、日本の外貨準備は主要国通貨(SDR構成通貨)でほぼ占められており、マイナー通貨建て資産へのエクスポージャーはごく小さいことが分かります。
この数字(SDR通貨:98.6%、その他通貨:1.4%)から、日本の外貨準備は極めて偏った通貨構成になっていることが読み取れます。では、その中で米ドル建て資産はどの程度のシェアを占めているのでしょうか。
米ドル建て資産の割合
結論から言えば、日本の外貨準備に占める米ドル建て資産の割合は極めて高く、最新データではおおよそ8~9割程度に達すると考えられます。 財務省は公的統計上、米ドル建て資産の正確な比率を個別には公表していませんが、いくつかの信頼できるデータや推計からその水準を把握できます。
まず、日本政府(財務省)が保有する外貨証券の大部分は米ドル建ての米国債券です。米国財務省の統計によれば、日本は2025年3月時点で約1兆1,308億ドル相当の米国債を保有しており、これは同時点の日本の外貨準備高にほぼ匹敵する規模です。実際、2025年3月末の日本の外国為替資産(約1兆1,033億ドル)と比較すると、米国債保有額だけで外国為替資産全体の約90%近くを占める計算になります。米国債以外にも米ドル建ての預金などが含まれることを考慮すれば、米ドル建て資産全体では外国為替資産の約9割前後に達していると推定できます。
この推計は国際的な分析とも整合的です。国際決済銀行(BIS)の研究では、日本やユーロ圏の外貨準備は**「約90%程度が米ドル建て」で占められていると指摘されています。日本は伝統的に為替介入をドル/円レートで実施してきた経緯もあり、外貨準備の運用においても米ドル資産へ集中投資する傾向があります。財務省自身も公式見解として「代替通貨が事実上限られる中、我が国の外貨準備は米ドル資産が中心である」旨を示唆しており※、実際にも米ドルの世界的基軸通貨としての地位に支えられて、我が国の外貨準備はその大半を米ドル建資産で保有している**のが実情です。
※ (参考:財務省や日銀の発表資料では直接的な比率公表はありませんが、2022年以降の為替介入でも米国債売却によるドル資金の捻出が行われたことが報じられており、日本の当局が事実上*「ドル一極集中」の準備構成**を採っていることが示唆されています。)*
他通貨建て資産の比率
米ドル以外の主要通貨については、ごく一部が割り当てられているに留まります。仮に米ドルが外貨準備(外国為替資産)の8~9割を占めているとすれば、残りの1~2割弱がユーロ、英ポンド、人民元などで構成されている計算です。公開情報から正確な内訳は不明ですが、一般にユーロ建て資産がおよそ数%台後半から一桁台前半、ポンドや人民元も数%以下と推測されます。特に日本の場合、安全資産として流動性・信用度の高い米国債(ドル建て)を優先的に保有しており、欧州通貨や新興国通貨建て資産へのエクスポージャーは限定的となっています。
例を挙げると、IMFの集計する世界全体の外貨準備構成(COFER)では、2024年末時点で世界平均の米ドル比率は57.8%に低下していますが、日本のそれは上述の通り依然として8~9割という世界平均を大きく上回る水準です。このような通貨構成は、世界第3位の経済規模を有しながら自国通貨(円)の国際通貨としての役割が限定的である日本の特徴を表しています。日本政府・日銀は、現状では米ドルの流動性と信用力に代わり得る資産が乏しいことから、外貨準備の運用も**「ドル偏重」**を維持していると考えられます。
要約
日本の外貨準備に占める米ドル建て資産の割合は、最新のデータに基づけばおよそ85~90%前後に達していると考えられます。財務省の公表資料では、外貨準備資産の98%以上がSDR構成通貨建て(米ドル、ユーロ、ポンド、人民元等)で占められており、その他の通貨は約1%強に留まります。中でも米ドル建て資産が圧倒的な比重を占めており、約9割近くを占有するとの推計が国際機関の分析でも示唆されています。要するに、日本の巨額の外貨準備はその大半を米ドル建資産で保有しているのが現状であり、残りの数割未満をユーロやポンド、中国人民元など他通貨で分散保有している状況です。外貨準備の通貨構成は直近期でも大きな変化はなく、引き続き米ドル中心のポートフォリオが維持されています。これは、米ドルの国際的地位の高さや米国債市場の厚みを反映したものと言えるでしょう。
Sources: 財務省「外貨準備等の状況」各種統計、国際決済銀行(BIS)ワーキングペーパー、米国財務省 TIC レポート等、ロイター報道など。

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