ドル基軸通貨体制の動揺と金準備復権へ

足元では、歴史的に形成されてきた「米ドル中心の巨大な外貨準備構造」が再び揺さぶられ始めている。中国、インド、ロシアなどの中央銀行が外貨準備に占める金の購入を積極化させる一方で、米国債を徐々に売却し、準備資産の構成をドルから分散させる動きを加速させているのである。

その背景には、米国の対外債務の持続的拡大がある。巨額の債務残高に伴う利払い負担はますます増加しており、財政赤字が長期的に解消される見込みがないことから、ドル安が進行する懸念が高まっている。こうしたドルの長期的な価値低下リスクは、米ドル資産を大量に保有する各国にとって深刻なリスクである。

また、政治的・経済的な側面からも、BRICs諸国はドル基軸通貨体制への依存を減らす方向で動いている。米国による経済制裁リスクの高まりや、地政学的緊張の激化によって、米ドル資産を保有するリスクが顕在化していることもその背景にある。2022年のロシアの外貨資産凍結事件を受けて、各国は「他山の石」とし、ドル資産から金やその他の通貨へと準備資産を移行させる傾向を強めているのである。

よって、「米ドル中心の準備体制」に対して、「米国債務の拡大、ドル安懸念、制裁リスクの増大という米ドル資産の信用低下」が生じている。その結果、外貨準備資産の多様化、特に金準備の再評価と増加という新たな潮流が生まれつつあるのである。こうして、歴史的に見て金比率を押し下げてきた米ドル偏重構造が転換点を迎えつつあると考えられるのである。

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