サイクルは支配しない:暴落を決めるのは政治ではなく構造

大統領任期サイクルの概観

米国株式の投資家の間では、大統領任期サイクルという季節性がよく知られています。新任大統領の1年目は政策移行や引き締めでやや弱く、**2年目(中間選挙年)**は政策の痛みや政治的不確実性で最も不安定とされます。3年目は景気刺激策が功を奏し平均リターンが最も高く、4年目は選挙年として堅調というものです。例えば、1940年以降のS&P500の平均リターンは2年目が約4.2%に過ぎず、全期間平均の約9%を下回ると指摘されています。

テーゼ:サイクル論が示す2年目の弱さ

サイクル論者は、2年目は政策の“痛み”と中間選挙前の不透明さが株価の重しになると考えます。Stock Trader’s Almanacの創設者ヤール・ハーシュが提唱した理論では、4年サイクルの前半が弱く後半が強いとされ、2年目の平均リターンは低く、4年目はやや持ち直すと言われます。過去40年間で見ると7回の年間マイナスのうち4回が2年目に集中し、平均リターンは約+4.5%と低水準にとどまります。

アンチテーゼ:2年目の大暴落・高騰は周期とは別要因

しかし現実の市場はサイクル通りに動くわけではありません。大暴落や大幅反発は政治周期ではなく、景気・金利・バブルの崩壊などで決まることが多いからです。

  • 1962年(ケネディ景気後退):2年目の1〜9月にS&P500は約20%下落し、9月までに“熊の目録”と呼ばれる暴落を経験しましたが、10〜12月には15%反発しました。キューバ危機や景気後退が原因であり、大統領サイクルが引き起こしたものではありません。
  • 1974年(ニクソン辞任・オイルショック):1973年末から1974年9月までにS&P500は50%近く下落し、第3四半期までに30%超下落した後に第4四半期に10%反発したものの年間では25%超のマイナスとなりました。これは石油危機、インフレ、金融引締め、ウォーターゲートによる政治不信が主因です。
  • 2002年(ジョージ・W・ブッシュ政権2年目):S&P500が21.97%下落し、過去40年で最悪の2年目となりました。要因はドットコム・バブル崩壊の余波と企業不正(エンロン、ワールドコム)およびイラク戦争前の地政学的緊張であり、政治周期とは無関係です。

対照的に、2年目が大幅上昇した例も複数あります。1954年・1958年は年間を通じた強いラリーにより、過去屈指の好パフォーマンスを記録しました。1982年は高インフレ後の金融緩和を背景に強烈なブル相場となり、10〜12月には大幅な反騰が見られました。さらに、クリントン第二期の1998年はテクノロジーブームの追い風でS&P500が28.3%上昇しました。ただしその途中にはロシア債務危機とLTCMショックで一時19%下落する荒い値動きもあり、結果的には強気相場が勝った年です。

これらの例から分かるように、大暴落も高騰も経済状況や金融政策・テクノロジー革新といった構造要因によって引き起こされ、単なる大統領の任期には左右されません。

ジンテーゼ:2年目の季節性は存在するが、決定因ではない

総じて、大統領サイクルは長期平均としての傾向に過ぎず、絶対的な投資指針ではないことが分かります。2年目は平均的にリターンが低く、政治的不確実性と政策調整でボラティリティが高まりやすいものの、不況・高インフレ・バブル崩壊といった外部要因が絡むと暴落が起こり、逆に金融緩和や新技術ブームがあれば大幅上昇もあり得ます。

重要なのは、投資判断を政治カレンダーだけに頼らず、景気循環・企業収益・金融政策・バリュエーションを総合的に分析することです。サイクルは投資家心理の一助にはなるものの、極端な相場変動は大統領任期とは無関係に生じるため、景気指標やリスク管理こそが不可欠です。

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