- ホルムズ海峡危機の想定
ホルムズ海峡はサウジアラビアやイラクなどの主要産油国にとって唯一の出口で、世界の原油・液化天然ガスの約20%が通過します。2026年にイラン攻撃によって海峡が危険な状態となり、湾岸諸国は140百万バレル規模の出荷を停止し、エネルギー施設の被害で生産再開に時間を要すると報じられました。このため市場では「世界供給の2割が失われる」との極端なシナリオが浮上し、原油価格が急騰しました。 - ロシア産原油禁輸の予測と現実
ロシアは侵攻前に世界原油の約11%を生産していました。国際エネルギー機関(IEA)は経済制裁によりロシアの生産が最大300万バレル/日(世界供給の約3%)減少すると予測していました。しかし実際には、西側への輸出が1.9百万バレル/日減少した一方、インドや中国などへの輸出が増えたことで損失の大半が相殺され、2022年8月時点の輸出減少は約39万バレル/日にとどまりました。ロシアの生産量も一時的に12%落ち込みましたが、その後回復し、夏には侵攻前より約4%少ない水準まで戻っています。 - 市場の適応と供給減の抑制
IEAが懸念した300万バレル/日の供給減は実現せず、市場は急速に適応しました。ロシア原油は欧米禁輸の代わりにアジア向けの割引販売に切り替わり、遊休タンカーを使って輸送が継続されました。米国やブラジルなど非OPEC諸国は増産し、他のOPEC+産油国も生産調整を行いました。さらにIEA加盟国が戦略備蓄を大量に放出したことで需給逼迫が緩和され、実際の供給減少は0.4〜0.5百万バレル/日と推定されています。制裁の主な影響は価格割引や輸送コスト増であり、供給量自体はほぼ維持されました。 - 教訓と今後のリスク
ホルムズ海峡閉鎖とロシア禁輸を比較すると、危機の予測が現実化しないことがある一方、市場の自己調整能力には限界があることが見えてきます。代替輸送ルートや備蓄放出が機能しない場合、ホルムズ海峡の長期封鎖によって本当に世界供給の2割近いショックが起きる可能性は排除できません。また、ロシア産原油が価格割引で環境規制の緩い国に流れることで、気候対策が遅れる副作用も指摘されています。
そのため、報告は危機→市場適応→安定化というサイクルを強調しつつ、戦略的備蓄の確保や再生可能エネルギーへの転換など長期的なリスク軽減策の重要性を示しています。
ホルムズ危機とロシア禁輸 ― 世界原油供給ショックの予測と現実
政治経済
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