ドル建て資産と金の対立と調和—究極のリスク分散

正(テーゼ):金が暴落すればドル建て資産が高騰し、両者の保有が分散になる

「錬金術が可能になり金が暴落する」という仮定のもとでは、各国の中央銀行は通貨の裏付けとしてドルや米国債に資金を移し替えるでしょう。実際、現在でも中央銀行の保有資産は金とドル建て資産の組み合わせであり、2026年初頭には保有金の市場価値が約4兆ドルと米国債の約3.9兆ドルをやや上回ったものの、ドル建て資産は依然として21%前後を占める主要な準備資産です。この仮定が現実になれば、金からドルへ資金が急速に移動し、ドル高が進行し、その結果として米国株式市場やS&P 500指数などドル建て資産の価格が上昇するという論理は理解できます。従って、金価格と米国株式が逆相関するとみなし、金ETFとS&P 500指数に投資することでリスク分散が可能だとする見方がテーゼです。

反(アンチテーゼ):錬金術は非現実的であり、ドル高=米国株高とは限らない

しかしこのテーゼにはいくつかの反論が考えられます。第一に、錬金術による金の無限供給は物理的にあり得ず、実際には供給増加が限定的だからこそ金が安全資産として機能しています。現実には中央銀行はドル建て資産の集中を懸念しており、2022〜2024年には年間1000トン超の金を買い入れ、金保有比率を5%から24%へと高めています。これはドルや米国債の信認低下への備えであり、金が暴落すれば単に元の資産へ戻るとは限りません。

第二に、ドル高が即座にS&P 500の上昇を意味するわけではありません。米国企業の多くは海外収益が大きく、ドル高は輸出競争力を削ぎ利益を圧迫することがあります。また過去には米国株が調整局面に入ると、金が逆に上昇する例が多々ありました。SSGAの分析によれば、大きな株価下落時(15%以上の調整)における平均リターンは、金が約7.18%上昇した一方でS&P 500は約−23.48%下落しており、両資産の動きは必ずしも同調しません。これは単純な代替関係ではなく、市場環境によって相関が変化することを示しています。

合(ジンテーゼ):安全資産と成長資産の併存がリスク管理の鍵

弁証法的な統合としては、金とドル建て資産は対立するのではなく補完し合う存在だと位置付けることができます。中央銀行は米国債を大きく減らしているわけではなく、依然としてドル建て資産を大量に保有しつつ、地政学リスクや制裁リスクに備えて金を増やしています。このように世界の準備資産は構成の多様化が進んでおり、金や米国株式など複数の資産を持つことでバランスを取っています。

個人投資家にとっても同様で、金ETFはインフレや金融危機時に価値を保全する役割を果たし、S&P 500など米国株は長期的な経済成長への投資機会を提供します。金は株価急落時のヘッジとして平均的にプラスのリターンを示しており、ドル建て資産の一角である米国株式は安定した成長を享受できる可能性が高い。極端な金暴落シナリオが起きても、中央銀行がドル資産への依存を強めることで米国市場が支えられるとの見方がある一方、現実には金の希少性が保たれている限り、両資産を組み合わせることが合理的なリスク分散戦略となります。

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