「利回り10%」が満室想定の表面利回りなら、それだけでアパートを高配当ETFより有利とは判断できません。手間を抑えて分散するならETF、物件を割安に取得し、経営で収益を改善できるなら不動産に優位性があります。 弁証法的に考えると、両者の違いは「現物か証券か」以上に、自分で事業を経営するか、他者の事業収益に投資するかにあります。
まず、比較する「10%」の意味をそろえる必要があります。アパートには、表面利回り、経費控除後の利回り、借入返済後の自己資金利回りがあります。ETFの分配金利回りも、値上がり・値下がりを含む総合収益率とは異なります。
例えば、次のアパートを現金で購入するとします。以下は比較のための仮定で、相場の推計ではありません。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 物件価格 | 3,000万円 |
| 満室想定の年間家賃 | 300万円 |
| 空室・滞納による減収 | ▲30万円 |
| 管理費・固定資産税・保険・通常修繕など | ▲60万円 |
| 将来の大規模修繕に備える年間留保 | ▲30万円 |
| 留保後の年間手残り | 180万円 |
| 購入諸費用を含む総投資額 | 3,200万円 |
| 総投資額に対する手残り利回り | 約5.6% |
この5.6%も、所得課税前であり、売却時の損益を含みません。修繕用の留保は、ここでは資金計画上の控除です。
反対に、ETFから年間10%の分配金を受け取っても、価格が15%下がれば、その年の総合収益は概算でマイナス5%です。家賃も分配金も、「受け取れる現金」と「資産全体が増えること」を分けて考える必要があります。
正――不動産には、所有と経営を結び付ける強みがある。
アパートを所有すれば、募集条件、管理会社、修繕、設備更新などを自分で判断できます。割安な物件を見つけ、空室を埋め、費用を適正化できれば、市場全体の成長を待たずに収益を改善できます。
また、融資を使って自己資金より大きな資産を取得できる点も強みです。ただし、これは収益と損失の双方を拡大します。元本返済は会計上の費用ではありませんが、現金は減るため、利益が出ているのに資金繰りが苦しい状態も起こります。
したがって、不動産の高収益には、資本の報酬だけでなく、借入リスクを負う報酬と、経営に時間を使う報酬も含まれます。
反――その経営負担を引き受けなくても、ETFで企業収益に参加できる。
代表的なETFにも、収入の源泉が異なる商品があります。
| ETF | 主な仕組み | 判断のポイント |
|---|---|---|
| SCHD | 米国の配当株に分散投資 | 企業の配当と成長を重視 |
| JEPI | 米国株とオプションを利用して収入を得る | 分配収入と値上がり余地の兼ね合い |
| JEPQ | 成長株を中心に、株式とオプションから収入を得る | 成長株の価格変動も負う |
| QYLD | Nasdaq100の株式保有と指数のコール売却 | 上昇局面の利益が制約される |
SCHDは通常の配当株ETFですが、JEPI・JEPQ・QYLDはオプションを利用する商品です。高い分配金のすべてが、投資先企業の配当から生まれるわけではありません。 各社の公式資料でも、この運用の違いを確認できます。Schwab Asset Management
具体例として、JEPQの2026年8月31日時点の過去12か月ローリング分配利回りは11.21%、年間経費率は0.35%です。ただし、将来の分配率を保証する数字ではなく、株価変動や、運用に利用するELNの信用・流動性リスクもあります。am.jpmorgan.com
ETFには、少額から分散でき、一部だけ売却でき、入居者対応や建物修繕を必要としない利点があります。一方、米国ETFを円で評価すれば為替変動の影響を受け、分配金も変動します。コール売却による収入は下落を一定程度和らげても、損失をなくしません。
ここで不動産側の主張も反転します。毎日価格が表示されないことは、資産価値が安定している証拠ではありません。 空室や建物劣化、地域の需要減少は、売却価格に表れます。
合――選ぶべきなのは、表示利回りが高い方ではなく、自分が優位性を持てる方である。
両者は、次の基準で比較するのが適切です。
| 判断基準 | 不動産が向きやすい条件 | ETFが向きやすい条件 |
|---|---|---|
| 自分の強み | 地域・建物・賃貸経営を評価できる | 分散投資を継続できる |
| 時間 | 管理や意思決定に時間を使える | 運用の手間を抑えたい |
| 資金 | 修繕・空室に備える余裕がある | 少額・段階的に投資したい |
| 換金 | 長期間売れなくても困らない | 一部売却できることを重視 |
| 収益改善 | 割安購入や経営改善の具体策がある | 個別事業を経営せず収益に参加したい |
本当に、購入諸費用・空室・修繕・税負担を考慮しても高い収益が残り、売却価値も保てる物件なら、不動産は有力です。 しかし、その条件を確認せず「表面10%」だけで買うなら、ETFより有利という根拠はありません。
また、資産形成が目的で、毎年の現金収入を必要としないなら、高配当ETFだけに限定する必要もありません。分配金の多さより、再投資後の総合収益を評価すべきです。
静かな環境で好奇心を深掘りする時間まで投資のコストに含めるなら、ETFを基本とし、不動産は「経費と修繕を引いても十分に有利だと説明できる物件」に絞る考え方が整合的です。不動産の超過収益を得るために使う時間が、その収益に見合うか。そこが最終的な分岐点です。


コメント