金ETFは金価格をどう変えたか――投資需要の拡大と資金流出の両面

コモディティ

金ETFの登場は、金を保有する障壁を下げ、価格を押し上げる投資需要を広げた。ただし、登場後の値上がり全体をETFの効果とみなすことはできない。 弁証法的には、「需要の拡大」と「資金流出の容易化」を統合して捉える必要があります。

正:金ETFは、金価格を押し上げる構造変化だった

前述のとおり、金価格は1973年の年間平均約97ドルから、金ETF登場前年の2002年には約310ドルへ上昇していました。2003年3月ごろ、世界初の金ETFが登場した時点では約350ドルでした。www.moneymetals.com

ETF以前にも金への投資は可能でしたが、現物購入には保管・盗難対策・売買価格差などの負担があり、先物には証拠金や限月の管理が伴います。現物裏付け型の金ETFは、証券口座で金に投資する道を開き、購入・保有の手間や費用を下げました。世界金協会も、ETFの登場が金投資を容易かつ低コストにしたと整理しています。Goldhub

ここで起きたのは、「金を持ちたい」という潜在的な需要を、実際の購入へ結び付ける変化です。株式や債券を中心に運用していた投資家も、資産の一部を金へ配分しやすくなりました。

ただし、ETFの売買が一件発生するたびに現物が買われるわけではありません。既存の受益証券が投資家間で移転する取引と、需要増加による新規設定を区別する必要があります。現物裏付け型ETFの新規設定が増えれば、裏付けとなる金の保有が増え、現物市場の需給に作用します。

実際、世界の金ETFは2017年末時点で2,368トンの金を保有していました。ETFが現物市場と結び付いた大きな投資経路になったことは確かです。Goldhub

反:ETF登場後の値上がりは、ETFだけでは説明できない

「ETF登場後に金価格が上がった」という時系列だけでは、因果関係や寄与額は確定しません。

第一に、金の上昇はETF登場以前に始まっていました。1973年から2002年までの約3.2倍の上昇は、ETFがなくても金価格が変動・上昇することを示します。ただし、約30年間の名目価格比較なので、インフレの影響も含みます。

第二に、ETFが普及した時期には、実質金利の低下など、金を保有する誘因を強める変化が重なりました。シカゴ連銀によれば、2001〜2012年には長期実質金利が約4ポイント低下し、同時に実質金価格が5倍超へ上昇しました。これはETFの寄与を否定するものではありませんが、価格上昇をETFだけに帰属させる説明の限界を示します。Federal Reserve Bank of Chicago

第三に、ETFの便利さは売却にも働きます。2013年は4月末までに金ETFから約350トンが流出し、世界金協会は同時期の下落を先物市場とETF市場の動きに結び付けています。購入しやすくなった金は、手放しやすくもなったのです。World Gold Council

しかも、金価格の上昇を見てETFへ資金が流入することもあります。そのため、ETF流入と価格上昇の関係には、流入が価格を押し上げる方向と、値上がりが流入を呼ぶ方向の両方があります。

合:金ETFは、投資需要を広げると同時に、金融環境の変化を価格へ伝える経路になった

以上を統合すると、金ETFの影響は二つに分けられます。

観点金価格への影響
長期の構造変化保有の障壁を下げ、金へ資産配分する投資家層を拡大した
短期の資金移動投資家の買い・売りを現物需給へ伝え、上昇にも下落にも作用する

他の条件が同じなら、保有コストの低下と投資家層の拡大は、ETFが存在しない場合より金価格を高くする方向に働くと考えられます。これは経済的な推論であり、「ETFによって何ドル上がったか」は、登場前後の価格比較だけでは算定できません。

金ETFが変えたのは、金そのものの性質よりも、世界の金融資産から金へ資金を振り向ける容易さです。通貨不安や低実質金利が金への需要を生むとき、その需要を大規模な購入へつなぐ。一方、金への魅力が薄れれば、資金流出も促す。この両面性こそが、金ETF登場の価格への影響です。

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