法人が個人に支払う地代は源泉徴収が必要?支払調書との違いを解説

税務会計

法人が個人から土地を借り、地代を支払う場合、所得税を天引きする必要があるのでしょうか。

結論は、貸主が居住者個人であれば、通常の地代について源泉徴収は不要です。ただし、源泉徴収が不要でも、支払調書の提出が必要になる場合があります。

ここでは、居住者個人への地代を中心に、非居住者への支払いとの違いや、実務上の注意点を整理します。

1.居住者個人への地代は源泉徴収不要

地代とは、土地を借りる対価として支払う賃料です。法人が個人所有の土地を事業用地として借りる場合などが該当します。

居住者個人に支払う通常の地代や家賃は、所得税法第204条に列挙された源泉徴収対象の報酬・料金等には含まれません。そのため、法人は所得税を天引きせず、契約に定めた賃料を全額支払います。

例えば、月額地代が10万円であれば、貸主への支払額も10万円です。原稿料や税理士報酬などに用いられる10.21%の税率を、地代に当てはめることはありません。

貸主個人は、受け取った地代を原則として不動産所得の収入に計上し、必要経費や他の所得などを踏まえて、確定申告の要否を判断します。

2.非居住者や外国法人への支払いは取扱いが異なる

貸主が非居住者や外国法人である場合、日本国内の不動産の賃借料については、原則として20.42%の源泉徴収が必要です。

例えば、法人が非居住者に地代10万円を国内で支払う場合、源泉徴収税額は2万420円、貸主への支払額は7万9,580円となります。国内払いの場合、徴収した税額は原則として支払月の翌月10日までに納付します。

ここで注意したいのは、居住者・非居住者の区分は、単に日本人か外国人かで決まるものではないという点です。日本人の貸主であっても、海外赴任などにより非居住者に該当する場合があります。

契約時だけでなく、契約期間中の貸主の状況変更にも注意が必要です。

3.法人が借りる社宅には、居住用の免除を適用できない

非居住者等への不動産賃料には、源泉徴収が不要となる例外があります。それは、個人が自己または親族の居住用として借り、その個人が賃料を支払う場合です。

この例外は、借主が法人である場合には適用されません。したがって、法人が非居住者から住宅を借り、役員や従業員の社宅として使用する場合も、原則として源泉徴収が必要です。

「住宅として使っているから不要」と判断せず、誰が借りて支払っているかまで確認する必要があります。

4.源泉徴収が不要でも、支払調書は必要になる

法人が居住者個人に地代を支払う場合、源泉徴収は不要ですが、同じ個人へのその年中の支払金額の合計が15万円を超える場合は、「不動産の使用料等の支払調書」の提出が必要です。

例えば、月額地代が2万円で、1年間の支払額が24万円であれば、提出対象となります。一方、年間支払額がちょうど15万円の場合は、金額基準だけで見れば対象外です。

この判定は、法人の事業年度ではなく、1月から12月までの暦年で行います。源泉徴収の要否と支払調書の提出義務は、別々に判断することが大切です。

5.法人への支払いも、権利金・更新料等は提出対象になり得る

貸主が内国法人である場合、通常の地代や家賃について源泉徴収は不要です。また、法人に対して地代や家賃だけを支払っている場合は、「不動産の使用料等の支払調書」の提出も不要です。

ただし、「法人への支払いなら、支払調書は一切不要」というわけではありません。

法人に支払う権利金、礼金、更新料などは、支払調書の対象になり得ます。同一の法人に対する対象金額が、その年中に合計15万円を超える場合には、提出が必要です。

6.非居住者への賃料に「納期の特例」は使えない

給与の源泉所得税などについては、一定の要件を満たし、承認を受けることで、半年分をまとめて納付する「納期の特例」があります。

しかし、この特例の対象は、給与・退職金や税理士・弁護士などの一定の報酬に限定されています。非居住者等への不動産賃料から徴収した源泉所得税は、対象外です。

法人が給与について納期の特例を利用していても、非居住者への地代に係る税額を半年分まとめて納付することはできません。

7.誤って源泉徴収した場合の対応

居住者個人への通常の地代から、誤って所得税を天引きした場合は、まず貸主への不足額の支払いを調整します。

すでに税務署へ納付している場合には、原則として、納付した法人側で源泉所得税の誤納額の還付請求などを検討します。

**本来源泉徴収の対象ではない税額について、「貸主が確定申告すれば還付される」と一律に処理するのは適切ではありません。**源泉徴収義務の有無と納付状況を確認し、誤納に対応する手続きを取る必要があります。

8.実務で確認するポイント

地代を支払う法人は、次の順序で確認すると整理しやすくなります。

  1. 貸主が居住者個人、内国法人、非居住者、外国法人のいずれかを確認する。
  2. 支払内容が通常の賃料か、権利金・更新料等かを確認する。
  3. 源泉徴収の要否を判断する。
  4. 源泉徴収とは別に、支払調書の提出対象と年間金額を確認する。

居住者個人への地代では、**「源泉徴収は不要だが、年間15万円超なら支払調書が必要」**という組み合わせが基本です。貸主の属性と支払内容を確認し、税金の天引きと情報提出を分けて判断することが、正確な実務につながります。

参考資料:国税庁タックスアンサーNo.2880、No.7441、No.2505、No.2506

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