法人税の電子申告における残高証明書・剰余金処分・個別注記表

税務会計

1.残高証明書は原則として添付不要

銀行や証券会社が発行する残高証明書は、通常の法人税確定申告では添付する必要がありません。

残高証明書は、貸借対照表に計上した次の残高を裏付ける社内証拠資料です。

  • 普通預金・定期預金
  • 借入金
  • 証券口座の預り金
  • 株式・投資信託などの有価証券
  • 外貨預金・外貨建有価証券

したがって、基本的な処理は次のとおりです。

書類電子申告会社側での保存
貸借対照表・損益計算書必要必要
株主資本等変動計算書必要必要
勘定科目内訳明細書必要必要
銀行の残高証明書原則不要取得した場合は保存
証券会社の残高報告書原則不要保存

残高証明書を電子化する場合は、金融機関から取得したPDFまたは紙をスキャンしたPDFを会社側で保存します。

税務署から個別に提出を求められた場合は、担当者に提出方法を確認し、指定された方法で提出します。

2.残高証明書を任意に添付すべきか

残高証明書は決算残高の客観的な証拠になりますが、証拠として重要であることと、申告書への添付が必要であることは別問題です。

不要な残高証明書を添付すると、次の問題が生じます。

  • 口座番号などの金融情報を余分に提供する
  • 税務署側の確認資料を不必要に増やす
  • 帳簿残高との差異について説明を求められる可能性がある
  • 正式なPDF添付対象外として扱われる可能性がある

したがって、

残高証明書は法人税申告書に添付せず、決算残高との照合資料として会社側に保存する

という処理が適切です。

3.決算日後の剰余金処分

決算日の翌日から決算確定日までに、配当などの剰余金処分を決議した場合、その内容を申告書に添付する財務諸表等のどこかに記載する必要があります。

例えば、次の場合です。

  • 決算日:令和8年3月31日
  • 決算確定日:令和8年5月25日
  • 剰余金配当:100万円
  • 利益準備金積立額:10万円

3月31日時点では配当が決議されていないため、通常、前期末の貸借対照表や株主資本等変動計算書には反映させません。

しかし、法人税申告時点では処分内容が確定しているため、別途その内容を明らかにします。

法人税法施行規則35条は、株主資本等変動計算書等に記載がない場合、決算日後から決算確定日までに行われた剰余金処分の内容を記載した書類も添付対象としています。(www.zeiken.co.jp)

4.弥生会計の株主資本等変動計算書

弥生会計には、株主資本等変動計算書の「変動事由」を追加する機能があります。

操作経路は概ね次のとおりです。

  1. [決算・申告]を開く
  2. [決算書設定]を選択
  3. [株主資本等変動計算書]を開く
  4. [事由設定]をクリック
  5. [追加]をクリック
  6. 「剰余金の配当」などを登録
  7. 対象となる純資産科目へ金額を入力

ただし、この機能は決算日までに生じた純資産の変動を説明するためのものです。

決算日後に決議した配当を、前期の株主資本等変動計算書へ入力してはいけません。

配当の時期弥生会計での処理
事業年度中に実施した配当変動事動由として入力
決算日後に決議した配当前期の変動事由には入力しない
決算日後の処分内容損益金の処分表等へ別途記載

決算日後の配当を前期の変動事由に入力すると、帳簿上の期末残高と変動事由の合計が一致せず、差額が発生します。弥生会計では差額がゼロでなければ決算書を出力できません(support.yayoi-kk.co.jp)

5.法人税の達人で損益金の処分表を作成する

決算日後の剰余金処分は、弥生会計の株主資本等変動計算書に無理に組み込まず、法人税の達人で「損益金の処分表」を作成する方法が適切です。

利益剰余金から配当する場合は、通常「利益金処分計算書」を使用します。

操作手順

  1. 法人税の達人で対象法人を開く
  2. [決算書の作成]を選択
  3. [決算書の設定]で業種等を確認
  4. 「損益金の処分表」または「利益金処分計算書」を選択
  5. 当期未処分利益と処分内容を入力
  6. 内容を確定する
  7. 電子申告の達人へ取り込む
  8. [財務諸表等]で送信対象になっているか確認する

入力例

科目金額
当期未処分利益12,000,000円
利益処分額1,100,000円
└ 剰余金の配当1,000,000円
└ 利益準備金積立額100,000円
次期繰越利益10,900,000円

該当科目が表示されていなければ、[F6 科目追加]などから「利益処分額」の配下に科目を追加します。

e-Taxの損益金の処分表にも、次の区分が用意されています。

  • 当期未処分利益の処分
  • 当期未処分利益
  • 損失処理額
  • 任意積立金取崩額
  • 利益処分額
  • その他資本剰余金の処分

6.弥生会計と法人税の達人の作業順序

適切な作業順序は次のとおりです。

  1. 弥生会計で決算整理を完了する
  2. 弥生会計で財務諸表を確定する
  3. 弥生会計から法人税の達人へ決算書を連動する
  4. 法人税の達人で損益金の処分表を追加する
  5. 法人税の達人で個別注記表を入力する
  6. 電子申告の達人へ申告データを取り込む
  7. 財務諸表等の内容を確認する
  8. 電子署名して送信する

法人税の達人で損益金の処分表等を手入力した後に、弥生会計から決算書を再度取り込むと、手入力内容が上書きされる可能性があります。

そのため、弥生会計からの最終取込み後に、法人税の達人側の追加作業を行うのが安全です。

7.個別注記表

正式名称は「個別注記表」です。

個別注記表は会社法上、原則として作成すべき計算書類です。一方、法人税法上の必須添付書類としては明示されていません。

観点取扱い
会社法上原則として作成が必要
法人税申告上法定添付書類として明示されていない
e-Tax電子提出可能
実務上作成済みなら電子提出を推奨
会社側必ず作成・保存する

したがって、

個別注記表を送信しなくても通常は法人税申告の法定添付漏れにはならないが、作成済みで入力負担が小さければ、一緒に電子申告する

という判断が合理的です。

e-Taxでは、個別注記表を財務諸表の一つとして作成・送信できます(www.e-tax.nta.go.jp)

8.法人税の達人で個別注記表を作成する方法

弥生会計で作成した個別注記表は、法人税の達人へ自動連動されません。

そのため、法人税の達人側で再入力します。

  1. [決算書の作成]を開く
  2. [個別注記表]タブを選択
  3. [科目追加]をクリック
  4. 使用する注記事項を選択
  5. [登録]をクリック
  6. 注記内容を入力
  7. [確定]して保存
  8. 電子申告の達人で送信対象になっているか確認する

資産管理会社では、特に次の注記が重要です。

  • 有価証券の評価基準・評価方法
  • 外貨建資産の換算方法
  • 固定資産の減価償却方法
  • 消費税等の会計処理
  • 税効果会計
  • 一株当たり純資産額
  • 重要な後発事象

注記内容は、実際の会計処理と一致させる必要があります。

9.決算日後の配当を個別注記表にも記載する場合

個別注記表の「その他の注記」または「重要な後発事象に関する注記」に、次のように記載できます。

決算日後の剰余金処分
令和8年5月25日開催の定時株主総会において、剰余金の配当1,000,000円及び利益準備金100,000円の積立てを決議した。配当の効力発生日は令和8年5月31日である。

ただし、決算日後の剰余金処分については、個別注記表への記載だけで済ませるよりも、法人税の達人で損益金の処分表を作成し、金額を明示する方が確実です。

最終的な申告構成

書類作成場所電子申告
貸借対照表・損益計算書弥生会計必要
株主資本等変動計算書弥生会計必要
勘定科目内訳明細書弥生会計・内訳概況書の達人必要
損益金の処分表法人税の達人該当する場合は必要
個別注記表法人税の達人で再入力推奨
残高証明書金融機関から取得原則不要

最終的には、

残高証明書は申告書に添付せず会社側で保存する。決算日後の剰余金処分は、前期の株主資本等変動計算書へ無理に反映させず、法人税の達人で損益金の処分表として作成する。個別注記表は会社法上作成・保存し、可能であれば法人税の達人から電子申告する。

という整理になります。

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