外貨投資では、同じ円安による利益であっても、外貨そのものを保有していたのか、外貨建て株式を保有していたのかによって所得区分が異なる。
1.外貨そのものの為替差益
円をドルに交換し、そのドルを後日円に戻した場合、為替差益は原則として雑所得になる。
例えば、100万円を1ドル=100円で1万ドルに交換し、その後、1ドル=200円で円転した場合、
となり、100万円が雑所得となる。
外貨を保有しているだけでは課税されない。円転したり、外貨で商品・金融資産を購入したりして利益が実現した時点で、課税関係が生じるのが原則である。
2.外貨建て株式の為替差益
外貨で外国株式を購入した場合、株式保有中に生じた為替差益は、原則として雑所得には区分しない。
取得時と売却時の金額を、それぞれの時点の為替レートで円換算し、その差額全体を株式の譲渡損益として計算する。
例えば、1ドル=100円のときに100万円で1万ドルを取得し、直ちにその1万ドルで米国株式を購入したとする。その株式が2万ドルに値上がりし、1ドル=200円のときに売却した場合、
となる。
経済的には、この300万円には「株価上昇による利益」と「円安による利益」の両方が含まれている。しかし税務上は両者を分離せず、300万円全体を株式等の譲渡所得として扱う。外国株式の保有期間中の為替差損益を、雑所得として切り離す必要はない。(www.nta.go.jp)
3.特定口座における課税
外国株式が源泉徴収ありの特定口座に入っていれば、証券会社が取得時と売却時の金額を円換算し、譲渡益を計算する。
上場株式等の譲渡益に対する税率は20.315%である。
| 税目 | 税率 |
|---|---|
| 所得税 | 15% |
| 復興特別所得税 | 0.315% |
| 住民税 | 5% |
| 合計 | 20.315% |
譲渡益が300万円なら、源泉徴収税額は、
となる。
したがって、税引後の利益は、
投資元本を含めた税引後資産は、
となる。(www.nta.go.jp)
なお、米国株式の譲渡益について、通常の日本居住者に対する米国での源泉徴収が0%であれば、上記は日本国内の税額のみである。
4.株式売却後のドルに生じる為替差益
重要なのは、外国株式を売却した時点で「株式」から「外貨」に資産の性質が変わることである。
例えば、外国株式を1ドル=180円のときに2万ドルで売却し、その後、ドルのまま保有して1ドル=200円で円転した場合、課税関係は二段階になる。
株式売却まで
取得価額が100万円なら、
この260万円は株式等の譲渡所得となり、特定口座で課税される。
株式売却後
この40万円は、株式売却後にドルそのものを保有したことによる為替差益であり、原則として雑所得となる。
この部分は特定口座の計算対象外であるため、証券会社による源泉徴収だけでは課税関係が完結しない。必要に応じて確定申告を検討しなければならない。
5.外国株式を買う前の為替差益
円からドルに交換した後、すぐに外国株式を買わず、円安になってからそのドルで株式を購入した場合にも注意が必要である。
例えば、1ドル=100円で取得した1万ドルを、1ドル=150円になってから外国株式の購入に使った場合、ドルを株式購入のために支出した時点で、
の為替差益が実現したと考えられ、原則として雑所得となる。
したがって、外国株式投資では、次の三つの期間を分けて考える必要がある。
| 期間 | 為替差益の原則的な所得区分 |
|---|---|
| ドル取得後から株式購入まで | 雑所得 |
| 外国株式の保有中 | 株式等の譲渡所得に包含 |
| 株式売却後から円転まで | 雑所得 |
6.結論
為替差益の課税を考える際には、「円安でいくら儲かったか」だけでなく、円安が生じた時点で何を保有していたのかを確認する必要がある。
外貨を保有している間の為替差益は原則として雑所得、外国株式を保有している間の為替差益は株式等の譲渡所得に含まれる。
源泉徴収ありの特定口座が自動的に処理してくれるのは、基本的に外国株式の譲渡損益までである。株式購入前または売却後に外貨のまま保有して生じた為替差益については、特定口座の外側で雑所得が発生する可能性がある。
したがって、外貨投資の課税関係は、
という一連の流れを、資産が切り替わる各時点に分解して判断することが重要である。

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