
1.電子申告の基本的な考え方
法人税の電子申告で重要なのは、資料をできるだけ多く提出することではなく、法定提出書類を国税庁所定の形式で正確に送信することです。
電子申告の推奨は、会社が保有するすべての決算資料をPDF化して送付することを意味しません。
| 書類 | 基本的な取扱い |
|---|---|
| 法人税申告書・別表 | 電子申告する |
| 財務諸表 | 所定の電子形式で提出する |
| 勘定科目内訳明細書 | 所定の電子形式で提出する |
| 法人事業概況説明書 | 電子申告する |
| 個別注記表 | 正確に作成している場合は電子提出を推奨 |
| 残高証明書 | 原則として提出せず、会社で保存する |
| 取引残高報告書・取引履歴 | 原則として会社で保存する |
| 期末時価評価計算表 | 原則として会社で保存する |
2.e-Taxの「イメージデータ」とは
e-Taxでいう「イメージデータ」とは、紙の書類の外観をそのまま電子化した、原則としてPDF形式のデータです。
例えば、次のようなデータが該当します。
- 紙の証明書をスキャンしたPDF
- スマートフォンで撮影した書類をPDF化したもの
- WordやExcelから出力したPDF
- 金融機関から電子交付されたPDF
ただし、PDFにすればどの書類でもe-Taxに添付できるわけではありません。
イメージデータで提出できるのは、法令上の添付書類など、国税庁がPDF提出を認めている書類に限られます。
3.財務諸表はPDFでは提出できない
貸借対照表などの財務諸表は、原則として次の形式で提出します。
- XBRL形式
- 国税庁所定のCSV形式
財務諸表や勘定科目内訳明細書を紙からスキャンし、PDFとして添付する方法は認められていません。
4.個別注記表の取扱い
個別注記表は、e-Tax上、送信可能な財務諸表の一つとして位置付けられています。
e-Taxで取り扱える財務諸表には、次のものがあります。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 製造原価報告書
- 株主資本等変動計算書または社員資本等変動計算書
- 個別注記表
したがって、会社法上の計算書類として個別注記表を作成しており、内容が決算書や申告書と一致している場合は、ほかの財務諸表と一緒に電子提出するのが望ましいと考えられます。
ただし、PDFによる任意添付ではなく、XBRLまたは所定のCSVなどの財務諸表データとして送信します。
金融商品を保有する法人の主な注記事項
有価証券を多く保有する法人では、次の事項が重要になります。
- 有価証券の評価基準および評価方法
- 外貨建資産・負債の換算方法
- 固定資産の減価償却方法
- 消費税等の会計処理
- 重要な後発事象
例えば、次のように記載します。
有価証券の評価基準及び評価方法
売買目的有価証券については時価法を採用し、その他有価証券のうち市場価格のない株式等については移動平均法による原価法を採用しています。
前年の文面をそのまま流用し、実際の評価方法と食い違うと、かえって税務上の疑義を生じさせます。基本は、正確なら送信し、不正確または未確認なら修正してから送信することです。
5.残高証明書は原則として提出しない
銀行や証券会社の残高証明書は、通常の法人税確定申告における法定添付書類ではありません。
通常は次のように取り扱います。
- 残高証明書と帳簿残高を照合する
- 差額があれば未記帳取引や受渡日などを確認する
- 貸借対照表に正しい期末残高を計上する
- 勘定科目内訳明細書に必要事項を記載する
- 残高証明書は決算の証拠資料として会社で保存する
税務署が電子申告を推奨していても、残高証明書のコピーまで自主的に郵送することが望まれているわけではありません。
むしろ、法定外の資料を必要以上に郵送することは、電子申告によるペーパーレス化の趣旨にも合いません。
6.金融商品の時価はどのように伝えるか
金融商品の内容は、主に「有価証券の内訳書」に記載します。
主な記載事項は次のとおりです。
- 売買目的・満期保有目的・その他有価証券の区分
- 種類・銘柄
- 期末数量
- 期末現在高
- 期中の増減
- 売買を取り次いだ証券会社
- 関係会社株式などの補足事項
売買目的有価証券については、期末現在高欄に次の金額を記載します。
- 上段:時価評価前の帳簿価額
- 下段:時価評価後の金額
したがって、有価証券の内訳書を適切に作成すれば、残高証明書を添付しなくても、税務署は時価評価額と評価差額の概要を把握できます。
一方、満期保有目的有価証券やその他有価証券については、税務上、毎期末の市場時価を課税所得に反映させない場合があります。このため、税務署が申告時にすべての金融商品の市場時価を把握する必要があるわけではありません。
7.残高証明書だけでは税務処理を判断できない
残高証明書には、決算日時点の数量や評価額が記載される場合があります。しかし、残高証明書だけでは次の事項を確認できないことがあります。
- 取得価額
- 平均取得単価
- 税務上の帳簿価額
- 有価証券の保有目的区分
- 期中の売買損益
- 円換算に使用した為替レート
- 受渡日基準による未収金・未払金
- 会計上と税務上の評価差額
そのため、税務申告上は、残高証明書を提出することよりも、有価証券の内訳書と評価計算を正確に作成することの方が重要です。
8.税務署は証券口座へ直接アクセスできるか
勘定科目内訳明細書に証券会社名や口座情報を記載しても、税務署がその証券口座へ直接ログインし、残高や時価をリアルタイムで閲覧できるわけではありません。
ただし、税務調査などで確認が必要になれば、税務署は次の方法を利用できます。
- 法人に残高証明書や取引履歴の提出を求める
- 証券会社へ取引内容を照会する
- 税務署が保有する法定調書などと照合する
- 銘柄・数量と公開市場価格から期末時価を検証する
上場株式やETFであれば、有価証券の内訳書に銘柄・数量・決算日が記載されていることで、公開市場価格から概算時価を確認できます。
外国株式や外国ETFの場合は、決算日の市場価格に加えて、円換算に使用した為替レートも検証対象になります。
9.残高証明書を提出する場合
税務署から提出を求められた場合や、事前相談の結果、参考資料として送付することになった場合は、原則としてコピーを提出し、原本は会社で保存します。
| 資料 | 取扱い |
|---|---|
| 残高証明書の原本 | 会社で保存する |
| 税務署への郵送 | コピーを提出する |
| 電子提出を認められた場合 | 原本をスキャンしたPDFを提出する |
| 原本提出を明示的に求められた場合 | 税務署の指示に従う |
コピーには、必要に応じて次のように記載します。
原本は法人において保存しています。
令和○年○月○日現在の残高証明書の写し
ただし、法定外の残高証明書を自主的に郵送する前に、所轄税務署へ提出の要否と方法を確認するのが安全です。
10.実務上の推奨方針
電子申告するもの
- 法人税申告書・別表
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- 内容が正確な個別注記表
- 勘定科目内訳明細書
- 法人事業概況説明書
- その他の法定添付書類
会社で保存するもの
- 銀行・証券会社の残高証明書
- 取引残高報告書
- 売買取引報告書
- 外貨残高明細
- 期末時価評価計算表
- 適用為替レートの根拠資料
- 帳簿残高との照合資料
最終結論
個別注記表は、正確に作成できている場合には、財務諸表として電子提出する。残高証明書は通常の申告には添付せず、有価証券の内訳書を正確に作成したうえで会社に保存する。税務署から提出を求められた場合は、原則としてコピーを提出する。

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