定款目的変更の実務 ― 手続き・費用・登記期限の全体像

定款に記載した「事業目的」を追加・削除するなどの変更には、社内の承認手続きと法務局での登記申請が必要です。ここでは株式会社・合同会社を中心に一般的な手順と費用の目安をまとめます。

1. 社内手続き

  1. 決議を経る
    • 株式会社は株主総会での特別決議が必要で、議決権行使株主の過半数の出席と出席株主の3分の2以上の賛成が条件です。
    • 合同会社は社員全員の同意が必要になります。
  2. 議事録と新定款を作成
    決議内容を記載した株主総会(または社員総会)の議事録を作成し、変更点を反映した新定款を用意します。原始定款(設立時の定款)には変更を加えず、現行定款として保管します。

2. 登記申請

  1. 申請期限
    目的変更が登記事項に該当するため、変更決議後2週間以内に法務局へ変更登記を申請します。遅れると過料の対象となることがあります。
  2. 必要書類
    • 変更登記申請書
    • 株主総会(または社員総会)議事録
    • 株主リスト(株式会社の場合)または総社員の同意書(合同会社の場合)
    • 新定款
  3. 登録免許税(法定費用)
    事業目的の変更登記には登録免許税が一律3万円かかります。複数の目的を同時に変更・追加しても登録免許税は3万円で済みますが、商号変更など別の登記を同時に行うと税額は合算されます。登録免許税は収入印紙を登記申請書に貼付するか、金融機関で納付した領収書を添付する方法で支払います。
  4. 司法書士に依頼する場合の費用
    登記書類の作成や申請を司法書士に依頼すると報酬が発生します。相場は2〜4万円ほどで、司法書士事務所によって異なります。ご自身で手続きを行えばこの報酬は不要ですが、書類の準備や法務局への提出に時間と手間がかかります。

3. 実務上のポイント

  • 変更はまとめて行う:目的変更のたびに株主総会や登録免許税が必要になるため、将来予定している事業も含めて一括で変更すると費用と手間を抑えられます。
  • 目的の追加・削除を検討:登記簿上の目的が実際の事業内容と異なると、融資や取引で不利になる場合があります。使わない目的は削除し、必要な事業目的を適宜追加しましょう。
  • 違反すると過料のリスク:変更登記を怠ると100万円以下の過料に処されることがあるため、期限内に申請することが重要です。

✅まとめ

内容説明
社内決議株式会社は株主総会の特別決議、合同会社は全社員の同意が必要。
登記申請期限変更後2週間以内に法務局へ申請。
登録免許税目的変更登記は一律3万円。複数の目的変更でも税額は変わらないが、別の登記を同時に行うと追加分が加算。
その他費用司法書士報酬(目安2〜4万円)、郵送費・交通費など。
注意点原始定款は変更せず、新定款を作成して保管。公証人の認証は不要。変更を怠ると過料のリスク。

以上が、定款目的変更の手続きと費用の概要です。業種や会社形態によって細かい点が異なる場合がありますので、具体的なケースでは専門家に相談することをおすすめします。

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