グローバルの金鉱産出情勢
金は希少性と価値保存機能を持つため、金鉱山の産出量を追跡することは戦略的に重要である。世界的な金鉱産出量は南極大陸を除くすべての大陸に広がっており、世界の金鉱産出量は2024年に総産出量3,300トンに達した。カナダ天然資源省は、世界の金鉱産出量の上位5カ国が全体産出量の約2割超を占めると指摘している。
U.S. Geological Survey(USGS)は2026年2月に発表した「Mineral Commodity Summaries」で、2025年の世界金鉱産出量を3,300トンと推定し、中国、ロシア、オーストラリア、カナダ、アメリカの5カ国で産出量の41 %を占めると報告している。以下の表はUSGSが公開した2024〜2025年予測の金鉱産出量に基づいている。
トッププロデューサーの産出量 (2025年予測)
下表はUSGSの2026年特別報告に基づき、2024年と2025年の金鉱生産量の変化を国別にまとめたものである。
| ランク | 国名 | 2025年予測産出量 (t) | 2024年産出量 (t) | コメント |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 中国 | 380 | 377 | 世界最大の金生産国であり、2025年も約380トンを産出。国内需要が非常に大きく、採掘した金の多くを国内で消費している。 |
| 2 | ロシア | 310 | 310 | 世界第2位の生産国。2024〜25年の生産量はほぼ横ばいで約310トン。制裁により欧米市場への直接輸出は制限されるが、UAEなどを経由した輸出が行われていると指摘される。 |
| 3 | オーストラリア | 280 | 284 | 鉱山の規模と投資安全性が高く、2025年の生産量は約280トン。カリグーリーやスーパー・ピットなど西豪州の巨大鉱山が中心。 |
| 4 | カナダ | 200 | 200 | 2024〜25年とも200トン前後で推移し、トップ5に入る生産国。オンタリオやケベックの鉱山が主要生産拠点で、金は同国最大の鉱物資源である。 |
| 5 | アメリカ合衆国 | 160 | 163 | 2025年は160トンと推計され、ネバダ州が国内生産の約64%を占める。米国の金生産量は2017年以降減少傾向が続いている。 |
| 6 | ガーナ | 150 | 149 | アフリカ最大の金生産国で、2024年比で約1トン増。2024年には140.6トンと報告され、前年比7.7%増でアフリカ首位になった。 |
| 7 | メキシコ | 140 | 140 | 2024〜25年とも約140トン。2024年には16.7%増と大きく回復し、再び世界上位に返り咲いた。 |
| 8 | ウズベキスタン | 130 | 129 | 旧ソ連の金産出国で、2025年に約130トンを生産。国内消費が多く、中央銀行が大部分を購入している。 |
| 9 | カザフスタン | 130 | 130 | 中央アジアの主要生産国で、2024〜25年とも約130トン。 |
| 10 | ペルー | 110 | 108 | 南米の鉱山国家。2025年は約110トンと推計され、前年から微増。政治的不安やインフラ課題が残るが、カハマルカ州などの鉱山が支えている。 |
| 11 | インドネシア | 90 | 94 | 2025年は約90トンとやや減少。2024年には27.3%増の140.1トンと急増したが、2025年は大規模鉱山の調整により減少したとみられる。 |
| 12 | 南アフリカ | 90 | 90 | かつての世界最大の金生産国だが、2024〜25年は約90トンにとどまる。1970年代には995トンを産出していたが、埋蔵量の減少とコスト高騰により大きく低下した。 |
| 13 | ブラジル | 80 | 82 | ブラジルの金生産は約80トンで、カラジャス鉱区などを中心に生産。 |
※「2025年」はUSGSによる2025年の推計値(2026年2月発表)。「2024年」はUSGSが報告した2024年実績値または推計値。
解説と動向
- トップ5カ国の集中‥ USGSは、2025年の世界金生産が約3,300 tであり、上位5カ国(中国・ロシア・オーストラリア・カナダ・米国)で全体の41 %を占めると報告している。カナダ政府も2024年の統計で同様に、上位5カ国が全体の4割超を占めると示している。
- 中国の独走と国内消費‥ 中国は2007年から世界最大の金生産国であり、2025年も約380 tを産出した。一方で同国の金需要は900 tを超えるとされ、鉱山生産の大部分が国内で消費されるため、国際市場に供給される量は限定的である。
- ロシアと制裁下の供給‥ ロシアは約310 tで第2位。欧米の制裁によりロンドン市場への直接供給は困難だが、UAEやトルコ経由で再鋳造された金が国際市場に流入していると報告される。
- オーストラリアとカナダの安定供給‥ オーストラリア(280 t)とカナダ(200 t)は政治的安定と高度な技術に支えられた生産国で、輸出による国際供給に大きく寄与している。
- アフリカ首位となったガーナ‥ ガーナは2024年に140.6 tを生産し、前年比7.7 %増でアフリカ首位となった。2025年には150 tに増加し、南アフリカを大きく上回っている。
- その他の生産国‥ メキシコ、ウズベキスタン、カザフスタンはいずれも130〜140 t台で拮抗している。ペルーは110 tとやや小さいが増加傾向にある。インドネシアは2024年に急増したものの、2025年は90 t程度に減少した。
まとめ
近年の金鉱山生産は横ばいから緩やかな増加傾向にあり、2024〜25年は約3,300 tと過去最高水準に達した。最新データでは、中国(380 t)、ロシア(310 t)、オーストラリア(280 t)、カナダ(200 t)、米国(160 t)が上位5カ国であり、これらの国で世界生産の4割以上を占める。アフリカではガーナが約150 tで南アフリカを抜いて首位に立ち、メキシコ・カザフスタン・ウズベキスタンが続く。国別の生産量は技術投資や環境規制、地政学的リスク、国内需要などの要因によって変動しており、今後の供給動向を理解する上で重要な指標となる。

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