停車バスは「車両」か「障害物」か―法解釈の分岐点

法的枠組み

黄色い実線の意味と追越しの定義

日本の道路ではセンターラインにいくつかの種類があり、黄色の実線は「追い越しのための右側部分はみ出し通行禁止」を示す標識と同じ意味を持ちます。この線が引かれている場所では、前車を追い越すためにセンターラインを越えて対向車線にはみ出すことが禁止されています。しかし、この規制はあくまで“走行中の車両の追越し”に適用されるもので、停車中の車両を避ける行為までは含みません。JAFの解説でも、黄色の実線は追越しのために右側へはみ出すことを禁じるが、工事や駐車車両などの障害物がある場合は追越しではなく「障害物の側方通過」とみなされ、右側にはみ出して通行してもよいと説明しています。

道路交通法第17条第5項は、左側部分の幅が不十分な場合や道路の損壊・工事その他の障害物のため左側部分を通行できない場合など、例外的に道路の中央から右の部分にはみ出して通行できる場合を列挙しています。停車中のバスは「障害物」に該当し、道路の左側部分を塞いでいるため、その側方を安全に通過する行為はこの例外にあたると解釈できます。また、黄色実線区間であっても車線からはみ出さずに追い抜くこと(センターラインを跨がず左側の車線内で追い越すこと)は禁止されていません。

バス発進妨害規制

一方、道路交通法第31条の2には「乗客の乗降のため停留所で停止している乗合自動車が発進の合図をしたときは、後続車はその進路を妨げてはならない」と規定されています。警視庁がまとめた資料では、バスが停留所で乗客の乗降のため停止し、発進の合図(右ウインカーなど)を出した場合、後続車は発進を妨害してはいけないと明記されており、違反すると道路交通法第120条第1項第3号により罰金が科せられることがあります。この規定は“バスの進路変更”を優先させるためのものであり、バスが発進合図を出した後に追い越す行為は「乗合自動車発進妨害違反」とみなされます。

弁証法による検討

弁証法的な議論では、命題(テーゼ)と反命題(アンチテーゼ)を対立させ、両者の矛盾を解消してより高次の統合(ジンテーゼ)を導きます。ここでは「黄色の中央線区間では追越し禁止」というテーゼと、「停車中のバスは障害物なので迂回できる」というアンチテーゼを対比させます。

テーゼ:黄色実線は追越し禁止

黄色の実線は追い越しのためのはみ出しを禁止する標示であり、道路交通法第17条第4項は原則として道路の中央線から左側を通行する義務を課しています。追越しとは、進路を変えて前車の側方を通り、その前方に出る行為であり、このためにセンターラインを越えることは規制対象となります。道路構造的にセンターラインが黄色である場所は見通しが悪く、対向車と正面衝突する危険が高いので、安全運転の観点からもはみ出しての追越しは避けるべきです。

アンチテーゼ:停車中のバスは障害物なので迂回が許容される

しかしながら、停車しているバスは「前車」とは異なり動いていないため、道路交通法上の「追越し」に該当しません。黄色の実線でも「路上駐車の車両などを避けるためにはみ出すのは問題ない」とする解説が多数あり、法第17条第5項も道路工事や駐停車車両といった障害物の存在を理由に右側にはみ出して通行する例外を認めています。実際に、バスが長時間停車している場合、それを避けずに後続車列全体が停止し続けると交通の円滑さを損ないかねません。道路交通法第70条は運転者に対して交通の状況に応じた安全運転義務を課しており、不要な渋滞を避ける配慮も求められます。

さらに、停車中のバスの側方を通行するときは徐行して安全を確かめる義務があります(通学通園バスなどの場合、道路交通法第71条2の3号)。つまり、周囲の安全を確認しながらバスを迂回することは法律上も想定されています。従って、バスが発進の合図を出しておらず、あくまで停車中の場合に限り、対向車線の交通を妨げない範囲でセンターラインを越えて迂回することは法の趣旨に反しません。

ジンテーゼ:安全と円滑さを両立させる判断

以上の対立を統合すると、黄色の実線区間で停車中のバスを追い越すことが直ちに違反になるわけではないことが分かります。ただし、以下の条件を守る必要があります。

  1. バスが停車中であり、発進の合図を出していないこと:バスが発進合図を出した場合、後続車は進路を譲る義務があり、そのまま追い越すと発進妨害違反になります。
  2. 対向車の有無と視界:黄色実線が引かれている道路は見通しが悪いことが多いので、対向車がないことを十分確認すること。道路交通法第17条第5項4号は左側幅員が6m未満の道路で他の車両を追い越す場合でも、右側部分を見通せて対向車の交通を妨げるおそれがない場合に限ると規定しています。
  3. 側方通過であること:停車中のバスを「障害物」として側方通過する行為であり、追越しと違って前車の前方に出る意図ではないこと。通過後はすみやかに左側へ戻り、長い距離を対向車線側に走行しない。
  4. 徐行と安全確認:停車中のバスには乗降客がいるため、通過時には徐行して歩行者の飛び出しに注意する(通学通園バスの場合には特に徐行義務あり)。

以上を踏まえると、黄色のセンターラインを越えて停車中のバスを追い越す行為は、法が禁じる「追越しのためのはみ出し」ではなく、「障害物の側方通過」として許容されます。ただし、バスが発進合図を出した後にそれを妨げる形で追い越すことは、道路交通法第31条の2が禁じる発進妨害に該当します。周囲の状況を観察し、安全かつ円滑な交通を確保することが重要です。

結論の要約

黄色の実線は「追越しのためセンターラインを越える行為」を禁止する標示である。停車中のバスを避けるためにセンターラインを越える行為は「追越し」ではなく「障害物の側方通過」であり、道路交通法第17条第5項に定める例外に該当するため、対向車がなく安全が確保できる場合は法的に認められる。ただし、バスが発進の合図を出したときは後続車は進路を譲る義務があり、発進中に追い越すと「乗合自動車発進妨害違反」となる。安全運転義務を遵守しつつ、交通の円滑さと歩行者の安全を両立させるよう配慮する必要がある。

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