米国大統領任期後半、株高なら金はどう動く?――選挙アノマリーと実質金利

コモディティ

金も米国大統領任期の後半に上昇することはありますが、株式のように「後半ほど堅調」というアノマリーは明確ではありません。金では、むしろ任期2年目の中間選挙年が強いという集計があります。

ここでは「任期後半」を3・4年目とし、金価格は米ドル建てで考えます。現在の任期では2027・2028年に当たります。

まず、過去の傾向を確認する

S&P500について、First Trustの1929~2024年の集計では、3年目の平均年間リターンが約18.0%、4年目が約10.8%でした。したがって、「任期後半が強い」という理解は、特に3年目の強さに支えられています。ftportfolios.com

一方、Seasonaxが公表した1969~2025年の金の集計は、次のとおりです。interactivebrokers.com

任期の年選挙周期での位置金の平均上昇率
1年目大統領選挙の翌年約5.1%
2年目中間選挙年約12.6%
3年目大統領選挙の前年約9.7%
4年目大統領選挙年約3.5%

これは公表集計値であり、将来の期待収益率ではありません。また、株式とは集計期間が異なるため、数字をそのまま比較することはできません。

この集計から読み取れるのは、金の3年目は比較的良好だが、4年目まで一貫して強いとはいえないということです。

正:任期後半の景気刺激は、株式と金の両方を押し上げ得る

選挙を控えた政権には、景気や雇用を改善したい動機があります。財政支出や減税が企業利益を押し上げれば、株式には追い風になります。

その政策が財政赤字の拡大やインフレへの懸念も生むなら、金にも資金が向かい得ます。さらに、景気を維持しながら実質金利が低下し、ドルが弱くなる環境では、株式と金が同時に上昇する余地があります。金に対する低金利・ドル安の支援効果は、ワールド・ゴールド・カウンシルも指摘しています。World Gold Council

ここから導ける仮説は、次のようになります。

「任期後半の政策が企業利益を増やす一方、通貨の購買力への不安も強めれば、株式と金はともに上がる」

株高と金高は、必ずしも矛盾しません。

反:景気刺激が成功するほど、金には逆風になる場合もある

しかし、景気が強くなった結果、実質金利が上昇し、ドル高が進めば、利息を生まない金を保有する機会費用は高まります。企業利益の増加で株式が上昇する一方、金は停滞・下落する可能性があります。WGCも、成長加速とリスク低下が金利上昇・ドル高を伴う場合、金価格には下押し要因となると整理しています。World Gold Council

つまり、景気刺激という同じ政策が、金を上げる経路と下げる経路の両方を持つのです。

また、金は世界市場です。米国の選挙日程だけでなく、各国中央銀行の購入、地政学的リスク、投資需要にも左右されます。WGCによる選挙前後・政党別の分析でも、結果のばらつきが大きく、統計的に有意な差は確認されていません。ただし、これは任期3・4年目のアノマリーを直接検定した結果ではありません。World Gold Council

そもそも約半世紀のデータでも、各年の位置に該当する観測は十数回程度です。平均値だけでは、上昇の再現性や、一部の急騰年に依存している度合いまでは判断できません。

合:任期後半という暦より、政策が実質金利とドルにどう作用するかを見る

以上を統合すると、任期後半の金を考える際には、次の条件分けが有効です。これは選挙周期そのものの予測ではなく、価格形成要因からの推論です。

任期後半に生じる環境米国株への作用金への作用
景気拡大・企業利益増加・実質金利上昇・ドル高上昇を支えやすい逆風になりやすい
景気維持・実質金利低下・ドル安上昇を支えやすい上昇を支えやすい
景気後退・大幅利下げ・不安拡大利益悪化が重荷支援要因が増える
財政・通貨への信認低下業種や金利次第買われる理由になり得る

2027年に株式が堅調になるというアノマリーから、「金は下がる」とも「金も上がる」とも断定できません。 過去の集計では金の3年目も比較的良好ですが、その理由を任期だけに帰することはできません。

弁証法的にいえば、任期後半の景気刺激は、企業収益への期待と通貨価値への不安を同時に生み得ます。前者は株式を、後者は金を支えますが、実質金利の上昇は金への反作用となる。 金の行方を決めるのは、この力関係です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました