ドル・ユーロ・円は国際決済の約8割を占める

通貨

結論

2026年5月のSWIFT経由の決済額では、ドル・ユーロ・円の3通貨を合計すると、世界全体の約78%を占めます。

通貨世界の決済額に占める割合国際決済に占める割合※
米ドル59.10%50.73%
ユーロ13.92%22.35%
日本円4.94%3.34%
3通貨合計77.96%76.42%

※右欄はユーロ圏内同士の決済を除いた数字です。いずれもSWIFT上の顧客送金・金融機関間決済を金額ベースで集計しています。SWIFT「Global Currency Tracker, June 2026」


【正】ドルを中心とする国際通貨秩序

世界の国際決済は、表面的には多通貨体制である。しかし実態を見ると、米ドルが単独で過半を占めている。

ドルが使われる理由は、米国経済の規模だけではない。

  • 原油・資源・農産物の価格表示がドル中心である
  • 米国債市場が巨大で、ドル資金を一時的に保管しやすい
  • ドル建て融資・社債・貿易信用が世界に広がっている
  • 為替取引の基軸通貨としてドルを経由する取引が多い
  • SWIFT、コルレス銀行、担保市場などの金融インフラがドルを中心に形成されている

つまり、ドルは単なる「米国の通貨」ではない。国際取引における価格の尺度、支払手段、債務履行手段、準備資産という複数の機能を同時に担っている。

このネットワーク効果により、「皆がドルを使うから、自分もドルを使う」という自己強化が起きる。

【反】ドル一極支配を修正するユーロと円

もっとも、ドルがすべての決済を独占しているわけではない。

ユーロは、世界全体では13.92%だが、ユーロ圏内決済を除く国際決済では22.35%に上昇する。これは、ユーロが欧州域内だけの通貨ではなく、欧州と周辺国を結ぶ国際通貨として機能していることを示している。

一方、日本円は世界決済で4.94%、ユーロ圏内を除いた国際決済では3.34%である。

日本は世界有数の対外純資産国であり、国債市場も巨大である。それでも円の国際決済比率が小さいのは、次の事情による。

  • 日本企業の貿易でもドル建て決済が多い
  • 資源輸入をドルに依存している
  • 円建ての国際融資・社債発行が限定的である
  • 日本円は決済通貨より、低金利の調達通貨として使われやすい
  • 日本の経済規模や貿易上の地位が相対的に低下している

ここに円の矛盾がある。円は外貨準備や安全資産として一定の信用を持つ一方、商品価格や国際債務を表示する「基軸的な決済通貨」にはなっていない。

【合】多極化しても、ドル中心構造は残る

ドル・ユーロ・円の合計比率は、世界決済で77.96%、国際決済で76.42%に達する。

したがって、現在の国際通貨体制は、純粋なドル単極体制でも、完全な多通貨体制でもない。

ドルを中心に、ユーロが地域的・国際的に補完し、円などが部分的役割を担う「階層的な多通貨体制」である。

人民元や各国通貨による直接決済が増えても、それだけでドル覇権が崩れるとは限らない。決済で受け取った通貨を、どの市場で運用し、どの資産を担保として保有するかという問題が残るからである。

この点で米国債市場の規模、換金性、担保としての利用範囲は、依然としてドルの大きな優位性となっている。

一方、ドル依存は米国の制裁政策、資産凍結、財政赤字、インフレなどの影響を世界が受けることも意味する。その反作用として、各国は金、ユーロ、人民元、自国通貨決済へ分散しようとする。

しかし、分散の動き自体が、直ちにドルに代わる統一的な通貨を生むわけではない。むしろ将来は、

「ドルから別の単一通貨へ」ではなく、「ドルを中心にしつつ、金・ユーロ・人民元・地域通貨へ徐々に分散する」

方向に進む可能性が高い。

要約

2026年5月のSWIFT決済額では、ドル59.10%、ユーロ13.92%、円4.94%で、合計約78%を占める。ただし、これはSWIFT経由の決済統計であり、世界のあらゆる決済を完全に網羅する数字ではない。

ドルは貿易、金融、米国債、担保市場を結ぶ中心通貨である。ユーロは欧州を基盤とする第二の国際通貨であり、円は信用力を持ちながらも、国際的な決済通貨としての利用は限定される。

したがって現代の通貨秩序は、ドル一極体制から完全な多極体制へ移行したのではない。ドルを頂点とし、ユーロ・円・人民元などが補完する階層的多通貨体制なのである。

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