結論
コロナ・ショックと2025年のトランプ関税ショックでは、金はいずれも最終的に上昇しました。ただし初動は異なります。
- コロナ禍:現金確保の売りで金も約12%下落した後、金融緩和を受けて急騰
- 関税ショック:一時約5%下落したものの、通商不安・ドル不信から短期間で最高値を更新
以下、国際比較に適したドル建て金価格(1トロイオンス当たり)の概算です。
| 局面 | コロナ・ショック(2020年) | トランプ関税ショック(2025年) |
|---|---|---|
| 年初価格 | 約1,520ドル | 約2,645ドル |
| ショック前価格 | 約1,670ドル | 約3,130ドル |
| 初動の安値 | 約1,475ドル | 約2,980ドル |
| 初動下落率 | 約−12% | 約−5% |
| その後の最高値 | 約2,067ドル(8月) | 約3,434ドル(4月22日) |
| 安値から最高値 | 約+40% | 約+15% |
| 年末価格 | 約1,895ドル | 約4,449ドル |
| 年間上昇率 | 約+25% | 約+68% |
※日中価格・LBMA価格・終値のいずれを採用するかで数値は若干変わります。
1.コロナ禍の推移
2020年初め、金は約1,520ドルから上昇し、感染拡大への警戒によって一時1,670ドル前後に達しました。
ところが、世界的な株価暴落が本格化すると、金も1,475ドル前後まで急落します。安全資産であるにもかかわらず下落したのは、投資家が追証への対応や手元資金の確保のため、換金可能な金まで売却したからです。
その後は、
- FRBによるゼロ金利と大規模量的緩和
- 実質金利の低下
- 財政支出と通貨供給量の急増
- ドル安
- 金ETFへの資金流入
を背景に反騰し、2020年8月には約2,067ドルの当時最高値を記録しました。
つまり、コロナ禍の金価格は、
安全資産買い → 換金売りによる急落 → 金融緩和を受けた歴史的上昇
という三段階でした。
2.2025年トランプ関税ショックの推移
2025年の金は、年初の約2,645ドルから、関税政策への警戒を先取りして上昇していました。3月には初めて3,000ドルを突破しています。
4月2日の相互関税発表後、株式市場が急落すると、金も一時2,980ドル前後まで下落しました。ただし下落率はおおむね5%程度で、コロナ初期より軽微でした。
その後は米中関税戦争の激化、景気後退とインフレが併存するスタグフレーション懸念、米国債・ドルに対する信認低下から金買いが急増。4月11日には3,200ドルを突破し、4月22日にはLBMA価格で約3,434ドルの最高値を付けました。Reuters、World Gold Council
2025年末には約4,449ドルに達し、年初からの上昇率は約68%となりました。World Gold Council
両者の本質的な違い
コロナ・ショックは、経済活動そのものが突然停止した「デフレ・流動性危機」でした。そのため初動ではドル現金が最優先され、金まで大きく売られました。
一方、トランプ関税ショックは、供給網の分断と輸入物価上昇を伴う「インフレ・通貨信用危機」でした。したがって金は単なる安全資産ではなく、
- インフレヘッジ
- ドル安ヘッジ
- 米国政策リスクの回避先
- 中央銀行の準備資産
として直接買われやすかったのです。WGCも2025年第1四半期の金上昇要因として、関税懸念、株式市場の変動、ドル安などを挙げています。World Gold Council
したがって端的にいえば、
コロナ禍では「最初は金も売られ、その後に金融緩和で上昇」した。
関税ショックでは「短期的な換金売りをこなし、ドルと米国政策への不信から直ちに上昇」した。
という違いがあります。金にとっては、経済活動の停止よりも、インフレを伴う通貨・国債への信用低下のほうが、直接的かつ持続的な上昇要因になりました。

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