購買力平価説と金利平価説――物価と金利で読み解く為替レート

政治経済

購買力平価説は「物価」、金利平価説は「運用利回り」から為替レートを説明する理論です。「平価」とは、通貨を交換した後の価値が釣り合うことを指します。

比較購買力平価説金利平価説
比べるもの同じ商品・サービスを買える量同じ期間、資金を運用した収益
注目する差各国の物価・インフレ率各国の金利
中心的な考え方同じものを買えるように為替が調整される通貨を換えても運用収益が釣り合うように調整される
主な使い道為替の長期的な水準・方向を考える金利差と先物為替・期待為替の関係を考える

① 購買力平価説――同じものなら、通貨を換えても同じ価格になる

例えば、同じ商品が日本で 1,500円、米国で 10ドルなら、購買力が釣り合う為替レートは、\[ 1,500円÷10ドル=1ドル150円 \]

です。実際の為替が1ドル100円なら、米国の商品は円換算で1,000円なので、日本より安く買えます。こうした価格差を利用する取引が、価格や為替を釣り合わせる方向に働くという考え方です。実際には、単一の商品ではなく、商品・サービスの組合せで比較します。imf.org

これを物価の「水準」で考えるのが絶対的購買力平価、物価の「上昇率」で考えるのが相対的購買力平価です。

相対的購買力平価では、インフレ率が高い国の通貨は、低い国の通貨に対して下落すると考えます。

例えば、日本の物価が年2%、米国が年5%上がるなら、ドルの購買力は円より速く低下するため、理論上はドル安・円高になります。出発点が1ドル150円なら、\[ 150円\times\frac{1.02}{1.05}\approx145.7円 \]

となります。これは理論上の計算例で、実際の為替予測ではありません。輸送費・関税・サービスの取引しにくさなどがあるため、購買力平価は厳密には成立せず、長期的な目安として扱われます。imf.org

② 金利平価説――高金利通貨に換えるだけでは、有利とは限らない

例えば、仮に日本の金利が年1%、米国が年5%なら、ドルで運用する方が高い利息を得られます。しかし、円に戻すときにドルが下がれば、その利息の優位性は相殺されます。

金利平価説は、この金利差と為替の関係を説明します。ここでは、次の2種類を区別することが大切です。elibrary.imf.org

種類為替の扱い理論の性質
カバー付き金利平価将来円に戻すレートを、為替予約で確定する裁定取引によって収益が釣り合う関係
カバーなし金利平価将来の為替レートを確定しない為替変動の期待を含む均衡仮説

カバー付きの場合、現在1ドル150円、日本の金利1%、米国の金利5%なら、理論上の1年先の為替予約レートは、\[ 150円\times\frac{1.01}{1.05}\approx144.3円 \]

です。

150万円を運用すると、次のように収益が揃います。

  • **円で運用:**150万円×1.01=151万5,000円
  • **ドルで運用し、為替予約:**1万ドル×1.05×約144.3円=約151万5,000円

つまり、ドルの高い利息は、予約レートのドル安によって相殺されるという関係です。手数料などを省いた例であり、144.3円は「1年後の市場レートの予想」ではありません。

カバーなしの場合は、高金利通貨が将来下落すると期待され、その期待下落分が金利差を相殺するという考え方です。ただし、実証的には成立しないことも多く、高金利通貨が上昇する局面もあります。imf.org

③ 「米国の金利が高いとドル高」と矛盾するのか

矛盾しません。金利が上がったときの反応と、その後の為替変化は別だからです。

例えば、米国の金利が予想以上に上がると、ドル資産の魅力が増し、ドルがその場で買われることがあります。一方、カバーなし金利平価では、将来の予想レートを一定とすると、現在のドルが高くなるほど、そこから先の期待変化はドル安になります。

したがって、「利上げを受けて今ドル高になること」と「高金利分を相殺するように将来のドル安が期待されること」は両立します。

為替を見る際には、購買力平価を長期的な物価の物差しとして使い、金利平価では特に、為替予約レートと将来の実際の為替レートを混同しないことが重要です。

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