金価格は下落、ETF保有量は増加――金市場の需給をどう読むか

コモディティ

この図が示しているのは、「金価格が下がっている一方、金ETFの保有量は増えている」という、価格と投資需要の乖離です。金への需要が全面的に崩れた、と読む図ではありません。ただし、これだけで底打ちを判断することもできません。

① グラフの読み方

見出しは「売り込まれても、金ETFへの流入は続く」という意味です。

線内容参照する目盛り
白線Bloombergが集計する金ETFの金保有量左軸・百万トロイオンス
オレンジ線金の現物価格右軸・ドル/トロイオンス

右端では、白線が上昇する一方、オレンジ線は下落しています。

画像からの概算では、夏ごろから直近までに、ETF保有量は約9,600万オンスから約1億150万オンスへ増加しています。差の約550万オンスは、約171トンに相当します。一方、金価格は夏以降の戻り高値である約4,650ドルから、約4,000ドルへ下がっています。

なお、左右で単位・目盛りが異なるため、線の交差や上下の距離そのものには意味がありません。 また、保有量の対象はBloombergの集計範囲であり、他機関の世界合計と同一とは限りません。

② なぜETFが買っているのに、金価格が下がるのか

金ETFは、金市場の買い手の一部だからです。

ETFが金を積み増していても、先物の買い持ち解消、店頭市場での売却、他の現物保有者の売りなどが価格を押し下げることはあります。「ETFで買いが続くこと」と「市場全体で価格が下がること」は両立します。

しかも、白線は保有する金の「金額」ではなく「重量」です。したがって、価格上昇によって運用資産額が膨らんだだけではなく、集計対象のETFが実際に保有量を増やしている点が重要です。WGCも、金保有量の変化と、ドル建ての資金流出入を区別しています。gold.org

ただし、この図には先物の建玉や売り手の内訳がないため、下落原因を「先物の投げ売り」などと断定することはできません。

③ 強気・弱気の両面からどう読むか

見方解釈留意点
強気価格が下がっても金を積み増す需要があり、下値を支えている可能性購入目的や保有期間は分からない
弱気ETFの買いが続いても下落するほど、他の売り圧力が強い可能性ETF流入だけでは反転を保証しない
今後の分岐点ETF保有量の増加が続き、価格も安定するか保有量まで減少に転じれば、需給悪化への警戒が必要

弁証法的に捉えるなら、「下落=金への信認崩壊」にはETFの積み増しという反証があり、「ETF流入=上昇必至」には現実の価格下落という反証がある、という構図です。

この図から導けるのは、金を保有したい需要は残っているが、それだけでは足元の売り圧力を吸収できていないという評価です。中央銀行の売買はこの図に含まれていないため、中銀需要とETF需要は別々に確認する必要があります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました