血流が良くなれば、老廃物は排出されるのか

健康

――血流・排泄・発汗の関係を弁証法で考える

「血流が良くなれば老廃物が運ばれ、尿や便、汗として排出される」とよくいわれる。

この説明には一定の合理性がある。血液は、細胞に酸素や栄養を届ける一方、代謝によって生じた二酸化炭素や尿素などを回収し、肺・腎臓・肝臓へ運ぶからである。

しかし、血流を良くして大量に汗をかけば、身体が「浄化」されると考えるのは正確ではない。血流は老廃物を運ぶ経路ではあるが、何を排出するかを決めるのは、それぞれの臓器だからである。

【正】血流は、老廃物を排泄器官へ運ぶ

人体を都市にたとえるなら、血流は物流網であり、腎臓・肺・肝臓・腸は処理施設である。

細胞がたんぱく質を代謝すると、窒素を含むアンモニアが生じる。これは肝臓で毒性の低い尿素に変えられ、血液によって腎臓へ運ばれ、尿として排出される。

また、細胞呼吸によって生じた二酸化炭素は、血流によって肺へ運ばれ、呼気として排出される。

したがって、血流がなければ、老廃物は発生場所から排泄器官へ移動できない。血流は排泄の前提条件である。

特に腎臓は、絶えず血液を濾過し、尿素、クレアチニン、余分な水分や電解質を尿に移している。ただし腎臓は、単に血液を通過させるだけではなく、必要な物質を再吸収し、不要なものを選別している。米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所

【反】血流が増えれば、排泄量も増えるとは限らない

血流は全身で一様に増減するものではない。運動や暑熱環境では、血液の配分が変化する。

運動中は筋肉への血流が増え、体温が上昇すると皮膚への血流も増える。一方、腎臓や消化管への血流は相対的に減少することがある。

つまり、「全身の血行が良くなった」という感覚があっても、腎血流や尿量が同時に増えるとは限らない。むしろ大量に汗をかけば、水分と塩分が失われ、血液量が減るため、身体は水分を守ろうとして尿量を減らす。

ここには、次の逆説がある。

発汗は体外への水分排出を増やすが、その反作用として腎臓からの水分排出を抑える。

したがって、運動後に尿が少なくなることは、老廃物が排出されていないというより、身体が脱水を防ぐために尿を濃縮している結果である。

【正】汗も血流によって支えられている

発汗と血流には密接な関係がある。

運動などによって筋肉で熱が発生すると、その熱は血液によって皮膚へ運ばれる。皮膚血管が広がり、皮膚表面から熱を放散すると同時に、汗腺から汗が分泌される。

汗が皮膚表面で蒸発するときに熱を奪うため、体温が下がる。したがって、皮膚血流と発汗は、熱を身体の内部から表面へ運び、外界へ逃がす共同作業である。皮膚血流と発汗の神経制御に関するレビュー

この意味で汗は、血流によって運ばれた「熱」を捨てる仕組みだといえる。

【反】汗は、老廃物を捨てるためのものではない

汗には、水分やナトリウムのほか、少量の尿素、乳酸なども含まれる。そのため、発汗にもわずかな排泄作用はある。

しかし、発汗の主目的は老廃物の除去ではなく、体温調節である。尿素などの除去においては、腎臓の役割が圧倒的に大きい。

したがって、サウナや運動で大量に汗をかいても、それだけで体内の毒素が大幅に排出されるわけではない。発汗による有害物質の排出は、腎臓や消化管による排泄に比べて小さいとされている。発汗機能に関する医学レビュー

汗をかいた後に身体が軽く感じられるのは、体温の低下、運動による心理的効果、一時的な水分減少などが関係しており、必ずしも「毒素が抜けた」ことを意味しない。

【反】排便は、血液中の老廃物を直接捨てるものではない

排便も血流と無関係ではない。腸の組織が働くためには酸素と栄養が必要であり、それを供給するのは血液である。

しかし、便の大部分は、尿のように血液を濾過して作られるものではない。未消化の食物、腸内細菌、剝がれた腸粘膜、水分などから構成される。

また、便を移動させる直接的な力は、血流ではなく腸の蠕動運動である。腸の神経、筋肉、食物繊維、水分、生活習慣などが排便を左右する。NIDDK「消化器系の働き」

運動は便秘の改善に役立つ場合があるが、「血行が良くなり、血液中の老廃物が便として出る」という仕組みではない。

【合】血流は運搬、臓器は選別、汗は放熱である

血流・排泄・発汗の関係は、次のように統合できる。

機能主な役割捨てるもの
血流物質と熱の運搬自らは排出しない
腎臓・尿血液の濾過と体液調節尿素、クレアチニン、余分な水・塩分など
肺・呼気ガス交換二酸化炭素
腸・便消化残渣の処理未消化物、細菌、剝離細胞、胆汁由来物質など
皮膚・汗体温調節主に水と塩分、少量の代謝産物

血流は排泄を可能にする「運搬網」である。しかし、血流を増やすだけで老廃物が自動的に排出されるわけではない。

腎臓は血液の成分を選別し、肺は二酸化炭素を除き、腸は消化残渣を処理し、皮膚は熱を逃がす。それぞれ異なる働きが連携することによって、体内環境は一定に保たれている。

結論

「血流が良いほど、汗や尿によるデトックスが進む」という理解は単純すぎる。

血流は老廃物や熱を運ぶが、排泄を担うのは腎臓・肺・肝臓・腸などの臓器である。汗は主として老廃物ではなく熱を捨てる仕組みであり、大量発汗は尿量を減らすことさえある。

つまり、血流は運搬、排泄器官は選別、汗は放熱である。この三者の分業と相互調整こそが、身体の恒常性を支えている。

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