ドル建て金価格の年平均成長率は、ニクソンショックから米国GLD登場前夜までが約7.27%、登場後から2026年10月12日までが約10.81%となった。ETFは金投資の利便性を高め、投資需要の拡大を後押ししたと考えられる。ただし、金融緩和や中央銀行の購入なども影響しており、成長率の差すべてをETFの効果とは断定できない。
比較の基準
世界初の金ETFは2003年3月28日に豪州で登場しました。今回は、米国市場で金投資を大きく普及させたGLDの上場日、2004年11月18日を境に比較します。したがって、厳密には「米国の金ETF登場前後」の比較です。LBMA
金価格は米ドル/トロイオンス、名目価格で計算します。ニクソンショックは1971年8月15日の日曜日なので、起点には直前営業日の市場価格を使いました。
| 比較項目 | ニクソンショック直前→GLD登場前夜 | GLD登場→足元 |
|---|---|---|
| 期間 | 1971年8月13日~2004年11月17日 | 2004年11月18日~2026年10月12日 |
| 経過年数 | 約33.27年 | 約21.90年 |
| 起点の金価格 | 43.00ドル | 442.00ドル |
| 終点の金価格 | 443.45ドル | 4,185.13ドル |
| 価格の倍率 | 約10.31倍 | 約9.47倍 |
| 年平均成長率(CAGR) | 約7.27% | 約10.81% |
歴史価格はロンドン午後値、足元はロイター報道の2026年10月12日7時14分GMT(日本時間16時14分)のスポット価格です。最新値は当日の終値ではありません。SD Bullion
計算式は次のとおりです。\[ 年平均成長率=\left(\frac{終点価格}{起点価格}\right)^{1/経過年数}-1 \]
なお、ニクソンショック時の公定価格35ドルを起点にすると、ETF登場前までの成長率は**約7.93%**です。ただし、公定価格は当時の自由市場価格と異なるため、投資収益の比較では43ドルを使う方が適切です。history.state.gov
どう解釈するか
① 金は、ETFがなくても長期的に値上がりしていた
ETF登場前の約33年間でも、金価格は約10倍になっています。したがって、金の長期上昇をETFだけで説明することはできません。
また、この期間には1970年代の急騰と、その後の長い低迷が含まれます。年率7.27%という平均値は、こうした大きな変動をならした数字です。
② ETFは、金に資金が流れ込む経路を広げた
現物裏付け型ETFによって、投資家は保管の手配をせず、通常の証券口座で金への投資ができるようになりました。ETFの新規設定に伴う現物取得は、金需要を増やす経路になります。LBMA
この仕組みから、ETFが投資需要の拡大を通じて上昇を後押ししたという解釈は合理的です。ただし、解約による現物放出は下落圧力にもなります。実際、2013年にはETFからの大規模な資金流出が起きています。sec.gov
③ 年率の差を、そのまま「ETFの効果」とは認定できない
ETF登場後には金融危機と金融緩和が重なり、近年には中央銀行の金需要の構造変化もあります。前後比較だけでは、それぞれの影響を切り分けられません。sec.gov
さらに、金価格は2001年の約254ドルから、GLD登場時には440ドル台まで既に上昇していました。ETFが上昇相場を生み出した面と、上昇相場がETFの普及を促した面の両方を考える必要があります。sec.gov
したがって、今回の数字から言えるのは、**「GLD登場後の金価格は、それ以前より速いペースで上昇した。ETFはその一因と考えられるが、約3.55ポイントの差すべてをETFに帰属させることはできない」**ということです。なお、円建て収益率や、ETFの管理費・税金を差し引いた実際の投資収益率は別の数字になります。


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