法人Bが所有する収益物件の地震保険料は、Aが個人で支払っても、Aの確定申告で地震保険料控除を受けることはできません。「自分が支払った」という事実だけでは、控除の要件を満たさないからです。
この問題を、正・反・合の弁証法で論じます。
正――実際に負担したAに、控除を認めるべきではないか
Aは法人Bのオーナー社長であり、法人Bの収益物件を維持するため、自己資金から保険料を支払っています。経済的に見れば、会社の財産を守ることは、A自身の株式価値を守ることにもつながります。
また、地震保険料控除は、納税者が対象となる保険料を支払った場合に認められる制度です。この「支払った」という点に着目すれば、Aに控除を認める考え方には一定の説得力があります。nta.go.jp
反――支払者であることと、控除対象であることは別である
しかし、地震保険料控除の対象は、単に地震保険が付された建物すべてではありません。国税庁は、対象資産を、本人または生計を一にする配偶者・その他の親族が所有する、常時居住用の家屋や生活用動産としています。nta.go.jp
本件では、次の二つの問題があります。
| 判断事項 | 本件への当てはめ |
|---|---|
| 所有者の要件 | 建物の所有者はBであり、A本人や同一生計の親族ではない |
| 居住用途の要件 | 第三者に賃貸する収益物件は、Aや同一生計の親族の常時居住用家屋ではない |
AがBの株式を100%保有していても、**Aが所有するのはBの株式であり、Bの建物を直接所有しているわけではありません。**会社と株主は、別の主体です。
仮にAがその建物に社宅として住んでいても、建物がB所有である以上、建物の保険料について所有者の要件を満たしません。これは上記の国税庁の要件を本件に当てはめた結論です。nta.go.jp
合――Aの負担は、会社との精算として処理する
したがって、Aの支出を無視するのではなく、Bの事業上の保険料をAが立て替えたものとして整理するのが通常です。
例えば、Bが負担すべき当期分の保険料3万円をAが立て替えた場合、Bでは次のような仕訳が考えられます。
(借方)損害保険料 30,000円
(貸方)役員借入金 30,000円
その後、BがAに返済すれば、役員借入金を取り崩します。保険期間が翌期以降にも及ぶ場合には、前払費用などの期間配分を別途検討します。
ここで区別すべきなのは、A個人の生活を守る保険料に対する所得控除と、Bの収益物件を守る保険料に対する法人の費用処理です。オーナー社長という経済的な結び付きがあっても、この区別はなくなりません。
本件の結論は、Aの地震保険料控除は不可。Bの保険料として、Aとの立替精算を整理する、となります。


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