――金は株価暴落ではなく、その後の金融緩和に反応する

※年間平均価格を1999年=100として指数化。S&P500は配当を含まない。
結論
ドットコムバブル崩壊時、金価格は株価と同時に反対方向へ動いたわけではない。
2000~2001年にはS&P500が下落する一方、金価格も低迷した。しかし2002年以降、株価低迷が金融緩和・実質金利低下・ドル安へ波及すると、金は本格的な上昇局面に入った。
したがって、この時期の金は、
株価暴落そのものではなく、暴落に対する中央銀行の政策反応を買う資産
だったといえる。
正――成長期待を体現する株式
1990年代後半、インターネットの普及は経済の生産性を根本から変えると期待された。
資金はIT企業へ集中し、株価は現在の利益を超えて上昇した。一方、利息や配当を生まない金は、ドル高と高い実質金利の下で低迷した。
この局面では、将来の成長を象徴する株式が、通貨不安への備えである金を圧倒していた。
反――株価が下がっても金は直ちに上がらない
2000年にバブルが崩壊しても、金価格はすぐには上昇しなかった。
金の年間平均価格は、2000年の279.11ドルから2001年には271.04ドルへ下落している。金価格・London PM Fix
暴落初期には、投資家が損失補填や現金確保のため、株式だけでなく金も売却することがある。また、ドルへの逃避が金価格を抑える場合もある。
したがって、
株安=金高
という単純な逆相関は成立しない。
止揚――金融秩序の変化が金を上昇させる
バブル崩壊が景気後退へ発展すると、FRBは大幅な金融緩和に転じた。
その結果、
バブル崩壊
→ 株価下落・景気後退
→ 金融緩和
→ 実質金利低下・ドル安
→ 金価格上昇
という連鎖が生じた。
1999~2004年の年間平均で見ると、S&P500は約15%低下した一方、金価格は約47%上昇した。ただし、両者の逆方向の動きが明確になったのは2002年以降である。S&P500 Historical Chart
投資上の教訓
金は「株価暴落時に必ず上昇する資産」ではない。暴落初期には、株式と金が同時に下落する可能性もある。
しかし、暴落が金融緩和・実質金利低下・ドル安・通貨供給の拡大へ発展すれば、金は上昇しやすくなる。
したがって金の本質的な役割は、短期的な株価暴落の回避ではなく、
バブル崩壊後に進行する金融緩和と通貨価値の希薄化に備える中長期的な保険
と位置付けるべきである。
総括
ドットコムバブル崩壊が直接、金価格を上昇させたのではない。
株式の崩壊が金融政策を変化させ、その結果として実質金利とドルの価値が低下し、金価格が上昇したのである。
金とは、市場の悲観を買う資産ではなく、その悲観に対して中央銀行が行う金融政策を買う資産である。


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