「23歳未満」と「19歳以上23歳未満」はどうつながるのか

税務会計

――所得金額調整控除・特定扶養控除・特定親族特別控除の弁証法

所得金額調整控除には、適用要件の一つとして、

年齢23歳未満の扶養親族を有すること

が定められている。

一方、特定扶養控除と特定親族特別控除では、対象となる親族の年齢が、

19歳以上23歳未満

に限定されている。

両者は「23歳未満」という上限を共有しているが、下限は一致していない。この違いは、単なる制度上の不統一ではなく、それぞれの控除が異なる政策目的を持つことから生じている。


【正】所得金額調整控除は、23歳未満の扶養親族を広く対象とする

子ども・特別障害者等を有する者に対する所得金額調整控除は、給与収入が850万円を超える給与所得者について、給与所得控除の縮小による負担増を調整する制度である。

その適用対象者の一つが、「年齢23歳未満の扶養親族を有する者」である。

控除額は、原則として次の算式によって計算される。

〔給与収入(1,000万円超の場合は1,000万円)-850万円〕×10%

したがって、控除額の上限は15万円となる。

ここで重要なのは、年齢要件が「19歳以上23歳未満」ではなく、単に「23歳未満」とされている点である。

所得金額調整控除では、扶養親族としての所得要件を満たす限り、乳幼児から大学生年代までを広く対象としている。

扶養親族の年齢扶養控除所得金額調整控除
0~15歳なし対象になり得る
16~18歳一般扶養控除38万円対象になり得る
19~22歳特定扶養控除63万円対象になり得る
23歳以上一般扶養控除等の可能性年齢要件から対象外

16歳未満の扶養親族については扶養控除が認められていないが、所得金額調整控除では対象になり得る。

これは、所得金額調整控除が扶養控除の一種ではなく、23歳未満の子などを有する高給与所得者の負担増を調整する制度だからである。


【反】特定扶養控除は、なぜ19歳から始まるのか

これに対して、特定扶養控除は、控除対象扶養親族のうち、その年の12月31日現在で19歳以上23歳未満の者を「特定扶養親族」として扱う制度である。

一般の扶養控除額が38万円であるのに対し、特定扶養親族については63万円が控除される。

19歳から22歳までという年齢区分は、大学、専門学校などへの進学によって、教育費や生活費の負担が大きくなりやすい時期を想定したものである。

したがって、二つの制度の年齢要件は、それぞれ異なる視点に立っている。

所得金額調整控除の「23歳未満」は、子育て期間全体を広く捉える。

これに対して、特定扶養控除の「19歳以上23歳未満」は、子育て期間のうち、特に教育費負担が重くなる時期を重点的に捉える。

19歳という下限の違いは、制度相互の矛盾ではなく、政策目的の違いなのである。


【合】「19歳以上23歳未満」は「23歳未満」に内包される

両者の年齢関係は、次のように表すことができる。

19歳以上23歳未満

23歳未満

つまり、19歳から22歳までの扶養親族は、年齢面では同時に、

  1. 所得金額調整控除における「23歳未満の扶養親族」
  2. 扶養控除における「特定扶養親族」

に該当する。

親の給与収入が850万円を超え、親族が扶養親族の所得要件を満たしていれば、親は原則として、

  • 所得金額調整控除――最大15万円
  • 特定扶養控除――63万円

の両方を適用できる。

もっとも、両者は同じ性質の控除ではない。

所得金額調整控除は、給与所得控除後の給与所得から控除する制度である。

これに対して、特定扶養控除は、給与所得を含む各種所得を合計した後、総所得金額等から差し引く所得控除である。

同じ親族を基礎として二つの控除を受けても、同一の控除を重複して適用しているわけではない。それぞれが異なる段階で、異なる政策目的を実現しているのである。


特定親族特別控除は「扶養を外れた後」を補完する

令和7年度税制改正によって、特定親族特別控除が創設された。

これは、19歳以上23歳未満の親族の所得が扶養親族の所得要件を超えた場合にも、その所得額に応じて親の所得控除を段階的に残す制度である。

令和8年分では、扶養親族の合計所得金額要件が58万円以下から62万円以下へ引き上げられた。

これに伴い、19歳以上23歳未満の親族に関する令和8年分の関係は、次のように整理できる。

親族の合計所得金額親族の位置付け親に適用される控除所得金額調整控除
62万円以下特定扶養親族特定扶養控除63万円対象になり得る
62万円超123万円以下特定親族特定親族特別控除3~63万円原則として対象外
123万円超いずれにも該当しないなし対象外

なお、令和7年分については、扶養親族と特定親族を分ける所得の境界が「58万円以下」と「58万円超」である。


特定親族特別控除を受けても、所得金額調整控除を受けられるとは限らない

ここが、三制度の関係で最も注意すべき点である。

所得金額調整控除の要件は、単なる、

23歳未満の親族を有すること

ではない。

正確には、

23歳未満の「扶養親族」を有すること

である。

親族の所得が扶養親族の所得要件を超えると、その者は特定親族特別控除における「特定親族」には該当しても、所得税法上の「扶養親族」には該当しなくなる。

その結果、19歳から22歳までという年齢要件を満たしていても、

  • 特定扶養控除から特定親族特別控除へ移行する
  • その親族を根拠とする所得金額調整控除の要件からは外れる

という現象が生じる。

特定親族特別控除は、扶養親族の所得要件を超えた後も親の所得控除を段階的に残す制度である。

しかし、親族としての所得金額調整控除の資格まで連続的に維持する制度ではないのである。


三制度は重層的な家族支援を形成している

三制度の関係を政策目的から整理すると、次のようになる。

0歳から18歳まで

所得金額調整控除によって、子育て世帯の給与所得控除縮小による負担増を調整する。

16歳以上であれば、一般の扶養控除も適用される。

19歳から22歳までで、扶養親族の所得要件を満たす場合

所得金額調整控除に加え、教育費負担を考慮した63万円の特定扶養控除が適用される。

この年齢層が、三制度の中で最も手厚く保護される領域である。

19歳から22歳までで、扶養親族の所得要件を超えた場合

特定扶養控除と所得金額調整控除の対象からは外れる一方、特定親族特別控除によって、親の所得控除が段階的に維持される。

これは、大学生年代の子などがアルバイト収入を増やした瞬間に、親の扶養控除が一挙に消滅する、いわゆる「所得の壁」を緩和する仕組みである。


弁証法的総括

【正】

所得金額調整控除は、0歳から22歳までの扶養親族を広く捉え、子育て世帯の給与所得控除縮小による負担増を調整する。

【反】

特定扶養控除と特定親族特別控除は、その中から19歳から22歳までを切り出し、高等教育期の負担と親族本人の就労拡大に対応する。

【合】

三制度は、23歳未満という上限を共有しながら、

  • 0~18歳――広い子育て支援
  • 19~22歳・低所得――子育て支援と教育費支援
  • 19~22歳・所得要件超過――就労を阻害しない段階的支援

という重層的な構造を形成している。

ただし、特定親族特別控除は「扶養親族でなくなった後」を補完する制度である。そのため、特定親族特別控除へ移行すると、その親族を根拠とする所得金額調整控除との結び付きは切れる。

要するに、

「19歳以上23歳未満」は「23歳未満」の部分集合である。しかし、親族の所得が扶養親族の所得要件を超えた場合、年齢要件を満たしていても所得金額調整控除は受けられない。

これが、所得金額調整控除、特定扶養控除及び特定親族特別控除の対応関係における核心である。

参考:

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